(King Crimsonの続きです)

 

VROOOM(ヴルーム;1994)

年甲斐もなく20年ぶりのヘヴィー・メタルなクリムゾンの大復活に狂喜乱舞致しました。フリップ先生自らが”リハーサル・テープと言うだけあって、ラフな出来かもしれませんが、それがまた荒々しさを生む効果に繋がっていてたまりませんです。最もフリップ先生のことですから、勝算あってのリリースは当然で、”市場で充分通用する完成度”との判断があったことは間違いありません。というのは私なんぞが思うに、タイトル曲は次作「スラック」では妙にスッキリしてしまってスリルが無いように感じられるちゃうのです。まさに”レッド”の再現のような、当アルバム収録の方が好みです。「スラック」の練り込まれた質の前段階にある作品故に、妙な緊張感が嬉しかったんですね。また、70年代のリリシズムと90年代ならではの表現がうまーく合体した曲なども聴けて、古くからのファンは結構感慨深かったんではないでしょうか?それから私にとって作品中最も衝撃的だったのは「スラック」です。ゴリゴリと迫ってくるパーカッシヴな音の塊に「これは本当に”ロック”といえるのか?」とマジで考えたものです。新編成であるダブルトリオの威力を十分に思い知らされた瞬間でした。

THRAK(スラック;1995)

強烈な予告編である前作に続いて発表された12年振りのフルアルバム。
勿論発売日前日に入手した私は、たまたま家族が外泊中だったということもあり、帰宅後に家中の掃除をして風呂に入って身を清めてから、スピーカーの
に正座して聴いたものでした。なにしろ12年振りだもの。勿論「ヴルーム」収録曲もすべてリ・レコーディングされており、流石に完成度は更に高くなっております。でも、くどいようですけれども、少なくとも「ヴルーム」という曲に関しては前作のインパクトがあまりにも強かったために、あっさりと整理された感じも強くやや拍子抜けしたのです。
しかしながら、「ダイナソー」にも明らかなブリューさんのビートルズ風テイストが絶妙な効果を生んでいる佳曲も散りばめられ、やはり侮れないのがクリムゾン。ところで「ダイナソー」と言えば、「ヴルーム・ヴルーム;CODA」に思わずニヤリとしてしまったのは私だけではありますまい。この恐竜の咆哮は紛れもなく90年代版「太陽と戦慄 PartV」でしたね。ところでこの曲、この後オフィシャル発売されたB'BOOMのライヴ・バージョンの音源をベースにしているという噂を聞いたことがあるんですが、本当のところどうなんでしょうね?

B'BOOM(B’ブーム:オフィシャル・ライヴ・イン・アルゼンチン1994;1995)

再始動のウォーミング・アップとは言うけれど、そこはクリムゾン。ありがたいライヴを聴かせて頂きました。そもそもこの音源は、ブートとして出廻ったもので、音源管理には非常に厳しいフリップ翁にタイムリーに怒り狂って頂き、DATで記録していたものを世に出してもらっちゃった、と言ういわばタナボタのプロダクツなのです。皮肉なことではありますが、確かにブート業者に感謝しなければならないのかもしれませんね。例によっていきなりライヴでオーディエンスの反応を見るというやり口であった訳ですが、それだけにクリムゾンならではのテンションの高さには驚くべきものがあります。ダブル・トリオ編成による新・楽曲群はまだ試作品っぽい匂いを漂わせているのに比べて、70&80年代のお馴染みの作品が90年代的にメタリックに変身し、或いは表情を変え私たちに迫って参ります。ここで力を込めて私が申し上げたいのは”The Talking Drum 〜 Larks'Tongues In Aspic, partU”がまさか!90年代に再演されるとは、クリムゾン・ファンにとって至福以外のなにものでもない、と言うことであり、更に”..partU”は、過去のヴァージョンで聴けるリリシズムの片鱗はもはやなく、ひたすら突き進んでゆく様が衝撃的で、まさに戦慄。進化とは何か考えさせてくれる作品となっています。
そしてこのアルバムの発表後まもなくして、6人組クリムゾンが遂に来日。私の住む仙台市
にもやってきてくれたのだ。行きたかったんだよオレは。でも、出張で涙を飲んだんだよー。そんなわけで私は一生恨むであろう。全印工連のセミナーを。

スラックアタック;1997

96年のツアーでの”THRAK”のインプロ部分を絶妙な編集で繋げて作品を作ってしまったという企画モノです。1回こっきりのインプロを完璧な形に作品化してしまったという企ての勝利、と言ったところでしょうか。もんの凄い緊張感が伝わって参りまして大変なアルバムと感じます。感じますのですが、クリムゾンなら大抵はOKよ!の私もこの全く気の抜けない異常なテンションが続く・・・分間は実を言いますと苦手でありまして、まだ入手してから1回しか聞いたことがありません。いやー申し訳ありません。まだまだ修行が足りませんねぇ。自分のことを棚に上げてなんですが、このアルバムはクリムゾン・ファンにとってどうも試金石と言うか、はたまた踏絵のような役割を担っている様な気がするのは私だけでありましょうか?



