著者:篠原一
発行:1998年12月20日
発行所:角川書店
定価:本体1300円
ISBN4-04-873139-4
これをご覧の方がご存じかどうかは分からないのですが、1993年の第77回文學界新人賞を受
賞したのは現役女子高生でした。受賞作『壊音 KAI-ON』を私は読んだことがないのですが
(ちらと見たのですが、あまり惹かれなかったのです)、この篠原一という私と同姓かつ年も近
い作家についてもう少し知ってみようと思って購入しました。この本は篠原一の自伝小説なので
あります。
その小説が良いかどうかを判断する一つの基準として「登場人物に共感できるか」が挙げられ
ると思います。その点で言えばこの本は、ボーダーラインを軽々クリアしていると言えるでしょ
う。
軽妙な語り口は若さを全面に押しだしており、まさにその時でなければ書けないと思います。
そして心の移り変わりは、細かいところで違ってはいても本質的には自分も直面し、考え、そし
て進んできたものでした。
ちなみに自分の中学、高校時代をしみじみと思い出し、自分もこんな自伝を書きたいものだと
思ったのは秘密です。
人は悩みながら成長する。
そんなことを実感させてくれる良い本でありました。
文章力 :7
ストーリー:8(事実って好きなんです)
イラスト :なし(表紙は6でしょうか)
作家にある種の厳格さを求める人は読まない方が無難です。
自分も作家になってみたい人、自由奔放だった少年少女時代を思い出したい人、篠原一という
作家を良く知りたい人にはお勧めの一冊です。