KING CRIMSONの音楽について

 

”ミュージシャンが音楽をプレイするのではありまへん。
音楽がミュージシャンにプレイさせるんでんがな。”

                  

In The Court Of Crimson King (クリムゾンキングの宮殿;1969

おぞらくはクリムゾンのアルバム中最も有名な作品で、私が初めて聴いたクリムゾンの音です。当時のレコードの帯には、「英国であのビートルズの”アビーロード”を蹴落として一位になった云々」と印刷されていて、これが購入動機になった人がかなりいるのでは?実際に針を落としてみた印象は、「なんだか判らないが、とにかくスゴイ!」。冒頭の曲から圧倒的な音に攻められっぱなし。最近のイアン・マクドナルド氏のインタビューによると、この「21世紀の精神異常者」(しかし改めて眺めるとすげータイトル)、ほとんどオーヴァーダヴなしの一発録りだったそうで、彼らの演奏力の高さには敬服します。そして、「エピタフ」や「宮殿」でのメロトロン・・・特に前者のイントロを聴いて、再び「なんだか判らないが」涙したヒトって結構いません?日本人の根っこにダイレクトに訴える旋律を確かに備えております。ところで、この「エピタフ」、西城秀樹やザ・ピーナッツがステージで演っていたという噂を聞いたことがあったのですが、オレンジパワーさんのご厚意により、遂に聴くことが出来ました。これは凄いでっせ!特にザ・ピーナッツは素晴らしかったよん。さて、「太陽と戦慄」以降は名実共にフリップのバンドと化していくクリムゾンですが、この作品は5人の個性がまさにぶつかり合って生まれたものと言えましょう。例えば「マクドナルド&ジャイルズ」なんかを聴きますと、”「宮殿」は、マクドナルド・ソング”という元メンバーの発言にも納得です。フリップ色が最も顕著なのは「21馬鹿」で、現在でもライヴのレパートリーに使用している事からも間違いないでしょう。

 

In The Wake Of Poseidon (ポセイドンのめざめ;1970)

「宮殿」が新人としては異例のセールスを記録した矢先に、マクドナルド&ジャイルズの最重要コンビが抜けるわ、G・レイクはEL&P結成に動き出すわ、レコード会社は契約履行を迫るわ・・・といったプレッシャーだらけの状況の中、兎にも角にもアルバム仕上げたあなたはエライ!フリップさん。・・・偉いけれどもアナログA面の構成が前作と同じというのはあらかじめ教えて頂かないと。やっぱりイアン・マクドナルドへの当てつけだったのかなあ、と思ったりしますよそりゃあ。私の場合は何しろ97年の「エピタフ」発売までは、「冷たい街の情景」がレコーディング前にライヴの定番だったなんて全然知らなかったものですから。そして、そんな視点から見ると、「ケディンスとカスケイド」はやはりハスケルさんのヴォーカルがイマイチなのが残念。一方、アルバムタイトル曲は、「エピタフ」には一歩譲るものの、涙とセットで味わえる叙情性豊かな逸品ですね。
ところで、「悪魔のトライアングル」はクリムゾンの歴史の中でも最も混沌とした作品ですが、後半に登場する「宮殿」のリフは、私にはフリップ氏が同作品を自ら葬り去る為に挿入したとしか思えません。残念ながら、「偉大なる詐欺師」のライナーに寄れば、74年のツアーにおいてもプロモーターからは”「宮殿」やれ!”って強要されていたらしいですが・・・。

 

Lizard (リザード;1970)

キース・ティペットらの活躍のためか、アルバム全体に先鋭的なスパイスが効いています。A・マカロックのドラムもジャージーで印象的。(どうしてクビになっちゃんたんだろう)
私は、「サーカス」が非常に好きです。メロトロンが奏でる不気味なリフにフリップ氏の無感情なギターが絡む様が何とも言えずステキですね。シンフィールドの描く詞が怪しげな世界へとグイグイと引き込んで下さいます。この時期のクリムゾンならではの音です。それから、アナログB面のすべてを使った組曲「リザード」は耽美的な暗黒大作で、まず前半のジョン・アンダーソン客演の無垢なヴォーカルが特筆モノ。後半のメロトロンのうねりもなかなかです。そして、ゴードン・ハスケルの声は味わい深く、かつ底なしに暗いです(まるで、その後のフリップ氏との確執を暗示するかのようです)。が、アルバム全体に漂う暗うつなトーンに溶け込んでいるような気がするから、これはこれで良いのかもしれません。一般にクリムゾン作品中の評価はあまり高くありませんが、何故か「リザード」のファンは多いらしい・・・。私もその一人ではありますが。

