平成14年1月19日
JR新幹線三島駅〜旧東海道〜三島宿〜箱根峠〜箱根宿〜箱根湯本駅

今日は、12月22〜3日の続きの旧東海道をやはり二日連続で歩いてきた。
愛知県瀬戸市の自宅を7時に出て、新幹線を使い、三島駅を午前9時55分に
歩き出す。
今日は天気は快晴である。明日は天気は悪くなるかもしれないということから
折りたたみの傘も持ってきたが、どうやらそれは無駄になりそうな感じもする。

まず、旧東海道に出るまでに約1km歩く。
東海道線ができたとき、駅は旧東海道の中心地より、すこし離れた所に作ったらしい。
旧東海道に着き、前回は世古本陣跡という小さな標識の写真を撮ったが、今日は前回
撮り損ねた樋口本陣跡の写真を撮る。



右にある小さな標識が
樋口本陣跡である。




この辺りが旧三島宿の中心街であったろうと思われるが、その他特に旧東海道を思い出させるような
ものはない。

旧東海道の一本道を歩き出す。

すこし歩き出すと汗をかき出したので、登坂に入ったところで、道端でオーバコートを脱ぎ、
ズボン下も脱ぎ、マフラー、帽子、手袋などと一緒にリュックサックに詰め込んだ。



錦田一里塚の付近で旧東海道の松並木が
残っていてこれが約1kmくらいある。
そして下は石畳になっている。この石畳は
昔の名残ではなく、最近造ったものである。
松並木に石畳というのが、歴史的遺産という
ことかも知れないが、歩くものにとっては
いい迷惑で歩きにくい。



国道一号線の例の標識があり、東京日本橋から117kmという出ている。
今日明日と予定どおり歩ければ、この標識で後65kmくらいまで進めるはずである。

国道一号線と別れて旧道に入る。
ずーと緩やかな上りが続く。
塚原新田、市山新田、三ツ谷新田、笹原新田、山中新田という地名が続く。
これがずーと山の高いところまで続くのである。
しかしそれらが全て山村地帯というとそうでもない。始めの部分は静かな住宅街という
感じである。


途中で見た富士山を撮る





臼転坂、大時雨坂、小時雨坂、下長坂、上長坂という名前の坂がある。
箱根峠を小田原側から上る箱根東坂に比べれると三島側から上る箱根西坂は
緩やかな上りだと云われるが、それでも結構きつい上りもある。
特に下長坂は別名「こわめし坂」という名前が付いていたそうである。
この坂は長い急な坂であるので、旅人が米を背負って上ると熱と汗で「強飯」ができるほどの
坂だったということから名づけられたらしい。
私はどんな坂なのかと楽しみにしていたが、この坂へ到る旧道の入口を見落とし、ちょっと
変だなと思いつつ、広い道にでてしまった。このせいで大分1キロ以上は遠回りしてしまった。
結果的には、この坂を通らなかった。
旧東海道にまた再会したとき、反対側にいかにも急な坂道が見えていたので、この坂を
経験しなかったのが残念である。




人一人にも出会わない寂しい旧道を行く。
ところどころ石畳が残っている。
当時のものが残っているものを、近年に
修復、継ぎ足ししたものが殆どである。
歩きやすいのもあり、歩きにくいのもある。



この辺り、国道一号線に合流し、また別れて旧道に入る、一号線を横切り坂道に入ると
いうことの繰り返しである。
山中城址という一つの旧東海道の名所があり、道横にトイレ、休憩所があった。
そこでトイレを借りる。
夫婦連れに会った。今日は箱根の芦ノ湖までバスできて、そこから歩き出し、三島まで
歩くそうである。過日小田原から箱根まで歩いてバスで小田原へ帰り、今日はその続きの
ようであった。その後、そういう人には何組かにあった。箱根〜三島も15〜6kmあるから
ずーと下り道とはいえ決して楽なコースではない。

小田原〜箱根〜三島は30kmを超えるきつい上り下りであるので、これを一日でやるのは
容易ではない。私もやってやれないことはないと思うが、そのためにはよほど朝早く出ることが
必要である。冬のことでもあるし、朝8時には歩き出していないと明るいうちに着けない。
私は今日は箱根を越えて、小田原まで無理なので、途中の箱根湯本まで行って、
後は電車で小田原へ出て、小田原のビジネスホテルに泊まり、明日はまた電車で湯本まで来て、
続きの旧東海道を歩く予定である。

そうして旧東海道を歩くうちに、また国道一号線に出た。
そこが箱根峠である。午後1時45分。海抜849メートルあるので、さすが寒い。
下着の上に長袖のシャツ一枚で歩いていたので、寒さに震えた。
慌てて、コートを着、帽子、マフラーをつけ、手袋をする。
箱根峠という交差点は車の非常に多いところだ。
道がいくつかあって、どの道を行っていいのか、分らないし、車は沢山通るが
人が歩いていないし、人間が歩いてもいいのか、分らない。
近くに駐車して大型トラックのドアーを叩いて、運転手に芦ノ湖へ行く道を聞く。
道を教えてくれたが、その道は人間が歩けますかと聞くと、歩いたことがないので
分らないという。もっともだと思って、とに角道の端を歩いて行った。
しばらく行くと東海道旧道という案内があった。車の道が大きく迂回して芦ノ湖湖畔に
下りていくに対して、旧東海道は山の傾斜面を直接下っていくようである。
雪が残っているのにびっくりした。


