4月7日(木)

帰国の日の朝

帰国の日だ。先ずは宿泊料を支払いチェックアウトを済ませる。それにしてもスタッフの多いホテルだ、滞在中フロントに同じ人のいた事がなかった。アルバイトも入っているのだろうと思うが、壁にスタッフの写真がずらりと貼ってある。ドイツ最古の大学があるので、大学生のパートタイマーが多いのだろう。

 さてホテルの朝飯をパスしていたので、荷物をホテルに預け、何処で食べようかとうろつく。9時頃なのでファストフード店しか開いていない。こうした店にも何度か入った事があるが、ドイツではほとんど入った事のないマクドナルドにした。ホテルの筋向いだ。内部の造りはキッチン以外日本と相当に趣が違う。何にしようかとカウンターに向かう。ちょっと(?)太めのお姉ちゃんが一人で客の相手をしている。チキンの揚げたものをマフィンに挟んだものとコーヒーのセットを二人分、それにポテトの大を頼む。締めて6EURほど。高くは無い。ポテトを抜くと3EUR50ほどで、日本円なら一人250円くらい(今なら200円足らず)。円高は旅行者には有り難いが、視点を変えると...ねえ。(8月になって円の独歩高は更に進んでいる。通貨のフロー量を増やしてインフレを恐れない政策が必要かも知れない)

 問題なのはマクドナルドがここでは「ファストフード」では無いという事だ。日本なら1分くらいで品物が出るが、何にも来ない。3分くらいしてからコーヒーを注いでいる。そのまま次の人の注文を聞き更にもう一人、その間ただ待たされた。ようやくマフィンが来てもポテトは未だ。ようやくポテトをパックに入れて、多分7分は掛かったかなあ。日本だったら全員クビだな。でもこうした体験は面白い。前にウルムの駅構内のバーガーキングで食べた時は早かったので、全部がこうではないのだろう。マニュアル通りにやる事でも難しい人はいるのだ。

 さてホテルに戻り、フロントのお姉ちゃんに「また来るよ」と言って出る。市電(Strassenbahn)の切符は昨日の裡に買っておいたので、5番系統に乗る為に待つ。駅にはこの系統しか行かないと聞いていたが「Heidelberg Hbf」と表示している低床式の奇麗な車両が来た。乗って良いものかどうか逡巡していると、横にいた小母さんが「駅に行くよ」と言っている。スーツケースを見て駅に向かう旅の者と思った様だ。

 そう言えば昨日の夜ホテルに帰る時、「ハンスさんも知らなかったけれど、循環している電車があるんですって」と長谷川まゆみさんが言っていた。ハイデルベルクの交通システムは2006年に大きな変更があった。それまでハイデルベルクはHSB(Heidelberg-Strassen-Bergbahn-GMBH)ハイデルベルク路面登山鉄道株式会社が運営していたが、マンハイムのRNV(Rhein-Neckar-Verkehr-GMBH)ラインネッカー交通株式会社に統合された事だ。それによってマンハイムを走っていた低床の車両がハイデルベルクでも多くなった。運行のシステムもそれで変わったらしい。現在はルートヴィヒスハーフェンやら他の会社も包括して、地方公共交通機関としてはドイツで最も路線が長いそうである。HSBは車両が古かったので、便利で乗り心地も良くなったのだろう。

 結局、小母さんの親切にも関わらず乗り損ねたが、心遣いにはお礼を述べた。その後来た5番系統は昔の車両で、ステップが3段あり、大荷物の旅行者にはちとやっかいだった。何せドアの所に金属の柱があって、荷物を入れるのが大変だ。もちろん次の低床車まで待つ訳にもいかず乗りはしたけれど。

 

