白鳥座 X−1 (Cyg X−1)

 ブラックホール第一候補星

 

 

 白鳥座X-1のX線画像。

 

 日本のX線天文衛星「あすか」より。

 

 

 

 

 

 

 

第一章、白鳥座X-1の発見。

まず、白鳥座X-1(CygX−1)の発見の過程から述べていこう。 白鳥座X-1は1962年に発見されたのだが他のX線源と比べて強度が弱かった為、詳しい観測は若干遅れたのである。 最初に注目された特徴はX線のエネルギースペクトルが巾関数型のスペクトルであり非熱放射のメカニズムが働いている様である。 スペクトルがかに星雲に似ていた為、超新星の名残な星雲が近くにあるのではないかと観測されたがそれらしき物は発見出来なかった。そこで何とかX線源はどこか精度良く決め、光や電波で詳しく観測する事が重要な課題となって来た。

 

←図1、白鳥座付近のCygX-1のX線位置

X線源は米国の世界初のX線観測衛星「ウフル」、マサーチュセッツ工科大学のロケット観測チーム、日本の小田稔氏の気球観測チーム等のグループ競争に依り8年間かかって追いつめられ、位置は徐々に絞り込まれていった。

 

 

 

 

そして1971年初め、X線源の位置を観測チーム三者がほぼ同時に発表した。そこには・・・HDE226868という9等星のB0型の青色超巨星があった。そして同年4月、オランダのライデン大学の電波天文台がこの星からいきなり電波が受信できた事も発見され、電波の強度がX線強度の変動と連動していたのでこの星がCygX−1である事が決定的となったのである。 このB0型の青色超巨星、一見何でもない星で、1924年に作成された「ヘンリードレイパー」カタログに226868番として登録された普通の恒星であった筈だが強いX線を出しているだけでなく電波も出ている事では普通の恒星とは全く違うのである。 案の定、1971年にはトロント天文台とグリニッジ天文台は星から放出される水素の線スペクトルを調べ、この星が5.6日の周期の連星系である事を発見した。

 

←図2、HDE226868とCygX-1の公転運動。 縦が速度(Km/sec)、横が5.6日周期の位相

イギリスとカナダの天文台でマーディンとウェッブスター、ボルトンがそれぞれHDE226868は公転周期が5.6日の分光連星である事発見した。 水素の輝線を出すのは「緑、Hβ」HDE226868、ヘリウムの輝線を出すのは「青、He U4686」CygX−1と考えられている。 HDE226868とCygX−1からのスペクトル線のドップラー効果を調べて御互いの公転周期が発見された。

 

 

 

 

そう、X線や電波等はこの星から出ている筈なかったのである。 そして世界の天文学者達が競って観測、研究し、1つの回答がなされたのだが・・・・どんなに否定的な反論を出してみても・・・結局このCygX−1は「ブラックホールである」と言う結論になったのである。

 

第二章、白鳥座X-1が「ブラックホールである」との証拠。

では、天文学者様達が研究、観測したデーターをもとに「ブラックホール」の証拠を解説して行こう。

 

 1、CygX−1の質量があり過ぎる。

まず、HDE226868とCygX−1の連星周期の解析から御互いの質量が得られた。

←図3、普通のX線連星系での公転運動の重心は青色超巨星ならば、ほぼ超巨星の中心に重心「×」がくる。何故なら青色超巨星ば質量がとてつもなく大きいからであり、伴星のX線源はせいぜい太陽質量の1〜2倍位しか質量が無いからである。

 

 

←図4、しかしCygX−1の連星公転運動の重心は青色超巨星の中心から離れた所にあったのだ、最初はHDE226868の質量は太陽質量の15〜30倍と見積もられていて、CygX−1の質量も最低6〜8倍程「これでも中性子星の上限を遥かに越えている」であったのだが、最新の観測ではHDE226868の質量はどんなに少なく見積もっても太陽質量の42倍以上と言う結論が導かれた為、CygX−1の質量もどんなに最低でも太陽質量の9.5倍以上となりとても中性子星の斥力では支えきれる質量ではないのである。 これはもう「ブラックホール」でしかないのである。 「因みに後で述べるがCygX−1の質量は太陽質量の20倍はあるかも知れないのだ」