 

Islands (アイランズ;1971)

邦盤やUK盤と異なる、結構さわやかなジャケットのUS盤を持っていました。(残念ながら火事で焼失してしまいました)全曲終わったと思っていたら、オーケストラの音が聞こえて来たときには、本当に驚いたものであります。CD化されたときに、カットされていたのは残念!(「紅伝説」で聴けるけど)さて、この作品ですが、ピート・シンフィールドのアルバム・・・って言ったら角が立つか。でもねえ、コレってどうみてもフリップ氏の色がかなり薄いような気がするのです。タイトル曲の耽美的美しさなど、シンフィールドの世界そのものではあ−りませんか。一方、「レターズ」の邪悪さも・・・(この曲の詞は、フリップ氏への悪意が込められているらしい)。彼から主導権を奪うとは相当の争いがあったんだろうなあ(決めつけちゃいかんが)。もちろん、「フォーメンテラ・レディ〜セイラーズ・テイル」あたりはフリップ氏のスタンスをちゃんと感じますけれど。この作品の後、シンフィールドはフリップ氏にクビを宣告されてクリムゾンを離れてしまう訳ですが、イニシァチヴ争いにも相当疲れていたことでしょう・・・。「アースバウンド」の凄まじさを思うと、この作品の位置はなんとも不思議なところにありますが、「リザード」同様、この味わいも私はオーケーなのでした。

 

Earthbound (アースバウンド;1972)

水と油、決して相容れないもの同志が無理矢理共存させられたときに発せられる、まるで核爆発ライクな巨大エネルギー。クリムゾン作品中、最も凄絶さと狂気に彩られた一枚です。音がいいんだこれがまた。現在のところ、オフィシャル全作品中最悪の音質ではないすか?なにしろ、「エピタフ」よりヒドイ。バスドラなんてずーっとコンプレッサーかかっているような状態・・・が、一方これが意外にもかつてない程の迫力を引き出しており、不思議な効果を生んでいるのもまた事実です。しょっぱなの「21馬鹿」の怒濤の演奏からイカせてくれます。ほとんどキレてんじゃないかとしか思えないようなボズのヴォーカルとメル・コリンズの狂気が素晴らしい!その中にあって、演奏のまとまりという意味では「セイラーズ・テイル」で、スタジオ・テイクに荒々しさが加わって、出色の出来。しかしながらこの作品の最大の魅力は、メンバー間のバランスの悪さというか、不安定さではないでしょうか。例えばタイトル曲は、ファンキーに走る3人組に対してフリップは明らかに浮いております。3人組に言わせると、「ブルースだけは弾けなかった」フリップが例の独特のフレージングでギターソロを展開して応戦、何とか自分の目指す方向へ軌道修正しようと悪戦苦闘する様子は、鬼気迫るものを感じさせる一方、なんとなくオカシかったりします。それにしても、さぞかし居心地悪かったろうな。


Larks' Tongues In Aspic (太陽と戦慄;1973)

フリップの仕切り直し作品。やはり何といってもジェイミー・ミューアの貢献度がとてもとても高い作品。アルバムタイトルの名付け親だし。元イエスの鳴り物入りで参加したブラッフォードの意識を改革させ、パーカッシヴなクリムゾンを誕生させた(そしてインプロ増やした)張本人と言って良いでしょう。また、ジョン・ウェットンの参加も大きなポイントで、彼のヴォーカルの希有な安定性に加えて、(”Larks' Tongues In Aspic, partU”などに顕著な)非常にクリエイティヴなベースは強力な武器であります。音の方はさらにソリッドかつハードに進化を遂げている一方、静と動あるいは暴力の中にもリリシズム(クロス)、という対比が見事です。しかも、「土曜日の本」及び「放浪者」に窺えるこのリリシズムは決してウェットではないところが、これ以前のクリムゾンとの大きな相違点と言えます。聴き所は「Talking Drum〜Larks' Tongues In Aspic, partU」のメドレーでしょうが、当時のライヴ・バージョンには緊迫感と迫力の点で一歩譲りますね。私は、”Larks' Tongues In Aspic, partT” の中間部のギターソロ(?)が大大大好きで、最近TAB譜も手に入れたことですし、死ぬまでにはなんとかコピーしたいと思っております。「フラクチャー」と「太陽と戦慄partT」 をシャカシャカと弾ける爺さん、(老人になるまで生きれる保証はありませんが)サフイフヒトニワタシハナリタイのね。                         

