緊急声明・一橋大学の全教職員学生院生の皆さんに訴える
一橋大学前期自治会
一橋大学後期学生会
一橋大学院生自治会
一橋大学教職員組合
いま、一橋大学の三者構成自治は重大な岐路に立たされている。周知のように、学長・評議会は、現行学長選考制度の学生・職員参加の制度の改廃を提案してきた。私たちは、現行学長選考制度がもっともふさわしい制度であり、これを擁護すべきであるとの立場を堅持しつつ当局との折衝に応じ、7月末以来、職員、学生各々の折衝グループにおいて誠実に協議を行ってきた。
ところが、評議会当局は、この折衝が継続しているにもかかわらず、継続中は見切り発車をしないという相互に確認したルールを踏みにじって、制度の改廃を一方的に強行しようとしている。私たちがもしこのような強行を許すことがあれば、事柄は、たんに現行制度の維持の問題にとどまらず、本学の伝統たる三者構成自治の理念と制度を正面から破壊することになりかねない。私たちは、その各々が大学の構成員としてそれぞれ固有の立場と自立性を持っていることを踏まえつつ、この危機に際し大学の自治を擁護するという一点で、全学に呼びかけることを決意した。
本学の自治は、いま深刻な危機に瀕している。全学の学生・院生・教職員の皆さんがそれぞれの持ち場で直ちに自治の擁護のためにこうした当局の強行に反対する行動に立ち上がるよう訴える。同時に私たちは、学長・評議会が直ちにこうした自治の重大な破壊行為を止めるよう強く警告するものである。
*
一
学長・評議会は、学生と職員が各々折衝を繰り返しているそのさなか、もっぱら独立行政法人化の危機と文部省の意向を口実にして、突如、現行学長選考規則から職員・学生の参加の条文を削除することを教職員の有権者投票にかけることを提案してきた。これは学生・職員に対する重大な権利侵害である。
まず第一に、これは、学生・職員の折衝団がそれぞれの折衝グループにおいて、やや異なる文言ではあれ合意している折衝ルール、すなわち折衝中は一方的に制度改廃を強行しないというルールを踏みじるものである。学生は自治会代表を中心に、また職員は、その窓口としての組合が呼びかけて選出した折衝委員を通して折衝を行っている。この折衝においては、まさしく現行制度の改廃の如何、さらに職員側については、もし改廃が不可避とすればその代案はいかなるものが考えられるかが審議されているのである。しかも、折衝においては職員・学生側がいたずらに時間かせぎなどをすることなく、当局側と合意した議題順に沿って精力的に審議を進めてきていることは、当局側折衝委員ですら、よもや否定できないはずである。有権者投票にかけるというのであれば、この折衝における両者の合意を得たのちに行うのが当然の手続きであることは明らかであろう。
ところが、評議会はこの折衝のさなかに両折衝グループにおける学生・職員側委員のいかなる合意もないまま、折衝の頭越しに有権者投票を行おうとしているのである。当局側折衝委員は、投票は規則・内規からの参加条項の削除を提案するだけで細かい詰めはこれからも折衝で続けるなどと弁解しているが、とんでもない詭弁である。いうまでもなく、学生職員参加を規則・内規から外すか否かこそもっとも大きな論点のひとつであることは、自明ではないか。こうした行為を「強行」「見切り発車」と言わずしてなんであろうか。
二
第二に、有権者投票による規則・内規の改廃の強行は、学生にとってはさらに重大な問題である。なるほど、現行学長選考規則は、教職員の全有権者投票においてその改廃が可能である。しかし、実はこの規則は、学長選考への職員の参加だけでなく学生の参加をも謳っているのであり、学生との団交合意なく有権者投票ができないことは72年1.14確認書で明確に規定されている。ところが、この権利を奪われる当の学生の意思が問われぬまま投票が行なわれようとしている。もし、学生との同意のないまま、教職員の有権者投票によって規則が削除されてしまうとすれば、学生の権利が学生以外の意思によって一方的に奪われることはあきらかである。
三
しかも、大学当局は、こうした提案を11月4日づけの学長の声明と評議会の文書で教官・職員に郵送・配布した。これは、学生・職員との折衝の倫理にもとる重大な背信行為である。なぜなら、この4日には学生との折衝が、また翌5日には職員との折衝が行われことになっていたのである。これは、折衝内容のいかんとは無関係に学長・評議会が11月18日に有権者投票を強行するという一方的な意図しかもっていないことを露骨に示すものといえる。とりわけ11月5日の職員側折衝では、はじめて現行制度に替わる対案を議論する段階に入ることになっており、折衝がこれから本格化するところであった。それだけに、4日づけの学長の声明は折衝を愚弄するものというほかない。
四
さらに重大なことがある。それは、これまで両グループの折衝のいずれにおいても、議題としても取り上げられず、また当然にただの一度も議論されてこなかった学生部長選考制度の改廃が、学長選考規則・内規の削除と同時に、そのどさくさに紛れて強行されようとしていることである。しかも、学生部長選考規則は、規則上は、学生職員の意思を問うことなく教授会で改正すれば可能であることから、学長・評議会は、学生部長選考制度からの職員・学生参加の排除を、学生のみならず、職員の意思すら確認することなく強行するつもりなのである。職員との折衝において、当局側折衝委員は、学生部長選考制度は学長選考と一体でさしたる問題ではないという態度に終始した。しかし、これは余りにも学生部長の大学自治制度における重要性と職責を軽視した態度である。しかも、学生との折衝に至っては、学生部長選考規則の改廃は、いまだ話題にすらなっていないのである。
以上の四点の理由から、私たちは、当局が11月18日に強行せんとしている有権者投票を絶対に許すことはできないと考える。ことは、現行制度の改廃に留まるものではなく、ごく当たり前に守られるべき学内合意形成のルールを踏みにじるものである。当面、教授会メンバーについては、11月11日に予定されている各学部教授会において、助手・職員は予定されている説明集会などの場において、また学生は、各々の学生大会において、かかる問題点も含め大学の三者構成自治の観点からこれを十分検討されること、そしてこうした強行を断じて許さない強い決意を、現行制度に対する立場の違いを越えて、ともに行動に現わされることを強く訴えるものである。
|