Last Updated 01-12-15

圧縮音楽を(まじめに)考えよう

久々の硬派ネタです。今回は、最近ますますその領域を広げている圧縮音楽について考えます。なお、個人の考えなので、情報の信憑性は各自ご判断ください。


 オーディオを趣味に持つ私、Heiny-Meederは、圧縮音楽が大嫌いです。このようなモノは、世間で言われている「CD並みの音質」はおろか、音楽であるとも認めません。

 

1.「CD並の音質」のウソ

 私は声を大にして言いたいです。これのどこが、「CD並の音質」なの?と。
 MP3をはじめとする圧縮音楽がファイルサイズを小さくできる理由は周波数カットの部分も相当大きいです。
 圧縮音楽の周波数上限は、約10kHzです。
CDは20kHzまで再生出来ますから、約半分がばっさり切られている事がわかります。

 「そうは言っても聴感上は同じに聞こえるのだったらそう言ってもいいじゃないの」という声が聞こえてきそうですが、まったくその通りです。で、聴いてみました。

「なに、この音?」

定位はぶれるし、シンバルは破けたような音になってるし、とても聴けたものじゃない。
どこがCD並の音質なんだろうか?

で、いろいろ聴いてみました。ビットレートを変えてみたり、エンジンを変えてみたり、PCのスピーカーを変えてみたりとか..。

で、結論。

「周りがうるさかったり再生装置のクオリティが低ければ、『CD並の音質』になる」

なぁーんだ。それだったら、AMラジオでも、「CD並の音質」になりまね。

2.なんでこんな事になっちゃたんでしょう

 CDが世に出た時、「周波数特性の上限をどこにおくか」という論争が起きました。
アナログ屋は「ADプレイヤーは物によっては50kHzまで出るから50kHz」と言い、デジタル屋は「そんな高いサンプリングレートでは物は作れない。人間の可聴域はせいぜい15kHz、よっぽど耳のいい人で20kHzなんだから、20kHzでいいじゃないか」と言っていました。

結果は、「サンプリングレート44.1kHzで周波数特性は20kHzまで」という事でCDが発売され、今に至っています。
 その後、DATは「サンプリングレート48kHzで22kHzまで」と高音質をアピールしましたが、「一次ソースが20kHzでは宝の持ち腐れ」という事で、あまり普及には至らなかったのはご存じの通りです。

 その後、圧縮音楽の走りとも言えるMDが、ATRACという圧縮方式を採用し、オーディオ屋の顰蹙を買いました。しかし、MDはその携帯性で爆発的とは言えないまでも、普及して行きました。

 その後は、圧縮率はどんどん上がり、ファイルサイズは小さくなり、音はますます悪くなって行きました。

 一番の問題は、素子の動作速度、メディアの容量、コストなど、全ての技術が向上し、失われた20kHz以上を取り戻す素地は充分あったにもかかわらず、その流れが全て利便性の向上に振り向けられてしまった事です。

 冒頭に紹介したような周波数上限の議論は、CDの利便性に押し切られるような形で、いつのまにか消えてしまいました。オーディオ屋は、デジタル屋に完膚なきまで叩きのめされたのです。

 

3.圧縮音楽の蔓延は業界全体の責任

 その後、オーディオ屋は何をやっていたのでしょうか?不景気のこの時代に、ヘンな理屈をこね回して、50万も100万もするような品物を「マイベストワン」なんぞに推薦していました。

おかげで、この10年でオーディオ屋はすっかり市民権をなくしてしまいました。

 で、気が付いた時には、オーディオ屋不在の状態で、ロクな音質評価も議論もされないまま、「CD並」という大ウソ報道を追い風にして、MP3、TWIN-VQ、WindowsMedia、ATRAC3(MDLP)と、圧縮音楽が完全に市民権を得てしまいました。

 私の買った初めてのアンプはSONYの薄型アンプであり、次に当時流行だった79,800円のアンプ(KA-990SD)を買いました。そして、社会人になって、独身最後の贅沢と称してSANSUIのAU-A707DRを買ったのです。オーディオ屋としては、まっとうな育ち方をしたと思います。

 しかし、圧縮音楽のように元音が悪ければ、きちんとした再生装置は意味がないばかりか、むしろアラが目立ちすぎてひどい音になり、「安物オーディオの方がよっぽどマシ」という結論になります。結局、オーディオのエントリー層が育たない為、必然的に高級品も売れなくなります。事実、SANSUI、KENWOODなど、まじめにやってきたオーディオ(専業)メーカーは軒並み経営状況が悪化しています。

 更に、音楽業界全体の問題もあります。圧縮音楽は決して一次ソースにはなり得ないはずなのに、「CD並の音質」報道をいいように利用して、配信音楽に対し、「CD並の価格」を付けているのはご存じの通りです。音が悪く、永続的な使用権も与えられないモノ(一般的な配信音楽はPCのHDDをフォーマットすると購入した権利がなくなります。CDプレイヤーが壊れたらCDも使えなくなるようなものです)に対し、CDと同じ価格をつけているのは、明らかにおかしい。

 結局、音楽業界全体がオーディオのみならず音楽のあり方をメチャメチャにしてしまっているのです。

4.「音楽」「音が苦」になる日

 「良い音」に触れた事のある人ならわかると思いますが、「良い音」を聴くと、それがROCKでもPOPSでも、α波がたくさん出て、本当にリラックス出来ます。また、森林浴は、フィトンチッドだけでなく、大自然存在する音、大自然には超低音から超高音まで非常に幅広い周波数の音があり、それを聴くことでリラックス出来るとも言われています。

 じゃあ、反対に「悪い音」を日常的に聴いているとどうなるでしょうか?

 多分、β波がたくさん出て、不愉快な気持ちになるでしょう。それも、気づかないうちに..。
 ケータイやデジカメにMP3を読み込み、毎日ヘッドフォンで「音が苦」を聴きながら過ごしている人たち..。どうなっちゃうんでしょうね〜。

 便利さの為に大切な音楽をだいなしにしてしまったツケは、どこに来るでしょうか?

で、結論。「圧縮音楽は『音の環境ホルモン』である」

 


何度も書きますが、これはあくまでも個人の考えです。情報の信憑性は各自の「耳と心」でご判断ください。

 

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