Starless And Bible Black(暗黒の世界;1974)

世間一般では最も人気が高い72〜74年期クリムゾンの大傑作。収録曲の大半が73年11月23日のアムステルダムのコンセルトヘボウでのコンサートのライヴ録音を元にしているのは現在では周知の事実ですが、発売当時はだーれもそんなこと夢にも思わなかったのでした。このことは後述しますTHE NIGHTWATCHで名実共に明らかになったわけで、「コンサートホールをスタジオとして機能させる」&「偶然性と緊迫感を意識的に創ることによるミューア効果の再現」というフリップの目論見(ツアーに追われ、時間の確保に四苦八苦していた彼らの苦肉の策という話もありますが)がは或る程度成功していたのだと言えましょう。私が初めてこのアルバムを耳にしたのは、今を去ること24〜5年前のことで、当時はこのヒトたちの音楽にあまり慣れ親しんでいなかったこともあって、「偉大なる詐欺師」にかっこええなー、「夜を支配する人々」にリリカルでえーなー、なんてまあののどかな感想を抱いていたのです。ラジオから流れてくるKISSあたりに青春を爆発させていたガキの頭にはインプロは理解の外にあり、そのまま通り過ぎていれば、私は今こんな訳わからんものを書いていませんね、おそらく。

現在の私にとって、このアルバム=”Fracture(突破口)”であります。思えばクリムゾンを生まれて初めて耳にしてから20数余年、永遠とも思われていた私のプログレ冬眠期間を破ることとなったのはこの曲でした。そして今やこの齢にして一日たりともFractureを聴かない日はない(しかも大体は仕事中に)、というある種の中毒状態にあります。この曲だけヴァージョン違い8曲入りのテープまで作ってしまいました。淡々と続くフリップの偏執的なギターがまず佳し。80年代の日本公演のライヴ・ビデオ中でもフリップがメトロノームに合わせてこの曲を弾く姿があり、その異様な姿にある種の感動を覚えました。偏執的な音楽には偏執的な姿勢で臨むのが私のポリシーなものですから、 TABをダウンロードしてギターのコピーに挑戦中ですが、これがまたとても難しいのですなあ。さて、後半、一度リズムがブレイクした後の最後の疾走感たるや(体調の良いときに限りますが)シビレにシビレます。気迫のみなぎる狂気の名曲です。しかしながら、こんな曲を山の中で一人籠もって創り上げるフリップという男、やはりタダモノではありません。

Red( レッド;1974)

これはですね、フリップ得意中の得意技、確信犯的なアルバムだと思います。だってですよ、当時のクリムゾン・ファンの誰しもが"Starless (当時の邦題;「 暗黒」)"を聴いてしみじみと感動に浸ったはず。ああ、私たちのプログレ(現在と違って、プログレは音楽文化の最先端の象徴でした)も、もはや終わってしまったのね・・・何しろ「星一つ無い聖なる暗黒」だもんな・・しょうがないわなこりゃ、と。情報の乏しい当時の我が国(特に私の住んでいた岩手県盛岡市の様なド田舎)のプログレファンの当然の反応だったと思うのですが、実際には、ライヴでオーディエンスの反応を見ながら曲を仕上げるのが常套手段だったクリムゾンのことですから、"Starless"なんて74年のツアーじゃ毎日のように演りまくり、その成果ともいえる最高の状態を、イアン・マクドナルドまで呼んで創り上げてしまった、というのが本当のところではないでしょうか?私は「The Great Deceiver 」を聴いてやっとこさ前後関係を理解したという呑気ものであるが故にこんな勝手なことがいえるのでしょうが。70年代のクリムゾンが解散を表明したのは「RED 」の発表後ですが、少なくともこのアルバムの制作中に、フリップはすでにクリムゾンの「存在を終了する事」を決定していたらしいです。当時、「自我を完全に喪失していた」状態だったという彼の状態が本当に本当だとすると、このアルバムの完成度の高さは驚愕に値します。ところで、"Starless" のイントロは、あの歴史に残るメロトロンの響きですが、本当に深くて魅力的な音ですよね。あのストリングス音は、GENESISの"Watcher Of The Skies"や"The Fountain Of Salmacis"のイントロ同様離れがたい魔力があります。 ただのテープの再生音なのに・・・。ブリューさんやハケットさんがわざわざサンプリングするって事は、やはりデジタルでは創りにくい音なんでしょうね。

