Beatlesと私

すまん。ほとんど某国営放送局の「中年の主張」のようなタイトルで。しかもプログレではないし。それに、むずかしいんですよ、「Beatles」は。特に、我々の世代はリアルタイムで聴いた人にはちょっと遅れてるし、「第二次ビートルズ世代」なんて慰められられながらも、そういった実体験組で神格化している人々には、「君たちには我々の気持ちなんて絶対判るわけがないし、語って欲しくはない!」と一刀両断され(実際言われた)、若い方々の割り切りかたもまた納得いかない、という情けない立場なのであります。大体私なんぞが最初にBeatlesを意識したのは、解散後2年を経て聴いた「Let It Be」のシングル盤。このレコードを、例の脱5球スーパー・スペシャル・アナログ・モノラル・プレーヤーで、1ヶ月位登校前に毎朝聴いておりました(このシングルは、モノラルのくせに「ステレオ」と東芝EMIがウソついたと言う曰く付きのもので、私はジャケットにまでレコードスプレーを吹き付けるほど溺愛していました)。その後決してコアなファンの道を歩んできた訳ではありません。別項のリストにもある通り、レコードやCDも全然持っていませんし。ただ70年代の前半、NHK-FMなどで「彼らのオフィシャル曲をすべて聴かせます」的な特集を結構やっていて、それらをエアチェックしていたりした私は、Beatlesの曲にはかなり慣れ親しむことが出来ました。例によって散漫かつ極めて個人的なお話になります。

 

LET IT BE (1970)

シングル盤を聴き狂った当然の結果LPが欲しくなるわけで、最後のアルバムを最初に聴くこととなりました。実は当初「意外につまんねーなぁ」なんて不届きな感想を抱いていたのでした。曲のパワーがうまく伝わって来ないというか、聴き終わっての充実感がなかったのです。もちろんこの頃は、このアルバムが制作されていた状況やフィル・スペクターの関与の仕方なんて知るよしもありません。今ほど情報もありませんでしたし。でもなんだか妙によそよそしい感じが漂っている気がしたのですね。しかしながら、「Dig It」から「Let It Be」への流れにはゾクゾクしましたし、「Let It Be」のギター・ソロやコーラスの回数がシングル盤と違っていたのには言葉を失いました。これは凄い!と一人で興奮しておりました。
今にして思えば、ただ単に”テイク違い”という概念を全く知らなかっただけですからね・・・。このアルバム、当のメンバーの評価はおそらく最悪でしょうが、全体を覆う倦怠感がそれなりに味わい深いものとなっているような気がします。何よりも私個人にとっては初めて手にしたBeatlesのLPということで、とても愛着がある大切なアルバムなので、その思い入れから過大評価しているのでしょうけれど。その後何年も経て、マーティン・ミックスの「GET BACK」を聴くこともできましたし、長年見逃していた映画のビデオも入手しました。当時の状態を感覚としてだんだん把握していくと、何ともせつない一枚と感じられて来ます。

・・・更に「Let It Be」という曲の想い出

70年代に観た、某NHK制作のこんなドラマがありました。・・・核家族+爺さんの家が舞台で、爺さんは悠々自適の身なのだが、なんとなく家族の厄介者みたいに扱われる毎日。その息子であるオヤジも仕事が忙しく自分の父親である爺さんとは会話もあまり無い。思春期(高校生?)の孫がいて、オヤジには徹底的に反抗している。爺さんは自分の人生について思い巡らす内に、なんだかビートルズの曲が大好きになって、孫の部屋で勝手に聴いて怒られたりしている内に、結局孫が一番の理解者になったというその矢先、爺さんはほとんど自殺の如く孫のバイクで暴走して死んでしまう・・・記憶が曖昧なので自信がありませんが、大体こんな内容だったような気がします。自宅での通夜の折、親戚が集まって「厄介払いが済んで良かったね」みたいな極悪な会話が交わされる中、孫が一人2階の部屋で、爺さんの大好きだった「Let It Be」を大音量で鳴らして魂を送る、というシークエンスがありました。再放送も観たということは差し引いても、とても印象に残っているのです。
使用されていたのは勿論シングル・ヴァージョンでしたが、当時かなり反響を呼んだドラマではありました。

