Last Updated 2003-08-16
夜行列車の旅
久々にホームページの更新をしようと思ったら、書きかけの原稿が..。という事で、季節はずれですが、冷夏という事で(関係ないか)昨年11月に行った日本海ツアー日記です。
Scene0:旅のはじまり
ある日、友人Wと話をしていた時、鉄オタと理系電気オタには共通点が多いという話になった。
友人は、
「線でつなぐ物はみんな好きなんだろ..」
と言った。
うまい、うますぎる..。風が語りかけてしまう!
数日後、別の友人は
「と言うことは、ローププレイも好きなんだな」
と言った。
さすがに私もそこまでは気づかなかった。
そんなこんなで、今回のツアーは、久々に夜行列車に乗ることにした。
Scene1:武蔵小金井のラーメン屋にて
旅の始まりはラーメン、と誰が詠んだか。と言うことで、俺達はとある「有名店」と言われるラーメン屋に行くことにした。
昨日、近所のラーメン屋いったんですよ、ラーメン屋。 そしたら、人がめちゃめちゃ一杯で行列が出来ているんです。 で、よく見たら何か貼り紙してあって、「Tokyo Walkerお奨めの店」とか書いてあるんです。 もうね、アホかと、バカかと。 お前ら、Tokyo Walkerのお奨めごときで普段来てないラーメン屋に来てんじゃねーよ。 なんか親子連れとかもいるし、一家4人で行列か、おめでてーな。 「よーしパパ子供が泣くからあきらめて帰っちゃうぞー」とか言ってるの、もう見てられない。 おまえらな、3軒隣のがらがらのラーメン屋紹介するからそこ行けと。 ラーメン屋の行列ってのは、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 寒空の中、行列に並んでる奴と満足げに店から出てくる奴との間でいつ喧嘩が始まってもおかしくない、刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいーんじゃねえか、女子供は、すっこんでろ。 で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、「たいしたことなかったな」とか言ってるんです。 そこでまたぶち切れですよ。 おまえは、本当にラーメンの味がわかるのか問いたい、問いつめたい。小一時間問いつめたい。 得意げな顔して、なにが「たいしたことなかったな」だ。 おまえ、ただ単に有名店に片っ端からケチつけて悦に入ってるだけちゃうんかと。 ラーメン通の俺から言わせてもらえば、行列の出来るラーメン屋の最新流行は「能書き」、これだね。 行列の出来るラーメン屋は能書きが多めに入っている、そん代わり座席数が少なめ、これ。 で、筆で書いたようなダイナミックな書体の看板と店内には雑誌の提灯記事、これ最強。 しかし、これで不味いと客が誰も来なくなってしまうと言う諸刃の刃、素人にはお奨めできない。 ま、おまえら素人は「らーめん花月」にでも行ってなさいってこった。 |
Scene2:新宿駅にて11PM
腹もふくれた、いよいよツアーのスタートだ。目的地は、まだ決まっていない。
ただ一つはっきりしていることは、「乗れる方に乗る」という事だけだ。
新宿駅で130円の切符を買い、窓口に滑り込む。
「どちらも満席です」
....。
「あの連中だ」
とっさに思った。
案の定、「ムーンライトえちご」は、おおよそ夜行列車に相応しくない人たちで埋め尽くされていた。
昨日、快速ムーンライト乗ったんです。快速ムーンライト。 そしたら、席がいっぱいで座れないんです。 で、よく見たら、みんな「SMAP」と書いてある手提げ持ってるんです。 もうね、アホかと、バカかと、SMAPのコンサートごときで普段来てない東京に来てんじゃねーよ。 なんか親子連れとかもいるし、母娘そろってSMAPコンサートか、おめでてーな。 「きゃー私吾郎ちゃんと目が合っちゃったー」とか言ってるの、もう見てられない。 そりゃお前の勝手な思いこみだって。 おまえらな、キムタクのうちわ(ニセモノ)やるからその席空けろと。 夜行列車ってのは、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 狭いボックスシートの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいーんんじゃねーか、女子供はすっこんでろ。 