 

USA(1975)・・・のCD化について


70年代に発売された最後のオフィシャル・アルバム。ながらく廃盤状態が続いていましたが、2002年8月、遂にCD化されました!しかも「Fracture」&「Starless」のオマケ付という往年のファンにも大変喜ばしい構成であります。この発売の数年前からCD化の話は公式にも出てまして、最初は「USAU」と言うタイトルで74年6月28日/アズベリー・パークの公演を完全版で収録する、と言う噂もあったのですが、最終的にはアナログの内容に前述のボーナス・トラックが追加された形となりましたのは前振りがあっただけにちょっと残念な気もしますが・・・。
またこれは私もちょっと自信は無いのですが、発売時点で聴いた印象では、これは単なるリマスターでは無くリミックスされているっぽいです。CDでは2トラック目となっております”Larks'Tongues In Aspic, partU”での出だしのギターの音の印象がアナログ盤とは全く異なってますし、続くシンバルの押し出しも迫力が増しております。それから有名なエディ・ジョブソンの重ね録りのバイオリンも不自然な感じがやや減った様な気も致しますね。アナログ時代、当時のライブ・アルバムとしては特に突出した音質では無かったと思いますが、このCD化によって一層ダイナミックなアルバムに生まれ変わったのね!と私なんぞは手放しで大喜びしてしまいました。
録音日時のデータもここに来てはっきりしましたのは嬉しい事であります。74年6月28日/アズベリー・パークなのか74年6月30日/プロビデンスなのか・・一体どっちなんだよ〜とここで大騒ぎしていた当時が最早懐かしいですなあ。

 

Epitaph(エピタフ〜1969年の追憶;1997)

いやあ良い世の中になったものです。ブートではさんざん出尽くした音源だったりはするのですが、実際にオフィシャルで発売!となるとやはり有難味が違うもので、私も迷うことなくCD屋に走ったのは言うまでもありません。
さてその昔、「宮殿」をさんざん舐め尽くした後にBBC・スタジオライヴの”In The Court Of・・・”や””Epitaph”を耳にした体験はやはり特別なものでありました。それはこの時期のライヴ音源を聴く事など夢のまた夢であったからであり、「宮殿」における圧倒的な構成力とはまた別の要素・・・ライヴでしか体験させて貰えない狂気じみた大胆さ、ある種の神懸かり的な瞬間・・・の片鱗を垣間見せてくれたからに他ならないと思います。この作品、ライヴ音源としては69年11月・12月の米国公演から3ヶ所の演奏を収録しておりますが、「宮殿」だが大好きな人で、同様の演奏を予想している方ほど実際の音を聴いてひっくり返る割合が高い様な気がします。それ程までに過激なドキュメントと言えます。かく言う私も<「宮殿」と言うアルバムは当時のバンドの一面でしか無いのだ>というフリップ氏の自信たっぷりの言葉に大きく3回は頷いたのであります。それからこのCDを聴いて改めて思うのは、少なくともこの時期のクリムゾンは、確かに”フリップのバンド”では無かったんだなぁ、という事ですね。特にマクドナルド&ジャイルズの存在の大きさには計り知れないものがあります。(グレッグ・レイクはその後の発言と言動がどうも眉唾ものなんで言及は避けます)

Schizoid Man(1996)