ABBEY ROAD (1969)

中学3年生の頃、生意気に図書館で勉強と称して遊んでいた事があります。その図書館ではクラシックのレコードを視聴できるコーナーがあって、なぜかこのアルバムもあったのですね。そこで初めて聴きました。A面は、なぜかシャーリー・バッシーのカバーで最初に聴いてしまった「Something」など、既に知っている曲が多かったのですが、「Come Together」の暗さ、情念渦巻きまくりの「I Want You (She's So Heavy)」から発せられる異様な迫力には圧倒させられました。B面の「Because」の詞とメロディーの至上の美しさも心に残りますし、ポール・マッカートニーが中心になって創ったと云われるメドレーの展開の緻密さには今聴いても凄いなーと思います。全くバラバラ、録音時期の微妙に違う曲の断片を絶妙な編集で組曲風に仕上げたジョージ・マーティンのセンスにも本当に脱帽!です。彼の一世一代の大仕事と言えましょう。ABBEY ROAD は、これが最後になることをメンバー全員がなんとなく確信した上で制作に臨んだアルバムらしいですが、そのせいか、4人の個性が非常にバランスよく発揮された大傑作だと私は思っています。この作品が最後に発表されていれば、解散時のイメージももうちょっと変わっていたかもしれませんね。LET IT BEはやはり生々し過ぎる。
それから、「Something」や「Here Comes The Sun」の後世に残るであろう名曲を書いたジョージ・ハリソンの活躍も見逃せないところ。しかしながら、この頃のBeatlesのイメージとジョージへの過小評価ぶりを示す、フランク・シナトラ「Something」事件のエピソードなどを聞くにつけ、当時のジョージ・ハリソンって本当に可哀想な環境だったのね、と思ってしまいます。

 

THE BEATLES (The White Album;1968)

Beatles風ちゃんこ鍋。統一感とは無縁のところにあって混沌としてはいますが、彼らのルーツや音楽的アプローチの異常な幅広さ(レゲエのパロディからアヴァンギャルド・ミュージックまで!)を証明した作品、ということで結構ファンが多いアルバムではないでしょうか。曲づくりから録音まで、個人のプロジェクト的な作品が多く、グループとしてのまとまった勢いは確かに希薄。他方良く解釈すれば個々の資質や音楽的な背景が明白となっている非常に興味深い作品群であるとも言えます。解散の危機さえ感じられたという緊迫した状況、リンゴ・スターの一週間の脱退などの様々な要素がこの個人主義主張に少なからず影響しているようにも思われます。
私、このレコードは持っておらず、高校時代友人から借りたレコードを録音したテープを長年聴いていまして、CDも比較的最近中古品を入手した次第。そこで、フェバリット・テープを作ってみたんですが、これがほとんどジョン・レノンの作品ばかりとなって我ながら驚きました(「Blackbird」と「Why Don't We Do It In The Road?」、それと「Birthday」は入ってましたが)。ポール派だジョン派だ、なんてこだわりは全然無かった私なんですが・・・。

 

Magical Mystery Tour (1968)