 

2、質量があるのにCygX−1が見えない。

CygX−1迄の距離は約6000〜8000光年、6000光年にあるかに星雲「中性子星」が見えるのにだ、CygX−1が「ブラックホール」なら当然見えないのが納得が行く。

 

3、HDE226868の光度曲線が異常。

1972年には青色超巨星HDE226868の光度曲線も調べ上げられたのだが・・・

←図5、HDE226868の光度曲線「ウォーカー、1972年」CygX−1との連星周期に光度曲線が2回づつある。

 

 

 

 

光度曲線の観測結果を見てまたもや天文学者達は驚愕した。 普通の連星系では光度曲線は1周期の間に極大と極小が1回づつなのだが、HDE226868では極大と極小が2回づつになっていたのだ。 どういう風にしたらこんな光度曲線になるのであろうか?、次にこの光度曲線を検証して行こう。

 

←図6、普通の連星系ならば主星「青色」、伴星「濃緑」で連星公転運動をしているとする。 この場合、主星「青色」が明るく且つ伴星「濃緑」も明るく輝いていれば御互いに近づく時に極大が左と右で2回づつになるであろう。

←図7、又、御互いに姿を隠し合えば「前、後」これも極小が2回づつとなるであろう。 但し実際には主星「青色」と伴星「濃緑」では明るさが違う為、光度曲線に副極大、副極小と光度曲線がややこしくなって来るのが一般的であり、その上この事例では主星、伴星共に可視光で輝く恒星の場合である為、こんな連星系であるなら当然CygX−1は見える筈である。

←図8、では、X線連星系「白色矮星、中性子星」を持ってきたらどうなるか? X線連星「」は、星の表面のガスを飲込む為、まずX線星の廻りにアクリェーションディスクが出来る。 そしてアクリェーションディスクとX線星からX線を放ち主星「青色」の表面を照らす。

←図9、すると主星「青色」の表面が強烈なX線で高温となり、主星が「反射効果」で明るくなるのである。これは実際にヘラクレス座X−1と言う天体がこの様な「反射効果」で輝いているのだが・・・しかしこれでは光度曲線が1周期の間に極大と極小が1回づつになってしまうのである。 (ToT)  その上青色超巨星HDE226868はどんなに少なく見積もっても太陽質量の42倍以上と大変重い星であり、星表面の温度も5万度くらいはある為、「反射効果」等は全く作用(効果が無い)しないのである。(ToT)

←図10、それならば最後の方法がある。「実際にこの様にしている事が現在解っているのだが・・・」この図はちょっと大袈裟だが、X線連星「」の強い重力を青色超巨星HDE226868がまともに受けて大きく歪み星の見かけの大きさが変わる「楕円効果」と考えられている。

←図11、そして星の前後にX線連星「」が来ると星の見かけの大きさが変わらない様になる。 この様にして青色超巨星HDE226868の光度曲線が1周期の間に極大と極小が2回づつになっていたのである、但しこれだけ大きな青色超巨星を歪ませ星の見かけの大きさを変えさせる「楕円効果」為にはにX線連星「」の質量が白色矮星、中性子星ではとても足りず正体不明の天体はやはりブラックホールであろう。「CygX−1のブラックホールの質量はどんなに低く見積もっても太陽質量の9.5倍以上との計算結果が得られている。」

 

4、X線強度変動でCygX−1の強度変動が不規則。

1974年にCygX−1のX線強度変動も解ったのだか・・・

←図12、CygX−1のX線強度変動。 上はHerX−1のX線強度変動である。 1.24秒周期のX線パルスを発しており比較の為載せて見た。

 

 

 

 

 

又又、天文学者達は驚愕した。 CygX−1のX線強度変動は0.1秒程の短時間から数秒に至る色々な時間スケールで周期性が全く無く、そして著しく激しかったのである。 これには先ずX線パルサーの周期性の説明をしておこう。

 