これってシングルですかね。シングル扱いにしては収録時間が長くて非常に有難いCDです。中身のほうは”21世紀の精神異常者”ヴァージョン違い5連発ということで、オリジナルとエディット版はともかく、発売時点では残る3発が未CD化ブツであった、というのがウリでありました。余談ですが、これを書いている2000年2月現在も”アースバウンド”&”USAU”は未だにCDの姿を拝むことが出来ず、クリムゾン・ファンをやきもきさせております。しかも”USAU”に至っては<97年の春発売>なんてこのCDの内ジャケに記載されているんですからねぇ。あんまりではあります。2000年中には出る出る!とどこかの雑誌には書いていた様ですが、果たしてどうなることやら・・・。
さて、この”USAU”版、いわゆるアズベリー・パーク版の21馬鹿ですが、迫力の点では72年アースバウンド版に一歩譲るものの、さすがに連日高密度で激しい演奏を繰り広げていた時期の音だけに聴けますよ。ただ、ややデビッド・クロスのソロが散漫な感じもあったりしますが、早く聴かせろUSAU!と万人に連呼させるだけのモノはあると思います。


The Great Deceiver-Live 1973〜1974(1992)

収録された音源の殆どが未発表ということで、古くからのファンはまさに狂気乱舞したというありがたい4CD-BOXであります。何しろド高いブートを何枚も買いまくってこそようやく聴けた貴重な曲の数々が、オフィシャルでしかも予想だにしなかったイイ音でこれでもかと聴ける訳ですから、その喜びは並大抵のものでは無かったと想像いたします。当時プログレ再突入したばかりの私でさえも、CD1の”Larks'Tongues In Aspic, partU”のイントロを聴くや、「をを、こんなに音良くていいのか?」と驚いた次第。年代が年代だけにそんなに期待していなかったんですね。それもその筈、フリップ翁にしてみれば、ブートレグ撲滅シリーズ第一弾という訳で、選曲とクォリティーには最大限の注意を払ったことでしょうから、この質の高さは当然の結果なのでありましょう。さて、このセットは、73年から74年の最強期6公演から選りすぐられた音源で構成されており、同じタイトルの曲も複数収録されるなど、演奏の進化やニュアンスの違いまでも堪能出来るどちらかと云えばマニア向きの作品です。考えてもご覧なさい。”The Night Watch”は3ヴァリエーション、”Easy Money”に至っては4タイプの演奏が体験出来るのですぞ!ですからこの”Easy Money”などについては先述した様に《6月29日のヴァージョンは「USA 」収録の6月28日の演奏に似ている。やっぱり日にちが近いからかなぁ。》などと一般の方にとってはどうでも良いことに気づいたりしますね。或いは”Talking Drum”についても《73年11月15日のはちょっとテンポ遅いんではないかい?》と細かい発見に胸躍らせる(?)という愉しみも隠されているのであります。要するにフリップ翁の呼ぶ”Genuine Crimheads”にとってはヨダレものであり、かくして我々は悪い遊びを覚えてしまった猿の如く、ウハウハと”繰り返しの喜び”を享受するのであります。加えて当時一公演に必ず2曲演っていたというインプロ演奏もたっぷりと収められていますが、どれも異様な緊張感に支配されており、聴き応えがあります。このインプロ関係についても、「USA」収録の”Asbury Park”とプロビデンスでの”A Voyage To...”は基本構成は同じ、と決めて始めたのだろう・・・みたいなことが推測されたりして興味深いものがあります。ただこれ毎日演ってたのねと考えると、困った事にメンバーが疲弊してだんだん厭になってきた気持ちも分かるような気にさせてくれますね。フリップ翁の日記読むと、みんな精神的に張りつめた様が痛々しいですし・・・。(デヴィッド・クロスについては、鞄持ちをやらされたのも一因かもしれませんが)
そんな訳で私は、プロビデンス公演の終盤”Starless”のイントロで疲れ切ったブラッフォードが「最終ラウンドだ!続けるんだ!」と叫ぶ声には何と言うか・・・涙が出ます。
 

Three of a Perfect Pair (スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー;1984)

