平成10年6月10日
学長・学生部長選考制度について
学 長 阿部 謹也
昨年末に学長・学部長選考制度検討委員会を設置して以来、同委員会では職員・学生の学長・学生部長選考への参加の実質を維持しながら選考報告書補足を必要としない方策を見い出すべく専心努力を重ねてきた。その過程で中間報告を行い、理解を求めてきたところである。しかし、中間報告作成過程で上申書をめぐる新事実が判明し、従来の検討方法の根本的転換を迫られたため最終報告をまとめるに至っていない。
私は5月25日の検討委員会の席上、何らかの工夫をして職員・学生の参加の実質を確保しようとするこれまでの検討方法の問題点を指摘した。大学は真理探究の場であり、公明正大でなければならない。大学の代表を選出する際に、たとえ善意からにせよ、公表できない操作が加えられることは公明正大であるべき大学の取るべき態度ではないと判断したからである。学長としてのこの見解を検討委員会は了承した。
職員との対話集会が27日に迫っていたこともあり、学長選考の日程の問題を考慮し、部局長会議並びに評議会に次のように提案し決定された。
(1)今後選出方法の検討は評議会で行う。(2)職員との対話集会ではこうした検討の現状を報告し、理解を求める。(3)検討委員会はこれまでの検討状況を整理し、速やかに解散する。
現在一橋大学は大きな岐路に立たされている。広い意味では国立大学全体が大きな転換点に立っているとも言える。大学審議会では21世紀の大学像に関して審議を続けており、大学の組織運営の問題や、評価の問題、学長選考のあり方なども議論されている。審議会の論議は6月に中間答申、9月に最終答申として出され、いずれ法制化される予定である。こうした時代の大きな流れに一橋大学も深く関わることになるだろう。
他方で一昨年の末以来、行財政改革の一環として国立大学のあり方が政治問題化していることは良く知られているとおりである。国立大学の独立行政法人化あるいは民営化が今後の選択肢の一つとして行財政改革の最終報告書に記されている。この問題については国立大学協会も組織を挙げて戦っているが、その帰趨はさだかではない。万一独立行政法人化あるいは民営化が決定されると大学の学問研究は壊滅的な影響を受けるであろう。
学長・学生部長選考に教官以外の者が関わっているあり方について本学は長年に渡って文部省から指摘を受けている。本学の選考のあり方は長い歴史に裏付けられたものであり、本学としてはその点を強調し、これまで様々な折衝を行ってきた。しかし現在の状況はこれまでになく厳しいものがある。本学がこれまでと同様な態度をとり続ける限り、本学の研究・教育の現在の状況を維持することすら困難になる可能性がある。このような事態にも関わらず、学内には現在の選考制度を維持すべきだという声があるであろう。しかし学長は本学の責任者として本学の研究・教育を維持し、発展させてゆく義務を負っている。そのような立場に立って学長は従来の職員と学生の参加のあり方を再考せざるを得ないものと考えており、本学教職員学生の理解を求めたい。
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