作品名: ロッキーの怪人 -


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お名前: ポルカドット   
 ランドルフ・スコットとチャールズ・バートン監督による1935年作品(The Fighting Westerner, 
aka. Rockey Mountain Mystery)。ゼーン・グレイ原作で、鉱山で管理人が殺された事件の犯人探しです
が、実は当時の現代劇で、鉱山もラジウム鉱山とモダンです。開巻、鉱山技師のスコットが鍔広帽にガ
ンベルト、皮のチャップスといういでたちで、鉱山に馬を乗りつけるあたりは西部劇の雰囲気ですね。

 鉱山の保安官事務所には、ミイラみたいに包帯を巻いた管理人の遺体が安置されていておどろおどろ
しく、スコットは老保安官補に協力して犯人探しを始めます。人里離れた場所が舞台だから、登場人物
はスコット、老保安官補、病弱のためベッドで過ごしている鉱山主、鉱山主夫人、殺された管理人の妻
であって、長年鉱山主の家政婦でもある婦人とその息子、鉱山主が遺産分配などに備えて呼び寄せた甥
と姪の兄妹、別の姪、中国人の使用人、の十人で、犯人は当然この中の誰かです。

 「ロッキーの怪人」という邦題は無声版「オペラの怪人」からの連想でしょうね。黒マントに黒い帽
子の怪人が出没したりするのが、ちょっとロン・チェニー扮する怪人を思わせるので。鉱山事務所には
電動の鉱石砕鉱機が備えてあり、これは大きな槌が上下して石を砕き、成分を取り出すものですが、人
の頭を叩き潰して殺すのにも使われますから、なかなか怖い機械です。

 若いアン・シェリダンが一方の姪で、大詰め近く、殺人犯にどこかへ監禁されます。スコットが犯人
を追いつめると、犯人は「自分は死ぬのは怖くないが、州当局による死刑はいやだ。告白書に署名する
から、弾を一発込めた銃を渡して一人にしてくれ。そうすれば詳細をメモに書いて遺す。」と言います。
シェリダンの無事を図るため、スコットはやむなく告白書に署名させ、一発だけ装弾したピストルを置
いて外で待っていると部屋で銃声が響き、部屋に飛び込んで見ると...、といった具合です。

 スコットとシェリダンの他は、私などには馴染みのない出演者ばかりで、家政婦役のレスリー・カー
ターという女優さんは、当時もう七十才を超えていますが、十九世紀後半に人気舞台女優だったそうで、
そういわれると華やぎの名残を感じますね。老保安官補のチャールズ・'チック'・セイルはやはり著名
俳優らしいですが、飄々としてコミカルな老人で、鉱山主宅の居間でコーヒーをご馳走になるとき、熱
いコーヒーをコーヒー皿に移して、臆面もなく「ズルズル」と音を立てて啜り、居合わせた人々が眉を
しかめるという野人ぶりです。私まで少し気分が悪くなりましたが、当時、映画館で見ていた何百人か
の観客も一斉に気分が悪くなったかも知れないと思うと愉快ですね。彼は一件落着の後、正保安官に昇
格しました。

 劇中、シェリダンは「ハワイでパイナップル農園を開きたい。」などといっていましたが、ラストシ
ーンは、本当にハワイでスコットと所帯を持ったらしい情景です。西部劇では海が出てくるだけでも珍
しいのに、ラストシーンが風にそよぐ海辺の椰子の木とハワイアン音楽では、西部劇に分類するのはい
かがかと思いますが、一時間ほどのミステリー小品として楽しめます。
[2007年10月20日 18時39分51秒]

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