涙が出たその昔、実は私いわゆる『新生クリムゾン』は積極的に聴いておりませんでしたので、このアルバムを聴いたのは当然90年代にプログレ再突入してからの事です。作品の予備知識は「紅伝説」のDISC3&4で聴ける内容のみでして、先ず最初は某”ハンター"の中古市で米盤アナログを千円で購入。「太陽と戦慄パートV」を初めてちゃんと聴いて!まあまあ本当にたまげました。と申しますのも、「紅伝説」DISC4でのこの曲(ライヴ・ヴァージョン)は前半部が無惨にもバッサリと切られておりましたので、「ああいう曲」という愚かな認識を埋め込まれていたのでございます。こんなところにもあのボックスの罪が潜んでいると言えます。なんでこのような良い曲(と私は思う)をあんな酷い目に遭わせることができるのでしょうか?世界数千人の涙を絞ったと思われる「トーキング・ドラム事件」同様理解に苦しむフリップ翁の業であります。あ、その話はもういい?そうでしたね。ところで、私がその後CDを購入して再びまあたまげてしまった事には、”Sleepless”のMIXがアナログと全く違っていたのでありました。この問題はフリップ翁がアナログ収録のボブ・クリアマウンテンによるMIXを気に入らずCD化にあたって差し替えてしまった、」ということらしいですが、私個人的には80年代的なこのヴァージョンも結構楽しいんではないか?などと思っております。まあアルバム単位では”Discipline”に比較すると、「同じ方法論の焼き直し」などと言われてしまうのが関の山でさほど評価も高くはない(らしい)この一枚ではありますが、アナログA面のPOPな楽曲(特にアルバム・タイトル曲と”Sleepless”)もなかなか良いですし、70年代を彷彿とさせるインプロもガンガン演ってるし、「太陽と戦慄パートV」を聴いた衝撃が忘れられない私には結構お気に入りの作品なのです。


The Nightwatch (夜を支配した人々;1997)


アムステルダムでのライヴと言えば昔からポピュラーで、ブートの世界でもアナログ時代を含めて数々の有名なアイテムがありました。私がこの音源をを最初に耳にしたのは、NHK-FMでの渋谷陽一氏の番組でした。BBCのアナウンサー(?)の紹介入りのアレです。何と言ってもお気に入りはThe Mincer〜The Talking Drum 〜 Larks' Tongues In Aspic, partU”のメドレー、最高です。「21st〜」も名演です。ですから「紅伝説」が発売されたときに、これらが収録されていると聞いて喜び勇んで買いに行ったのですが、家に帰って聴いて愕然としました。MINCER が途中から始まったのはまだ許せるとしても、"The Talking Drum"の次に入って いたのは何と同日の"21st〜"でした。ガーン!音がメチャクチャ良かっただけに、「フリップさん、あなたは鬼だ。この2曲をブッタ斬るとは一体なにを考えてこんな暴挙を犯したのか?」という何とも納得のいかない日々が続きました。一度このレベルの音を聞いてしまうと、"The Talking Drum〜 Larks" をセットでこの音で聴きたい、と思うのは私だけではありますまい。(・・・って私だけかやっぱり) しょうがないので、この「紅伝説」の"TheTalking Drum"と次に発売さ れた 「THE GREAT DECEIVER-LIVE」DISC1の"Larks' Tongues In Aspic, partU”を無理矢理つないだテープを作成して自らを慰めておりましたが、残念ながら両曲の音質・テンションの違いは如何ともしがたく、しかも0.5秒ほどのブランクを我慢せねばならない、というさらにフラストレーションを増幅させる惨めな結果となってしまったのでした。(「SONNGS FOR EUROPE」でも我慢して聴いてりゃ済みそうな問題でしょうが・・・。)そんなわけで、「THE NIGHTWATCH」の 発売の知らせには、本当に心躍らせ、指折り数えてその日を待ったのでした。そして、その内容は期待に200%勝った(by安生)ものでした。”Fracture"の加工前の姿も実に興味深いものがありました。また、待ちに待ってクリアーな音質で再会することが出来た"Larks' Tongues In Aspic, partU”は緊張感とエナジーの素晴らしいものでした。ところが、このアルバムにも別の意味での隠し技があったのです。”The Mincer〜The Talking Drum"のMIXが、「紅伝説」とは全く違う!いままで聴いた事もない、というか聞こえなかったメロトロンの上昇する不気味な音階、例のテーマ部(フリップがメロトロンからギターにチェンジし、クライマックスへと疾走するところ)の音圧のパワフルなこと!車の運転中に初めてこの事実を耳のあたりにした私は思わず信号無視をしてしまう所でした。David Singleton という男、フリップ同様タダモノでは無かったようです。「紅伝説」におけるテーマ部の、4人が塊となって攻めてくるような混沌としたMIXを好きだったモノですから、この変わり様にはびっくりしました。(これもこれで良いですけど)それから"Larks' Tongues In Aspic, partT”が聴けなかったのってやっぱり残念ではありますね。

(続きはこちら)