作品名: 辺境の警吏 - |
米盤の「ザ・フォード・アット・フォックス」DVDの「荒野の決闘」にオマケとして付いているので 、比べて見ると面白いという事ですね。題名は「フロンティア・マーシャル」、戦争前だから日本 に来なかった様だけど、あっしもクインキャノン軍曹殿に倣って「辺境の警吏」と呼ぶぜ。 銀鉱が発見され俄かに発展する、ツームストーン。冒頭悪党のカーリィ・ビルの手下、インディアン チャーリィが酒を飲んであばれます。なるほど、展開は「荒野」と同じと言うか、 こちらが本家ですからフォードが真似ているわけですナ。しかもランディー・アープはホテルの 柱を伝って二階から降りてきて、しり込みする保安官から拳銃を借りてチャーリーを取り押える。 そして、この場面、銃声だけで、チャーリーを倒すところは見せていない。後年、「荒野」のこの 場面を黒澤が真似たというんだが、すでにここにあったのだ。この最初のシーンは面白い。 チャーリーの暴挙に怖気ずく保安官にワード・ボンド。「荒野」はハリー・ウッズで、この人 ここではビルの手下で出演しておる。そしてボンド氏はこの前のオブライエンの分とフォードの 分、3本に出演している。インディアンのチャールス・スティ−ブンスは、2作で同じ役を演じま す。この人、かのジェロニモの孫とか言うんだけど本当かね。ともあれ、ヒーロー、ヒロイン、悪 党、と夫々を比較すると大変興味深い、ランディ・アープは無髭、ハンク・アープは有髭、ロメロ・ハリディは髭があるが、 マチュア・ホリディには髭がないとか、ヒロインは2人とも気丈とか。 ジョン・フォードはかなりこの映画を研究しているとおもう。でないと、アープが保安官を引き受 けるシーン、ビニー・バーンズのジェリーがイカサマをする場面や、それに続くジェリーを水桶に 投げ込むシーンは撮れないね。でも流石は反骨の人ジョン・フォード、主人公たちの髭だけで無く、ディティールを細かく変えておる。 ランドルフ・スコット主演、アラン・ドワン監督のアープ伝、快作です。「荒野の決闘」のファン の方も是非一度ご覧ください。[2008年12月30日 13時51分57秒]
ご贔屓のランドルフ・スコットがワイヤット・アープで、シーザー・ロメロがドク・ハリデイのアラ ン・ドワン監督作品。これを作り直したのがJ・フォードの「荒野の決闘」とくるんで、「硝煙牧場」 と並んで、長年、見たかったのさ。「駅馬車」と同い年の古物だからDVD鑑賞だけど。どうも日本で 公開された様子がねえみてえだし、それなら邦題もねえはずだけど、昔の人は確かこれを「辺境の警吏」っ て呼んでたから、あっしもそれに倣うぜ。 新興の町トムストーンのワード・ボンド保安官は、酔っ払って酒場で短銃撃って暴れてる乱暴者の取 り押さえを渋って首になり、アープが後任さ。酒場女のジェリー(ビニー・バーンズ)がドクに惚れて るとこへ、ドクの前の恋人のサラ(ナンシー・ケリー)が町に来て、女同士が意地を張り合う一方じゃ、 大金を運ぶ駅馬車を悪党一味が襲って、護衛のアープと乗客のドクが撃退したりするね。人気芸人のエ ディー・フォイ(演じるのはフォイ・Jr)が舞台出演のことで脅されて、ドクやアープに助けられる けど、ここじゃフォイの達者なボードビル芸が楽しめるよ。 ドクは、ある晩、悪党一味の流れ弾が当たった子供を手術して助けた直後、一味の乱射を浴びて死に、 それに続いてアープが一人でOKコラルで一味を倒すんで、ジェリーも悪党を撃ってドクの仇を討つし、 この辺が実際と違うから、ドクがホリデイでなくハリデイになってるのかな。アープの弟たちやクラン トン一家は登場しねえし、アープとドクが一緒に果たし合いに赴くんでもねえから、これは「荒野の決 闘」とも「OK牧場の決闘」とも違うねえ。銀鉱山景気に沸く新開地で、名射手保安官のアープと、 肺病病みでインテリやくざのドクと、ドクを巡る二人の女が絡む腐れ縁、それに町の悪党や駅馬車強盗 相手の抗争の日々が、ドクの死で終わる物語って思ったよ。突飛だけど、後年の「冒険者たち」ってフ ランス映画が頭に浮かんだぜ。 トムストーンにも銀行ができたりして落ち着きの兆しが見える頃、そんな町は自分にゃ合わないって 出て行くのは、アープじゃなくジェリーだけど、町はずれの墓地の脇を過ぎる駅馬車の窓から、ドクの 墓の方に「さよなら、ドク」って彼女が囁きかけるのにゃ、「クレメンタイン。あっしゃこの名前が好 きだねえ」っていうのとはまた違った情感がこもってたね。70分ちょっとと短いけど、人間模様が描 けてるって点じゃ、多作のスコット作品中でも群を抜いてるって思うよ。[2005年10月28日 21時20分22秒]