←図13、X線パルサーは中性子星であり、中性子星は高速で回転している。 強い磁場も持っており、北と南の磁極がある。 又、強い重力の為、連星の相手からガスを剥ぎ取って中性子星表面に落ち込むのだが中性子星の表面近くではこの二つの磁極へのガスの落ち込みが圧倒的に多くなる。 この結果、両極が高温になり非常に強く輝くX線を放射する事になる。 しかし大半の中性子星では自転軸と磁軸がずれている。 こうなるとと・・・

 

←図14、X線パルサーの簡単なアニメーション。 「読み込みに負担がかかる為アニメーションはこれだけにしておく、又中性子星は別途作成した時に詳細に説明させて頂く」

この様に一回転で二回強度の強いX線パルスが観測される訳なのだがCygX−1のX線強度変動にX線パルスが見つからない。 そして著しく激しい。 X線パルサーは中性子星の表面から出ているがブラックホールでは表面からX線が出せる筈も無く、CygX−1のX線はブラックホールに飲込まれる寸前のガスの断末魔の叫びだったのである。

 

5、CygX−1のX線スペクトルも異常。

先ず中性子星のスペクトルを見て頂くと・・・

 

←図15、これはX線パルサー型と呼ばれるものでエネルギーの低い軟X線領域ではX線強度がほぼ一定だが、エネルギーの高い硬X線領域では強度が急に落ちる。 このタイプのスペクトルを示すX線連星では、X線の強度が周期的に変化するが、その原因は強い磁場を持つ中性子星「特にX線パルサーと呼ぶ」の自転に依るものだと考えられている。

 

 

←図16、後者の熱放射型ではX線スペクトルがカーブを描きながら硬X線側で落ちて行く。これは非常に高温のプラズマのガスから放射されるX線特有のスペクトルで、中性子星の表面近くの高温プラズマから放射されていると見られる。熱放射型が中性子星を含むと言う証拠は、このタイプのスペクトルを示すX線連星では、しばしば急激にX線が強くなる「X線バースト」と言う現象が起こり、それが中性子星表面の爆発現象だと判明している為である。

 

←図17、しかしブラックホールではかなり違ったX線スペクトルを見せ、先ず「ハイステート」と呼ばれる状態では軟X線の強度が強く、スペクトル全体がほぼ1000万度の熱放射「黒体放射」のそれに近い。 因みに中性子星の場合にも熱放射型があるが温度は約2000万度と二倍である。 又、ブラックホールの場合、硬X線の領域で裾を引いているのも特徴である。

 

←図18、一方「ローステート」と呼ばれる状態では軟X線から硬X線にかけてだらだらと伸びた「べき乗型」と言われるスペクトルが表れる。 又、ローステートではX線の強度が数秒から数十ミリ秒で不規則に変化する事が観測されているが、この様な不規則な時間変動は、中性子星の発するX線では見られない。 ブラックホールと考えられている天体では「ハイステート」と「ローステート」のどちらかの振る舞いを見せるが、特にCygX−1はこの「ハイステート」と「ローステート」の両方のスペクトルを示すのである。

 

 

 

6、更にCygX−1の大きさも観測されたのだが・・・

1996年に日本のX線天文衛星「あすか」によってCygX−1の降着円盤の黒い穴「シュバルツシルト半径」が求められたのだが半径は約75kmと発表された。 どういう観測結果で求められたのかは不明だが多分、1/2000秒のX線変動が見つかったものと思われる。 「30万km×1/2000=150km 150km÷2=75km」 太陽質量の10倍のブラックホールならばシュバルツシルト半径は約30kmになる筈である。 発表された半径は今後の観測に依って更に小さくなる事も考えられるが半径が75kmならばCygX−1は太陽質量の20倍強の質量を持ったブラックホールと考えるのが妥当と思われる。

 

 

青色超巨星HDE226868からガスを剥ぎ取り飲込むブラックホールCygX−1の想像図

 

こんな天体が近くに無くて良かった。 もし近くであれば太陽系ごと簡単に飲込まれていただろう。 何せ飲込むだけの「飽くなき大食漢」なのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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