Cirkus(サーカス;1999)

「PROJEkCT関係でお茶を濁すか」との批判の声も徐々に高まる中、99年最初のクリムゾン関係オフィシャルリリース作品であります。70年代に発売されていた”Young Person's Guide To〜”のライヴ・ヴァージョンとも言えそうな2枚組で、クリムゾンの30年に及ぶライヴの歴史を一気に俯瞰出来るという初心者じゃなくっても嬉しい企画モノです。と申しますのはさすがフリップ翁監修、単なるライヴのコンピ盤となる筈もなく、「宮殿」時から98年の音源(PROJEkCT関係含む)までが順不同・切れ目無く編集されております。これが通して聴くと新鮮且つ痛快な流れとなっておりまして、King Crimsonという希有なバンドの持つ 一貫性を再認識させてくれるのですね。フリップのアイディアなのかどうかは別にしても、”Young Person's Guide”という狙いは心憎いばかりに成功している、というワケであります。
73年の”Talking Drum”から96年の”Larks'Tongues In Aspic, partU”のメドレーなんて絶品です。私思わず「カッコエエ!」と叫んでしまいましたで。その他未発表音源も楽しめますし、リリース予告など小出しにして頂き、おお、96年メキシコ?何っ72年ジャクソンビル!?などとますますオヤジの懐具合への不安も募らせてくれる問題作であります。


The Collectors' King Crimson Volume One(1999)

またやってくれましたねDGM。そもそも通販物件ということで指をくわえて眺めているだけだった我々日本のコアなファンには忘れられない夏となりました。いや大袈裟では無くて。この3CD、69年・72年の活動から抽出されたライヴ・パフォーマンスが収められておりますが、音質的には現時点までのクリムゾンのオフィシャルものの中でも相当悪い方には属します。別に脅かしている訳ではありませんが・・・これから聴こうとお考えの方は、「程度の良いブート」的な認識を持って臨めばさほどの苦痛はパスできるでしょう。Disc1はいわゆるオリジナル・クリムゾンお馴染みのセットで、音質の劣悪さも手伝ってか相変わらずの壮絶な演奏が楽しめますが、中でもあまり聴くことの出来なかった「風に語りて」が嬉しいです。個人的にはDisc2;オフィシャルでは久々の”アースバウンド”暴力3人衆クリムゾンの登板&Disc3;漸く日の目を見た狂気のミューア・クリムゾンが感涙ものでございました。Disc2については全般的にはアースバウンドに収録された演奏の方がインプロ主体で且つ一層荒れ狂っていてお好みなのですが(21馬鹿などを含む)、これで当時のセットリストの全貌が具体的に掴めた、という興味はあります。しかーし、この方々、毎晩こんなに暴れていたのでありましょうか?さすが肉食人種であります。特にメル・コリンズとイアン・ウォーレスの二人は恐ろしいです。ちなみにアースバウンドと同日テイクの「The Sailors Tale」ですが、やや音質が向上しているようです。噂されるアースバウンド再発にも期待が持てそうですね。デビッド・シングルトン氏の髪の毛の一本一本と引き替えの技であります。本当に有り難いことであります。Disc3は「The Rich Tapestry of Life(書いてて気づきましたが、これはミューア脱退後、フリップに宛てた葉書中のお言葉でした)」に尽きます。当時日によっては1時間近くも延々とインプロっていたらしいですから、ちょっとモノ足りないような気も致しますが、何しろ音源としては5人クリムゾンでは初登場。長年待っていたオヤジは只々平伏すのみ。おそらく当時の記録物の中では音質も内容もベスト!という判断で選ばれたのでしょうか。ところで「太陽と戦慄パートT」の映像はビートクラブもので有名ですが、このインプロの絵も残っているのでしょうか?だったら早いとこ見せろよ。


The Construckction of Light(2000)

