著者:谷山由紀
イラスト:結賀さとる
発行:1998年11月30日
発行所:朝日ソノラマ(ソノラマ文庫)
定価:本体490円
ISBN4-257-76855-X
特に目的もなく本棚を覗いていたときに、幻想的なタイトルに惹かれて思わず手に
取りました。ただ、表紙はともかくそのほかのイラストがどうも好みではないような
気がして、その時点では購入しませんでした。数日後、やっぱり気になって購入。読
み始めてから気がついたのですが、著者の谷山由紀という人は「天夢航海」の著者で
もあるんですよね。それに気がついてからは期待しながら読みました。
文章は幻想的な雰囲気に包まれていて、それでいてわかりやすいと思います。ただ、
個人的に主人公にあまり共感できなかった気がしました。「天夢航海」の路線を引き
継いでいる部分が多いのでその点では共感できるのですが、この作品独自の、主人公
の少年の境遇についてはちょっとわからない部分があったのです。
お話は終始幻想的な雰囲気に包まれています。現実でありながらどこか現実でない
世界。やがて非現実が大きくなって……。
そして夢から覚めたかのように戻ってくる現実。
完全な非現実よりも、現実と非現実の狭間で揺れる作品が好きな私にとって、非常
に楽しめるお話でした。人間誰もが一度は考える「将来何になりたいのか」というこ
とに焦点を当てながら、ありがちなお話に終わっていないところがさすがです。
おそらく一般受けする(たくさん売れる)本ではないと思いますが、一読する価値
はあると思います。
文章力 :9
ストーリー:7
イラスト :5