石畳に雪がある。滑らないように注意し
つつ歩く。
旧道はやがて国道のしたのトンネルを
くぐって、芦ノ湖方面に伸びている。




芦ノ湖湖畔に沢山の旅館、レストラン、そば屋、みやげ物屋など店があり、
いっぺんに賑やかなところへ出た。あの雪の石畳が嘘のようである。



箱根関所跡

この関所跡は昭和45年に復元したものと
ガイドブックに書いてある。
全面的に整備するのか、この箱根関所跡の
向側が今工事中である。
工事が済めば、この一帯がきれいな
観光サイトになるようである。


この関所跡は湖岸側にあるが、ガイドブックによれば道の反対側のはずだから
この辺りの工事で移したのかもしれない。元々は関所が湖岸側にあったそうだから
今の位置は正しいのであろう。

関所跡、資料館には入らず、先を急ぐ。
箱根宿というのは、元々なかったのだが、小田原宿と三島宿は距離が長すぎるので
後で両宿から50軒ずつ旅籠を移住させたということである。しかし箱根関所の近くの
旅籠には泊まる旅人は多くなく、無理をしてでも次の宿まで急いだということを書いて
ある本もある。
箱根宿の本陣跡などの案内は一つも見受けなかった。どこかにあったかも知れないが
分らなかった。


車の通行の激しい道の裏側に旧東海道があり、
杉並木が続く。

旧東海道の杉並木も残っているところが少ないと
いうことである。


この旧道を1km弱歩き、
また湖畔に出て、すぐまた旧道に入る。そこからまたややきつい上りである。
今日最後の上りである。その辺りの道は雪がかなり残っている。


雪の石畳を足元に注意しながら、ゆっくりと
坂を下って行く。




湯本まで2時間、9.1kmという案内があった。
これを見て、また元気が出てきた。しかしこれからの急な坂を考えると、この2時間と
いうのは、ちょっと厳しいのではないかという気もしないでもない。この予定なら湯本に
4時半から5時の間に着けそうだが。
坂を下ったところでまた国道に合流して、甘酒茶屋、旧街道資料館というのがある。
いずれも立ち寄らず、裏道を歩く。この辺りで今日の峠も越したし、道も平坦な安定的な
道になり、歩く不安もないので、今朝三島駅で買ったアンパンをゆっくり食べながら歩く。
2時半もかなり過ぎていたが、これが今日の昼食である。特に空腹感があるわけでもないし、
食べなければそれでも済むが、まあー何か食べておいた方がいいだろうということである。

平坦な道を1kmほど歩いた所から、箱根東坂の急坂にかかった。



国道一号線、箱根新道が激しくつづら折り
に曲がっているところに、歩道が石畳の道と
何十(あるいは何百)の階段が繋がってい
る。国道の下をくぐり抜け、また国道の横に
歩道ができており、とにかく急坂を下りて
いく。
これを反対側から上ってくる箱根東坂を
越えて来るのは大変である。




途中で数十人の団体に会う。大阪からきたグループらしいが、この先の畑宿までバスかできて
そこから箱根、芦ノ湖まで歩くらしい。案内の人に連れられていたが、この一行は誰もが
一丁前の格好である。

急坂を下りて、畑宿に着く。畑宿は小田原宿、箱根宿の間の宿である。
ここは寄せ木細工が売り物らしく、寄木会館というのもあるし、寄木細工を実演しますという看板を出している店も多い。
ここにはバス停があるので、そこでバスを待っている人もいる。



畑宿本陣茗荷屋跡




ここから一部は旧道を歩くが、大半の道は国道を歩くことになる。
畑宿まできたらやれやれと思っていたが、ここからが意外に遠い、奥湯本温泉までまだ4kmも
あると知って「えっ、本当!」とがっかりした。奥湯本から湯本駅まではさらに2kmくらいある。
まだだいぶあるなと気をとりなして、どんどん歩くのみである。

奥湯本温泉に着いた。温泉宿が川沿いに沢山並んでいる。日もすこし暗くなりかけてきた。
箱根くらい、温泉宿に泊まってもいいではないかという気がしないでもない。
しかし、温泉宿は一人向けにはなっていないせいもあって、一人の旅人に結構高くつく。
そこで温泉は諦めて、小田原の安いビジネスホテルのしたのである。

人に道を聞きながら、温泉町らしい曲がりくねった道を下り、箱根登山鉄道の「箱根湯本」駅に向う。
湯本はびっくりするくらい賑やかなところだ。
箱根湯本駅に、5時15分に着いた。冬の夕暮れは早い。とっぷりと暮れている。
朝から殆ど休憩なしで、7時間20分歩いた。私の万歩計の距離によれば30.4kmであった。
勿論、坂道、階段を歩いているから、実際の距離はもっと少ない。28kmくらいだろう。
標高差は1000メートルくらい上がって、それくらい下りてきたことになるだろう。

小田原のビジネス旅館に6時すこし前に入る。
今日で旧東海道の最後の難関の箱根峠を越え、やれやれである。