で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が 「165系は揺れがひどいよな」とか言ってるんです。 そこでまたブチ切れですよ。 おまえは、本当に165系の乗り心地が悪いのか問いたい、問いつめたい。小一時間問いつめたい。 得意げな顔して、なにが「「165系」だ。 お前、ただ単に自分が鉄オタであることをひけらかしたいだけちゃうんかと。 鉄オタ通の俺から言わせてもらえば、鉄オタの間の最新流行は「急行アルプス」、これだね。 「急行アルプス」ってのは、車両が多めに入っている、で、そん代わり乗客が少な目、これ。 で、信濃大町から糸魚川回って、直江津抜けて最後は長野新幹線で帰っる一筆書きルート、これ最強。 しかし、これをやると車掌にマークされるという諸刃の刃、おまけに「急行アルプス」は11月一杯で廃止されてしまうという禁断の一手、素人にはお奨め出来ない。 ま、おまえら素人は、新潟行き「あさひ」と、長野行き「あさま」と間違えて乗ってなさいってこった。これも11月でなくなるけどね。 |
Scene3:「急行アルプス」車中にて
23時を過ぎると、さすがの新宿駅もどこも開いている売店がない。
「ホームから出るんだったら弁当を買って来て」という友人の言葉を背に、探し続けた。
どこにもない、やっとの思いでたどり着いたもの、それは、「牛丼」
駅の外まで歩いたおかげで、ホームに戻ったのは、発車の10分前だった。
早速食べようとする友人を制し、俺はこう言った。
「ちょっと待て、電車の中の食事は止まっている時に食べてはいけない。走り出してからにしろ。何で?って、そうしなければ駅弁の旅情がないじゃないか」
呆気にとられる友人を横目に、俺は続ける。
「そうか、まだわからないのなら偉大なる将軍様、じゃなくて俺が、民衆をお導きになる歌、じゃなくて牛丼の歌を作ったからそれを聴け。」
走り出すまで食べないぜ 土曜の夜のランチさぁ〜 しみる肉汁闇を裂き、朝までAll Night Long... |
....死んだように眠った。
Scene4:山奥の温泉にて
「そうだ、温泉に行こう」
奴が叫んだ。思い立ったが吉日で、すぐに電話帳で温泉を調べる。そして、30分後、極楽気分を満喫している俺達がいた。
湯上がり、時間が少しあったので、ロビーで時間をつぶすことにした。
俺達が偶然訪れた、小さな旅館のロビーには、小さな池があって、鯉が泳いでいる。
その上を跨ぐように架けられた小さな橋が、旅人の安っぽい旅情を誘う。
「そういえば、「一休さん」で、「この橋わたるべからず」て書いてあった橋の真ん中を渡った、という話があったな、あと、どこかの漫画で一休が真ん中を渡ったら本当に橋が壊れていて落ちてしまい、「だから言ったのに」とか言われてたっけ..。」
そんな、どうしようもなくくだらない事を考えながら、温泉を後にした。
Scene5:日本海側のジャンクションにて
俺は日本海が好きだ。特に冬の日本海が好きだ。鉛色で、そして広い空、雨や雪がよく似合う。
「日本海を見に行こう」
駅前通りを抜け、走る。駅前通りは日曜日だというのに、どこも半分以上がシャッターを降ろし、人もほとんどいない。関東にいると、あまり実感はないが、こういう光景に出会うと、景気が悪いなとつくづく思う。
それにしても凄い雨だ。それでも俺達は走る。日本海を見る為に。
びしょびしょになりながら見た日本海は、やはり格別であった。イカ刺し食いてぇ。
「583系切褄改造車」だったっけ。マニアックだ。
Scene6:長野駅にて
夕方になって晴れて来やがった。夕方なのに太陽がまぶしい。鈍行列車の軽い振動は眠りを誘う。5分停車の駅で、虹と水滴に映る陽光を見る。
旅の終わりは新幹線。長野新幹線は確かに便利だ。で、このようなベタな鉄道マニアみたいな写真を撮ってみたりする。
出発してしまえばあとは一直線。時空が元に戻っていく..。
「また行こう!」
いつもの決まり文句で友人Nと別れ、ツアーは終わった。家に戻ると、子供が飛びついて来た。
「今度は連れて行ってやるからな。」
そう思いながら、頭をなでた。「男」から「親」に、スイッチが切り替わった。
次はどこへ行こうかな..。
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