著者:円山夢久
イラスト:山村 路
発行:2000年2月25日
発行所:メディアワークス
発売元:主婦の友社
定価:本体550円
ISBN4-8402-1418-2
この本を手に取った理由は、まず第一に表紙でしょうか。今にも動き出しそうな生き生きとし
た女の子。しかも正面や斜め前というありふれた構図ではなく、ほぼ真横からという視点にとて
も惹かれました。さらに表紙をめくったところにあるカラーイラスト数点も神秘的で、まだあら
すじもろくに読んでいないのに一気に物語の世界に引き込まれました。小説は基本的に中身で勝
負ですが、やっぱり挿し絵なしに語ることは出来ないなぁということを再確認。ちょっと期待し
ながら読み始めました。
ちなみに、第6回電撃ゲーム小説大賞で<大賞>を受賞した作品です。
魔道師見習いのマーニは元気のいい女の子。ひょんな事から当代一の魔道師の弟子になった
マーニは、師匠に付き従って戦場を巡りながら様々な出来事に遭遇していく。
こう書いてしまっては単なるファンタジーです。もちろんこのお話はファンタジーなのです
が、派手な魔法もなければ派手な戦いもありません。そこには善悪ではなく利害で戦う姿があり
ます。まず惹かれたのは、この「派手じゃない」「善悪がない」という2点でした。マーニは見
習だけあって、簡単な幻術しか使えません。でも、それが逆に物語に深みを出しているように思
います。この世界の魔法体系というのもよく考えてあって、地味ながら存在感を示しているのに
も注目したいところ。
いわゆる「剣と魔法の英雄物語」を望んでいる人には物足りない作品かもしれません。けれ
ど、キャラクターがしっかり書き込まれた良質のお話を読みたいと思う方にはぜひともおすすめ
したい一冊です。元気な女の子や戦記物が好きな人も要チェックでしょうか。
ちなみに早くも続編が出ています。
物語的には一つの完結を見ているものの、その世界にはさらなる広がりを感じていたところ
だったので「やっぱり」と思いました。こちらはチェックしていませんが、イラストは相変わら
ず神秘的でした。
しかし、最近はその中で完結していないお話でもほいほいと大賞を取ってしまうのでしょう
か。ちょっと反則のような気もするのですが……。
文章力 :8
ストーリー:8
イラスト :6(カラー部分だけなら9)
カラーでないイラストは、残念ながらカラー部分と比べて大きく見劣りのするものだと思いました。