ヤマハFG411を調整に出した

1月(2017年)の話だけれど、411を調整に出してみた。JDRに出しても良かったのだが、ヤマハの仕事に興味があったし、やはり作ったメーカーの修理部門なので、そうしてみた。

最初は見習いの女の子が出て来て、その後若い男の職人が相手をしてくれたのだが、その発言は問題だらけだ。例えば「塗りがペタペタしてくるのは何とかならないのか」訊くと、「そうなるのはヤマハだけではない」と言う。「このキーは省略が過ぎないか」「針バネばかりなのあまり良くないね」(411に付いての考察 http://www2u.biglobe.ne.jp/~heckelfg/yamaha411.htm)と訊くと、「それは安くする為で」と答える。おいおい、そう言って良いと本当に思っているのか?

他の楽器でもペタペタするものがある、安く上げる為だ、と言ってしまえば事は簡単かも知れないが、ヤマハの矜持は何処にあるのだろう。これは禁忌の言葉ではあるまいか。聞いていて不愉快だし、潔く無い。その態度に、あんたに何が分かると言う驕りも見え隠れする。

安いと言っても当時税込90万円を超える値段であり、その頃アドラーは精々60万円だ。そしてアドラーに省略したキーはないし、板バネも使っている。良い金属を使っているとか、設計が良いとか言っても言い訳にはならない。必要なものを外した、それこそ頓珍漢な設計だからだ。作ったメーカーが欠陥を承知でやりました、では言い訳にはならない。むしろ、後で問題になる事だと分かりませんでした、と言う方が良かろう。楽器だから未だしもで、車(が買える値段だ)なら人死にが出る。こちらも出来たての楽器だから、後々問題はありそうだと思っていたのだから、もう少し言い様があろう。

しかもその粘りの出た塗装を直すには、塗り直しで10万円以上掛かると言うのでは踏んだり蹴ったりだ。安くする為と言いながら、結果的にちっとも安くなって無いでは無いか。

作る側売る側が口にしてはいけない事があると思わないのかと、少々腹が立った。分かっているなら、何か対処法を考えるのがメーカーや職人の務めでは無いのだろうか。こうした台詞を聞くと、ヤマハの店員教育はそれほど良く無いとしか思えないね(笑)。

タンポが硬くなっていると言うので、何箇所か換えた。元の茶色の物は無いと言うので、白くなったがまあ仕方が無いだろう。調整は流石に設計図はある筈なので悪く無かった。しかし、ヘ音記号のBを下げて欲しいと言う要求には思う様に応えてもらえなかった。この音を下げるには、あるホールを削ると言うのが決定的な手なのだが、やってくれない。自分でも出来るのだが(実際ヘッケルは自分でやった)、この楽器は木がデリケートなので諦めた。道具が揃っているだろうと頼んだのだが、結局そのやり方を知らなかった様だ。彼らがやったのは、Bの穴をコルクで狭くすると言う姑息な手だった。これだと使っている裡に戻ってしまうのだ。もう一つの手はカップの上がりを狭くすると言うのだが、これも戻ってしまうし、前者以上に姑息だ。持ち主が承知でしろと言っているのにしないのは、要するに肝心な事を知らないと言う事だろう。尤も、これは知っている人が少ない事ではあるとも思う。でも作っているのにね。まあ浜松に送っても話が通じなかったのだからなあ。「職人としては、戻せる状態にしたい」と責任者は言っていたが、私にしては戻っては困ると言っているのが通じないのが困る。加えて、ボーカルのコルク交換を頼んであったが、忘れられていた。その為に時間を取られるのは嫌なので、諦めた。

兎にも角にも調整した楽器は使い易くはなったが、基本は変わらない。これは半分褒めている(笑)。この楽器は今も好きなのだ。

とはいえ、この楽器はサブなのであまり吹いていない。毎日使ったらどうなるかが心配ではある。吹き込めば、多分Bはまた上がるだろう。

前の文章で指摘した欠陥もそのままだ。PL法が無かった時代の製品なので(1995年施行、購入の1994年は制定された年)、これ以上の追及は出来ないのが少々残念だ。それがあっても裁判に持ち込む気は無いが(笑)。しかしヤマハへの信頼が少しく揺らいだと言うのが、率直な感想である。