リアルタイムに体験していない悲しさ、英盤が2枚組EPであり、最初に買ったアナログ盤がいわゆる米盤仕様であった、なんていうファンなら常識であろうことも、実は最近知りました。後追い世代としては、「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」「All You Need Is Love」はまさにこのアルバムの中の一曲!と信じて疑わなかったのですが、当時の事情はちょっと違ったようですね。
この作品はご存じの通り、ビートルズが本格的に映像に取り組み、発表当時は(映像としては)失敗作と受け取られてしまったという、曰く付きの作品です。しかしながら、「音」の部分では勿論期待を裏切るものでは無く、むしろ世間でいまだサイケの残り火が燻っていた時間に、ビートルたちがもう既に更なる地平へと旅立っていたことを証明した重要な作品であろう、と私は解釈しています。
ところで、ちょっと前に「ジョン派」みたいな事を言っておきながら恐縮ですが、実はポール作「Hello Goodbye」の曲調と、とても悲しい詞が大好きでした。今もアナログ国内盤の歌詞カードには鉛筆で書いたギター・コードが居心地悪そうに残っております。この曲のギターは、チューリップなどが追従したような、「これぞビートルズの代名詞!」と通ってしまう胸キュン的な音でして、聴く度に、オレはこれが好きで間違っていないのだと確信させて貰っております。この曲を初めて聴いた当時私は中学生で、バンドをやりたい!と青春のはけ口を求めていたのですが、「ひとりぼっちのあいつ」とこの曲をやろうよ、と友達に相談したのですが、当時もっと渋いプログレを聴き狂っていた彼に「お前バカじゃないの?」と一蹴された悲しい想い出があります。
ところで肝心の映像(実はWOWOWの放送にて初めて観ました)は、モンティ・パイソンの源泉が見て取れる、充分エポック・メイキングなTV番組です。でもやっぱり早すぎたんでねぇべか・・・とは思える作品。

Sgt.Peppers Lonely Hearts Club Band (1967)

やれやれ。何書いたらいいんだろ。・・・思い起こせば2◎年前ってか?この作品も幸か不幸かレコードの時代に聴けました。ただ、このレコードは何故か悪友達は持っていませんで、「Let It Be」に引き続きいよいよ私自身が買わなければならぬ状況に陥っていったのです。私が購入を決心したのは74年頃でしたが、当時Beatlesは残念ながら既に過去の存在ではありまして、先の「お前バカじゃないの?」発言はあながち間違いとは言えなかったんですよこれが。そして、この時にLP購入を阻んだのが本アルバムにシングル・カットされた曲が全く無いということでしょうね。しかもジャケットは蝋人形まで登場してこのうえなく不気味でしたし。でも当時角川文庫で出ていたアンソロジー本を買って、「今世紀最大の傑作」的な評価を「学んで」いた私としてはそれなりの決意を秘めてこのレコードを貯金して買い、意味はともかく部屋を暗くして(プレーヤー→ラジオ出力にて)聴きました。そして、このHPを今まで読んで頂いた方は勿論「また?」と嘲笑って頂けると思いますが・・・「A Day In The Life」及び最後の意味不明の音をポータブルのプレーヤーで聴いた後はしばらく其処から動けなかったのでしたぁ。
さてこの作品、「実は最初からコンセプト・アルバムなんかじゃなかったんだよー」的な発言が最近目立って来ましたが、当時の内部事情はどうあれ、かの東芝盤の帯にある「金字塔」の文字に殉じようではありませんか。だってやっぱり傑作だもんね。言い方はかなり強引かも知れませんが、私は今になって”プログレオヤジ的には注目すべき”アルバムではないかと、なんとなく思っている次第。ひょっとして70年代プログレの方向に一石を投じていないか?彼らがこのトンデモナイレコードを作っていた頃は、世のなかサイケ真っ盛りでSummer Of Love全盛だったわけですが、彼らは既に次の段階を目指していたと思われる節があります。ポールがかのジミヘンと親交を結び、「モンタレー・ポップ・フェス」への賛歌を強力に推薦したあたりにもそれは充分窺えるのでは?実は、私はいわゆる「コンセプト・アルバム」的な統一感は「アビー・ロード」の方が断然上ではないかと思っていまして、正直言って何故世評で「今世紀最大の傑作」的に崇め奉られているのかやや疑問ですが、感情的には「アビー・ロード」よりこっちの方が好きだという変な立場。ポールの主導色が強いためか、ジョンの弱気な発言が耳につくとは言え、であります。良くも悪くもシングル・カットするにはちょっとなぁ・・・という曲がならんでおります。おりますが、すべてPOPテイスト溢れる反面ヒト癖もフタ癖も作品群なのね。オープニングから「Sgt.Reprise」まで、殆ど曲間無く耳障りの良い流れを堪能した後に待ち受けるのが「A Day In The Life」の狂った挙げ句の果てしない奈落、と言うのもなかなか気が利いています。更に言えば、この一曲でモトが取れるのではないかっ!と私は思っているのですが・・・。ところで、この作品を聴く際には、先行シングルとして発売された「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」(M.M.T.のCDに収録)を順番通り最初に聴くのが正しい楽しみ方だそうな。

