指揮者日記 millennium

 

6月23日(土)10:30-20:15 三鷹芸術文化センター 風のホール

 

 いよいよ混声合唱団S.P.P.第7回定期演奏会当日。けれどそんな感じは全くしませんでした。この一週間は仕事が非常に忙しくて演奏会のことを考える余裕が全くなく、その日その日を必死に過ごしていたら演奏会当日になっていた、というのが正直なところです。社会人になって初めての演奏会だったのですが、学生ならどんなに忙しくても最後の一週間の間に演奏会へ向けて気持ちを高めていけたところ、社会人はそれが非常に難しいことを痛感しました。

 男声ステージのリハーサルは約30分間。最初の10分程で軽くさらってから全曲を通してもらうことにしたのですが、後で思うに最初からどんどん通した方が良かったかなと思いました。と言うのも流れの中で覚えている人が多く、途中から始めると調子がつかめなかったようなのです。この時通しに若干の不安を残したことを後で後悔することになるのですが、とりあえずリハーサル自体はほぼ滞りなく終了。一部不安な場所に関しては、有志により控え室で最終チェックが行われていました。

 そしていよいよ本番。
 すでに演奏会も半分を終え、途中休憩中。私はというと、第2ステージで語りを行ったせいでかなり消耗していて集中力をかなり欠いていました。今までソロも指揮もやったことはあったのですが、1つの演奏会で2つのことをしたことがなかったのです。
 途中休憩の間は前のステージで消耗した精神力を回復させつつ、この1年3ヶ月のことを振り返っていました。選曲の時に対抗馬がシーシャンティーだったこと、夏合宿のアンサンブル大会でノリノリだったRide the Chariotのこと、いつも人が少なくて練習に苦労したこと、指揮者にも関わらず仕事のために練習をお休みしたこと、楽しい雰囲気の中に鋭く光る歌い手の感性がうれしかったりちょっと怖かったりしたこと、等々。
 歌い手が入場するときに、みんなが私の方に「頑張ろうな」という視線を向けてくれたのが本当にうれしく、それだけで男声指揮者をしていた良かったなと思いました。

 ステージ紹介があって(これも暖かくてすてきでした)、姉の旦那さんに「歩くときは腕を振ろう」とアンケートに書かれたぎこちなさで入場。自分ではごく普通に歩いているつもりだったのですが。歌い手をざっと眺めてからピッチパイプで音を出してもらう人に合図を出しました。この時の歌い手の印象は、「気合いが入っているな」というよりは「すましてるな」というものでした。

・Soon Ah Will be Done
 構えたら指先が震えてしまいどうにもならなかったのですが、歌い手の出だしはばっちりでそのままいつも通りの実力を出してくれました。Bass系の声質がやや漫然としているのが気になりましたが、大きなミスもなく、最後の盛り上がりどころは後先をかえりみない力の入り方で密かに「ちょっとやりすぎたかな」と思ったのでした。

・Deep River
 やはり指先が震えてしまったのですが、これも歌い手はいつも通りの実力を発揮できたのではないかと思います。一部もう少し他パートをもっと意識して欲しかった部分があったのですが、大きな崩れにつながらなくて幸いでした。緊張のせいもあって割とあっさり振ってしまったので、もう少しこてこてに作れば良かったかなと思いました。

・Ain'-a That good News!
 崩れるとしたらこの曲だろ言うと思ったら、予想通り崩れました。まるまる1ページ旋律が落ちてしまったのです。後で男声陣と話をしたのですが、そこで一瞬団員の間に衝撃が走り曲が止まるかに思えたのですが、旋律なしでそのまま先に進み続けたのは見事でした。そして1ページ後から華麗に復活。指揮者の私もうろたえてしまったので、もっと冷静に復活のきっかけを示してあげることができたらもっと良かったのにと思いました。歌い手には申し訳なかったです。

・Swing Low Sweet Chariot
 前の曲の嫌な部分が頭に残る中、旋律のSec Tenorを中心によくまとまっていたと思います。ただこのあたりから集中力が切れてきたのか体力的にきつくなってきたのか、歌い方が雑になってきたのが気になりました。いつもはもう少しまとまった歌声だったと思うので、残念です。

・Ride the Chariot
 いよいよ最後。とにかく出だしさえ失敗しなければ何とかなると思っていましたが、まさにその通りでした。でも爆発するような感情の高ぶりはなく、良くも悪くも理性的に歌っていたような気がします。そんな中でソロをしてくれた2人はその持ち味を発揮して曲を引っ張ってくれたので本当にありがたかったです。最後は男声の力強さを存分に発揮して、長いようで短かった1年3ヶ月は終わりを告げたのでした。
 ちなみに、最後の指揮を振り終わってから手を下ろして指揮台を降りて礼をするまでの間の取り方については朝からかなり悩んでいたのですが、手を下ろすタイミングを計っているうちに拍手が始まったのでかなり驚きました。指揮台から降りる前に拍手が始まったことは過去に経験があるのですが、手を下ろす前に拍手が始まったのは初めてでした。

 この1年3ヶ月の間、男声に対しては辛口というか毒舌というか、振り返ってみるとずいぶんなことを言い続けていたような気がします。今から思うと思いやりに欠けるというか、人としてあんまりなことを言っていたかなと反省することしきりです。私としては「でも、だからこそ男声が大好き」という気持ちでの発言だったのですが、指揮者なのですからもう少し男声陣に配慮して発言すれば良かったかなと思います。

 来年度はまた男声陣の一員として歌えることがうれしく、今から楽しみです。そして矛盾するようですが、機会があったらぜひまた男声の指揮を振らせていただきたいと思うのです。

 

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