「晴れ風」に「太陽と風のビール」を想ふ
キリンビールの「晴れ風」といふビールがなかなか旨い。私は、このビールに既視感を覚えた。
思ひ出したのは「太陽と風のビール」だ。製造工程の事故が災ひしたこともあり早々に姿を消してしまつた首都圏限定ビールだつたが、ネーミングもテイストも「晴れ風」は「太陽と風のビール」を彷彿させる。
20代後半に初めてアルコール飲料を飲んだ私は当時30歳で、副原料を使はないビールが酒類として一番の好みだと知り、「ヱビスビール」や「サントリーモルツ」など様々な所謂オール・モルト・ビールに手を出してゐた。
そんな中で「太陽と風のビール」は飲み口の軽快さが際立ち、かといつて物足りないこともない絶妙な存在だつた。当時は「一番搾り」も今とは違ひ副原料を使つたビールだつたため、キリンから発売されたオール・モルト・ビールとして「太陽と風のビール」を永く愉しめればよいと思つてゐただけに、早々の販売中止には大いに落胆したものだ。
そんな積年の未練を払拭してくれたやうな感覚に陥つた新しいのに懐かしいビール。それが私にとつての「晴れ風」だ。「晴れ風」は、志半ばで散つてしまつた「太陽と風のビール」の生まれ変はりかもしれない、と想ふのである。
目次へ戻る
このページは長谷部 宏行(HASEBE, Hiroyuki)からの発信です
2025年9月29日初稿/2025年10月4,5日改稿