 

REVOLVER (1966)

有名なクラウス・ブーアマンのジャケットや”Tomorrow Never Knows”といった曲の存在が、サイケデリック・ポップの代名詞みたいな評価を決定づけている感がありますが、私はちょっと違う印象を持っております。私にとってこのアルバムは、決してジミヘンの「Bold as Love」の如くカラフルな色彩感を魅せてくれる作品ではなく、まさにモノトーンのスリーヴが表現するダークな色合いなのです。また、非常に硬質の音に感じられます。
ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」に触発されたという説もあるように、ビートルズがスタジオでの実験をいよいよ重視し始めた頃の作品としても重要ですが、同時にジョン・レノンが作品に自己の心情をストレートに吐露し始め、(ドラッグ等当時の状況がそうさせたのかとは思いますけれど)妙に厭世観が漂う曲が多くなってきた気がします。これら負のイマージが漂い始めた作品の間にポール色の強いポップなナンバーが絶妙に配置されているのですが、いかにも彼の作品といった感じの「Eleanor Rigby」あたりについても、後年ジョン自ら自分が詞の大部分を書いたと言っていることから察するとやはりジョン色の濃い作品ではないか、などど私は邪推してしまう訳であります。初めてこのアルバムをLPにて聴いた若かかりし頃、ちょうどフォーク・ギターを手にした時期と重なっているせいか、「Here,Thereand Everywhere」や「Got To Get You Into My Life」、「For No One」といった いわゆるマッカートニー・ソングの方がお好みではありましたが、オヤジになってからはやはりどちらかと言えばジョンの作品が気になる様になってしまいましたね。「I'm Only Sleeping」の気だるさや「She Said She Said」に見え隠れするドラッグの影、「And Your Bird Can Sing」に見られる妙にキャッチーなリフなど、彼の表現手段がいよいよ拡散しつつあることも一目瞭然で、前後して描かれた「Rain」同様その一筋縄では聴けない世界は私のお気に入りであります。                  

 

RUBBER SOUL (1965)

大分前の某雑誌で、Beatles初期の作品について「私はこのあたりの音についてはUKオリジナル・モノ盤を聴くようにしている。というのは、その音圧が・・・」といった有り難いお話をしてくれていました。いやーそうですか。それってその辺のCD屋さんで買えるんですかー?と明らかに無駄な質問をしそうになっちまいました。そりゃー手に入れる事が出来る人は良いけれど、俺達はなぁ・・・とあるBeatlesファンのイラストレーター・オヤジとしみじみ語ったものであります。閑話休題。
私、「ひとりぼっちのあいつ」が大好きでありまして、いまだに中学生当時に買ったシングル盤を持っております。この当時は(あちこちで書いてますが)そうそうLPは買えませんでしたので、実は99年になって初めてアルバム買いました。どーもスミマセン。勿論CDです。それで聴いて改めて感じたのは、やはりこの連中の凄いところは時代を超えた良さをまざまざと体験させてくれる、と言うことで、1曲目の「Drive My Car」の格好良さからもう嬉しくなってしまいました。皆さんご存じの通り、このアルバムあたりから明らかに音楽性がいよいよ拡大して来て、サウンド・プロダクションに凝り始めたりアルバムの内容をトータルにコントロールしよう、という意志が芽生えて来た、という訳ですが、私もラジオなどで「ノルウェーの森」や「イン・マイ・ライフ」などを初めて聴き、「あれ、ビートルズってこんな曲もやるんだ?」と驚いたモノです。それまでは元気の良い爽やかなサウンドが当然のカラーだという認識がありましたから、これらの曲のしっとりとした落ち着いた雰囲気はただ意外でした。詞もどうも意味深になってますし。勿論、個人的なメッセージを託した部分も大きいのでしょうが、特にジョン・レノンの詞には人生への深い洞察を感じさせるものがちらほらと現れたりして、30歳をも前にして一体この人は何ちゅう人だったんだろうと考え込んでしまう今日この頃であります。