Flughafen Muenchen wieder 再びミュンヘン空港

 マンハイムでICEに乗り換えると3時間半の旅だ。PCで旅日記を書いたり、音楽を聴いたりKさんと話をしたりして過ごす。ふと面白いものが目に入った。ICAの一等車に乗るとピーナツやらチョコレートやらおやつが配られる。一昨日ケルンの帰りにチョコボールが配られた。そしてその時、椅子の所に誰かのこぼしたチョコボールを2個見たのだが、この列車の全く同じ所に転がっている。ミステリーだ。偶然同じ場所に他の人が落としたのか、それともノ一昨日と同じものなのか。そうこうしている内に定刻の13時33分に到着。

 ミュンヘンからはレールパスの使えるS-Bahnで空港まで行くつもりだが、その乗り場の1,2番線ホームが見当たらない。広い駅構内を探し回ったが分からず、結局ポーターの女の人に訊いた。そのホームがあるのは、何とルフトハンザバスの着いた北口の地下だった。分かるかい、そんなの。とは言え、見付かって良かった。路線1と8系統が行くのだが、すぐに来た1番に乗った。約45分でミュンヘン空港に到着。

 早速チェックインして荷物を預けてミュンヘンに戻り、買い物や食事をしようという腹だ。離陸は20時55分なので、時間がたっぷりある。フランクフルトならルフトハンザのカウンターでチェックイン出来たのでそこへ。しかし、ここはルフトハンザのカウンターだからANAに行けと言う。「フランクフルトなら出来るぜ」と言いつつ言われた方へ。それはすぐに見付かったが、しかし照明が落ちていて暗く誰もいない。通り掛かったルフトハンザのドイツ人CAに訊いてみるとチェックインは3時間前からだと言う。フランクフルトなら何時でもOKだったのになあ。

 それならば荷物を預けて遊びに行こうと、ロッカーを探し求めるが見当たらず、目に付いた航空会社のカウンターで訊いたところ、ルフトハンザバスに乗った辺りに何かあるという。行ってみると「Service Centre」とあり、一時預かりだった。ここにスーツケースを預け駅に取って返す。今度は8系統に乗りたかったが、本数が少なく来た時と同じ1系統に乗る。マリーエンプラッツまで乗り、市庁舎前に出る。

 昼飯を食べようと、この前休みだった「金魚茶楼」に向かう。ところが、閉まっている。何と撤退していたのだ。インターネットで見るとガシュタイク(Gasteig)の店はやっているようだが、確認はしていない。どうも気に入った店が無くなる傾向があるが、私は貧乏神なのか?これまでもミュンヘンでまた来ようと思った中華屋が2軒店を閉めていたからなあ。

 さてどうしようかと歩いていると、初日に興味を引いたチューリンガーの屋台があった。ドイツには有名な直火焼きのソーセージが3つある。ニュルンベルガー、レーゲンスブルガーそしてチューリンガーだ。前の二つは小さいソーセージだが、これは大きい。20センチほどの白いソーセージで食べでがある。パンに挟んで2EURだから安い。これにゼンフ(senf/ドイツのマスタード)をたっぷりかけて食べる。美味い。今回はこうした屋台やインビスに寄らなかったので、旅の最後に味わえて良かった。それにしてもミュンヘンもハイデルベルクもザルツブルクも、今回訪ねた先は工事だらけ。しかもミュンヘンなど日本の工事現場より騒音も粉塵も酷い。それにも関わらずドイツ人は外の席で飯を食ったりビールを飲んだり、もしかして感覚がおかしいんじゃないのかと疑ってしまう。その後いつも行く楽譜屋のBauer & Hieberに行ったのだが、目ぼしいものは無く、早めに空港に戻る事にした。残念ながら、結局8番系統のS-bahnには乗れなかった。