残念ながら4人になってしまいましたが、フリップ御大を始め皆さんそれはもう大変に元気な様子であります。まだまだちゃんと聴きこんでおりませんこの時点で書いてしまいますが、なにしろ5年ぶりのスタジオアルバムなものでやや興奮しております。クリムゾンのCDはここ数年これでもかっ!と言うほど出ていた様な気がするのですが、実は紙ジャケリマスターやコレクターズクラブと言ったアーカイヴものがほとんどでしたので、純粋に新譜と言える作品としては随分待たされた筈なんですが、どうもそんな気はしない。この辺り、やはりフリップ御大の策略にまんまとはまっているのでしょうか。さて、全体としましてはやはりノイジーな方向性は相当強まっておりまして、以前にも増して体力が無いとがっぷり四つに組んでは聴けない作品に仕上がっている感じです。曲数が少ない為、あるいはリリシズムを感じさせる曲が一切無い為でしょうか、「スラック」に比較するとあっさり、あっと言う間に終わってしまったなぁ、というのが最初に聴いた際の感想でした。
一曲目の「ProzaKc Blues」の妙なヴォーカルから度肝を抜かれますが、バッキングのギター・リフは紛れも無いフリップ味で、昔からのファンはここで既に口元が緩んでしまう事請け合いです。全般に曲調やリフ関係んばど、80’sクリムゾン風テイストが感じられる曲が多いのにも驚かされますが(あの二人が居ないのに!)、やはり我々が厭でも対処に慎重になってしまうのは「FraKtured」及び「Larks' Tongues In Aspic-PartW」でございますわな。私の個人的な感想では、いずれも「そうそう、これこれこれ!」と良い意味での予想通りの展開でありました。「FraKtured」は、74年からDisciplineを経てリズムも構成もより複雑怪奇に進化した難曲となっておりますが、中盤(5:10〜)、突如として狂い出す悪魔的なギターの凄まじさには久々に脳天への一撃、快感であります。欲を言えば導入部の展開に戻らずに(7:02)辺りで終わっちゃっても良かった様な気もしますね。「それでは元祖Fractureと同じではないか!」という向きもあろうかとは思いますが、あの、
ドッカーン!と終わってしまう衝撃が欲しかったと引っかかる人は私だけではありますまい。でもこの、演奏者の立場からすると寿命が縮みそうな曲・・・ライヴで演るんでしょうかね。さて、「Larks' Tongues In Aspic-PartW」の方ですが、こちらはさながら恐竜の面構え。素材としては使い廻されて来たものとはいえ、相変わらずの説得力、さすがであります。6人組で演奏されていた"U"、80年代の"V"、共にやや軽さも耳についてしまった昨今、この度の威厳が復活した重々しい響きには私も思わずいつものリスニング・ルーム(つまり営業車中)で拍手してしまいましたよ。ああ、それにしても今から来日が心から楽しみでそりゃぁもう・・・。今回はどうあっても見逃さぬ覚悟です。邪魔するなよ全印工連。

(付録)
EXPOSURE(エクスポージャー;1979)

フリップ御大のソロ第一弾で、業界から離れていた時期を経て復帰へのウォーミング・アップ的な意味合いを持っていたという一枚です。アルバムとしての統一感はイマイチ無いものの、様々なセッションの素材を集めたものだけあって、ミュージシャンの組み合わせもなかなか面白く、私あたりは結構楽しめます。もっとも”Breathless”なんて曲はそのまんま”Red”だったりしますので、こんな曲を79年に出すっちゅうことは、74年のクリムゾンの解散は一体何だったのですか?などと文句の一つも云いたくなる場面もありますが。さて、”Disengage”に聴けるP.ハミルの本当に怒っているらしいキレまくりのヴォーカル、GENESISの項でも述べましたが”Here Comes The Flood”でのP.ゲイブリエルの鬼気迫る切ない歌声、随所に現れる情緒たっぷりのフリッパートロニクスなど、聴き所はたくさんあります。また、あちこちに登場するインタビューの隠し録り(?)も印象的に使用されています。”NY3”という作品では、当時御大のアパートの隣の世帯に住んでいたと言う親子の壮絶な喧嘩の罵声をサンプリングするという反則ワザで、ジミヘン風の加速度を増すリフと相まってパンキッシュで異様な世界を展開しておりますなー。御大がプロデュースしたダリル・ホールの「Sacred Songs」にもほぼ同じ曲が入ってますが、過激さではこちらの方が上でしょう。いずれにしても、クリムゾンが好きなヒトには色んな意味で堪えられないアルバムでございますね。

 

(付録)まどろみ;まどろみ(美狂乱)

日本のプログレについてはほとんど無知に等しい私ですが、これはクリムゾン・ファンには自信を持ってお薦めする一枚。知る人ぞ知る美狂乱というバンドが、バンド名を変え、日夜クリムゾンの完コピに挑戦していた時期があったそうで、この作品はその当時の熱気とともに驚異的なパフォーマンスを収録した希有の記録であります.既にプロとして活躍しているバンドが、(期間限定とは言っても)まさにDisciplineのためとは言え、他のアーチストのコピーに専念する、というの決断にはちょっと凄い覚悟が感じられます。
取り上げられている曲は「太陽と戦慄」から「レッド」期のもので、すべて本家のライヴに勝るとも劣らない鬼気迫る演奏が繰り広げられており、しかも随所に単なるコピーを越えた独自の解釈が散りばめられていて、クリムゾン探求者ならばニヤリとする場面がたくさん用意されています。演奏は勿論かなりのハイレベル。ギターの技術は特に素晴らしく、「Fracture」のピッキングなど強弱の付け方はフリップそのもので、タブ譜のコピー段階でひーひー言ってる私あたりにしてみりゃもう神業の世界。クリムゾン・フリークの皆さん、これこそ必聴の一枚ですよ。