『水たき長野』


 さて、ホテルをチェックアウトして、しばらく街をぶらついた後、この旅最後のイベントへ向かう。
 飛行機の時間を遅くして、福岡ならではの昼食を食べようというのだ。もちろん、酒もしっかりと飲む。
 博多名物は数あれど、今回選択したのは
鶏の水たきである。博多には数多くの老舗が存在し、様々なタイプ・系統に分かれて人気を競っている。私には、これぞという店を選ぶ知識と経験はない。しかし、祝日の昼も営業をしている、ただその一点をもって選ばれたのは、博多を代表する老舗にして名店、水たき長野である。

○ 水たき長野
 <所在地> 福岡県福岡市博多区対馬小路1−6
 <電話番号> 092−281−2200
 <営業時間> 12:00−22:00,日休

長野の店構え  風雅なエントランス

 水たき長野は、福岡中心街から北に外れた対馬小路にある。天神から歩いて15分弱というところか。
 人気店のため電話予約は必須であるが、この時は11時頃に電話して、12時過ぎに訪れると伝えた。OKであったが、後で考えればほぼ満席で危ないところだった。
 予約の際に、「水たきとスープ炊きとありますが、どちらにしますか」と聞かれる。水たきは骨付きの鶏肉、スープ炊きはそれにミンチ・レバーが加わる。両方合わせることも出来るので、今回は両方ともにしてもらった。
 料理屋然とした玉石敷きのエントランスを抜けて、店に入ると、奥の部屋の上がり座敷に通される。それをさらに仕切り、4人卓ごとで使っている。

水たきの鍋

絶品のスープ
  鶏モツの刻み

 席に着くと、すでに水たきの鍋が待機している。博多の水たきは、白濁タイプと透明タイプに分かれるそうだが、この店は透明タイプの代表格。しかし、実際には半濁といったところ。
 最初にスープだけを湯呑に注いで、小口切りのネギと塩少々を加えて飲む。胃の腑にしみじみと深く染み入る滋味。このスープこそが水たきの命だ。
 驚いたのは、突き出しに出てきた小鉢。茹でたモツを細かく切り、ネギと卸し生姜を乗せて、酢ダレをさっとかける。これが、シャキシャキ、シコシコ、味もピシッと決まって実に美味しい。出来ることならば、これを大皿でもらって酒を飲みたいところだ。

鶏肉  ミンチとレバー

 ところで、この店での調理は、全て仲居さんが仕切る。かけもちで幾つかのテーブルを担当するため、間が合わずに、少し手を出してしまおうかとも思うが、それは御法度らしい。
 手際が良いのはもちろん、ミンチを入れて、浮き始めてから、「あと○分で食べてください」などと指定するあたり、極めて真剣なのである。やはり、素人が面白半分に手を出してはイケナイのだ。
 水たきに使っている鶏は、ご当地ブランドの華味鶏。肉は柔らかくて、味もしっかりとしている。ミンチは予想よりも細かく詰まった食感で、もう少しふうわりと優しく、味染みが良くならないものだろうか。レバーはすっきりとして美味だ。
 水たきもスープ炊きも、同じく1人前2,250円だが、私個人的には次回からは水たきをいただきたい。しかし、最初は両方食べてみるのが無難だろう。

野菜を投入  雑炊

 野菜は、肉類を食べ終わるまで投入禁止である。これも掟なのだ(?)。野菜を煮た後のスープは、ややサラリと薄まってしまい、コクの凝集感を失ってしまう。やはり掟は正しいのだ。
 そして、水たきの命であるスープを飲むことを遠慮するのは大間違い。野菜を煮る前に、美味しい状態のスープをガンガン飲んでしまうべきである。最後に雑炊を注文したのだが、その際、スープをジャンジャン捨てられてしまったのはショックだった。上右写真のように、汁ダクに仕上げたにも関わらずである。
 なお、本来この店では、雑炊仕上げよりも、スープかけ御飯の方がお薦めのようだ。確かに、薄まったスープで作った雑炊は、どこかピントが定まらなかった。
 結局、ビール4本を含めて、7,000円と少しのお勘定。腹一杯でほろ酔い加減。福岡ならではの最後の食事を堪能することが出来た。満足である。


たびある記 『北西九州旅行』へジャンプ!