 空港に行ってまずは荷物を受け取る。さっきと違う係員がいて、料金を訊くと「多分50EURかな。本当のところ私は知らないよ、コンピュータに訊かないとね(笑)」なんて冗談を言う。コンピュータに訊くと二人で9EURだった。参考までに書くと、20キロ未満の荷物なら3時間まで3EUR、以降24時間まで4.5EURである。チェックインの時間になっていたので、カウンターへ。面白かったのはスーツケースに免税品がないかどうか訊かれた事だ。免税品は書類と共に現物を税関に以て行かないと、還付が受けられない。私も10年くらい前、フランクフルトで直前に出すつもりで入れたまま預けてしまい、慌てて戻ったがコンベアで流した所で「Oh!Mr.Morikawa, 10 seconds,10 seconds later!」と言われて諦めた事があった。それにしても、こんな事を訊かれたのは初めてだ。「入れたまま預ける人が、やはり多いの?」と訊くと、その通りだという答え。訊くまでもなかったが、カウンターのドイツ人が美人だったので、話してみたかっただけだ(笑)。

 その後時間があるので、空港内を散歩。この空港はAirport of the year 2006 in Europaで1位になった事があるそうだ。センターにビルがあり、買い物も楽しめる様に出来ている。ターミナル2の前の広場では、アウディがブースを造りフォーラム(原宿にもあるらしい)もあり、常にキャンペーンをしている様子。ターミナル1の方に散歩がてら行く。空港全体が、ちょっとしたショッピングモールだ。とは言え、特に欲しいものもない。アウディのブースで呼び込みされたが、欲しくても買えない。免許も無いし。

 ターミナル2に戻り、まずはヴァイツェンを一杯。名残惜しいなあ。ウェイトレスがちょっと愛嬌のあるお姉ちゃんだったので、チップを勢む。実の所、手持ちの現金が硬貨ばかりなので遣ってしまおうという魂胆である。広いと言っても空港内、店舗は限られるので、1時間ばかりで飽きてしまった。それでは、制限区域に入り免税店で買い物でもしようかという話になった。

 制限区域内もお店は多かった。Kさんはシュナップスを買い、私はチョコレートを少し。カードで支払ったが、その時に住んでいる「市」を訊かれて驚いた。しかもその後1EUR80のチョコをコインで買った時まで書かされた。漢字とアルファベットとどっちがいい?と訊いたが「漢字」が分からない様なので、それにした。

 さて、もう一杯ずつヴァイツェンを飲み搭乗口に行く。広い空港だ、到着まで結構な時間が掛かった。あまり待つ事もなく搭乗する。来る時ほど空いてはいなかったが、それなりに空席はある。予約した非常口前の席へ。予約時にはここしか空いていなかったのだ。足元は広いが肘掛けが動かないので、ちと窮屈。しかし、CAがすぐ前に座るのだが、これが結構な美人でいい感じだ。ここはCAと話せていいなんて人もいるが、実際には小っ恥ずかしくて話どころか顔も見られない。向こうも同じなのだろう。視線のやり場に困る。

 無事離陸し、早速食事。ジンベースのブラッディマリーを2杯飲み、シーフードカレーを食べる。疲れも出て少し寝たのだが、数時間後に目を覚ますと肩がガチガチで気分が悪い。肘掛けの高さが合ってなかったのと、滞在中に飲んでいた抗生物質の副作用らしい。前にも自宅でこんな状態になった事がある。CAにその旨告げ、床に横になりたいといったが駄目だった。初めてドイツに行った時は床に寝ていた奴が結構いたんだけどなあ。幸い空いているので、後ろの肘掛けの動く席に連れていってくれた。肩の高さが自由になると楽になり、2時間程眠ると気分は良くなった。元の席に戻るとCAが心配して来てくれたが、こうなればもう大丈夫。渡独13回目にして初めての出来事だった。それからは快適に過ごし、成田に着陸。着くと先ずしたのは、時代遅れのTCを売る事だった。その後のユーロ安を思うと、大正解だった。こうして、今回の旅も無事終える事が出来た。中々得るものもあったし、楽しい旅だった。

 それにしてもドイツから帰ると何時も自分が獣臭くなる。家の猫がしばらく寄って来ないのはいつもの事だ。ドイツのデパートの入口近くは香水ですごい匂いだが、納得だ。帰って来ると、今回で最後にしようと思っていたが、改装後のハイデルベルクのテアターも見たいし、やはりドイツは良い。もう一度行く事になりそうだ。それもまた一興。