作品名: ブロークン・トレイル 遥かなる旅路 -


書込欄へ  ヘルプ
お名前: J.W.   
ウェイン命さん推薦のブロークン・トレイルを正月休みにじっくりと見る。
ウォルター・ヒルといえば、ロング・ライダーズ、ストリート・オブ・ファイアー、48時間など
押し付けがましいと思うほどハードな描写と濃密な撮影で印象に残っている監督で
あるが、本作はTVを意識したのか、それとも歳のせいか。意外なほど枯れた味わいの
情感溢れる作品となっている。
ただし、西部劇のつぼを押さえるところはさすがであり、久方ぶりに西部劇らしい西部劇
に出会えた感じ。特に馬の大群の美しさには、堪能させられる。中国人を取り上げたり、
何事も銃で解決する(せざるを得ない?)など、いかにも平均的アメリカ人が好みそうな
ご都合主義、TV向けの所があることも否めないけれど、真面目な西部劇です。
トイレット・ペーパーの話とか、死の商人のエピソードなど、もう少しユーモアがあればと言うのは
欲張りか。
ロバート・デュバルは相変わらずの名演ぶり、スパイダーマンのサンドマン事、トーマス・ヘイデン・チャーチも、なかなかさえたガンプレーをしており、これからも西部劇に出て欲しいと思う。
[2008年1月4日 22時20分12秒]

お名前: ウエイン命   
久々に心から感動できる作品に出会いました。「ロンサム・ダブ」を観ていない私にとっては「ダン
ス・ウイズ・ウルヴス」以来でしょうか。私は、この作品をW・ヒル西部劇の集大成ではなく新境地
と呼びたいと思いますね。と云うのは、私には「ジェロニモ」以前の西部劇とはかなり違ったものに
見えたからです。勿論、リアリティに関するテクニカルな部分はこれまで積み重ねてきた経験の成果
であるに違いありません。彼は「どんなに脚本や演出が良くても、衣装・セット・小道具などにリア
リティがなければだめ」と云い切っていますよ。この作品も例えば、テンガロンハットに至るまで細
かな配慮がなされており、デュバルはネブラスカ風、チャーチはオレゴン風になっているそうです。
実は、これまでそのリアリズム偏重(私が思うだけですよ)とも思える姿勢に「事実だからと云って
何もそこまで…」と思うことが多く、どうしてもヒル西部劇を好きになれなかったのですが、この作
品に関しては、実話に基づいて構成されているとのことから当然リアリズムに徹しながらも、西部に
生きる人達の哀歓がより強く押し出されていると云う点で、従来とはまったく違った印象を受けまし
た。例えば、お話しの進行上あってもおかしくない強姦シーンなど、酷いあるいは惨めな部分は極力
回避し、観る側が画面の展開から自然に想像するようになっていますよね。TV映画と云う事情もあ
るかと思われますが、ヒルの硬派振りと登場人物に注ぐ眼差しの優しさが、この作品をリアルであり
ながら情感溢れるものにしているのではないでしょうか。唐突ですが、その配分の妙はペキンパー作
品に相通ずるものがあるように思いました。考えて見ると、これまでリアリズムばかりに眼が行き過
ぎてそう云う部分を見逃して来たのかも知れません。この作品を観たその眼がまだ熱いうちに「ロン
グ・ライダーズ」等過去の作品を観直して見たいと思っています。
これまでと違った印象と云えばカメラもそうですね。暗くて見づらいのに閉口していたのが嘘のよう
な美しく壮大な画面にすっかり引き込まれてしまいました。中でも、ヒル自身かなり力を入れたと云
う馬の群れの大移動シーンは圧倒的で、マクラグレンの「大いなる男たち」を彷彿とさせました。
俳優もみんな好演、中でも御大デュバルは「自分にとってこの作品は『ロンサム・ダブ』『ワイル
ド・レンジ』と続いた三部作の完結編なんだ」と云っていますし、「ワイルド・レンジ」の時に買っ
たと云う自前のテンガロンハットで臨んでいることからも、かなり入れ込んでいることが窺えます。
ただ、メイキングで「デュバルはノーギャラでも出演しただろう」と云っているのにはいささか異論
があるんですよね。私もデュバルは大好きですが、ことギャラ問題に関しては今でもアタマに来てい
ることが1つだけあるからなんです。彼のキャリアを語るうえで「ゴッドファーザー」「地獄の黙示
録」と云うコッポラの代表作を忘れることは出来ませんが、「ゴッド3」の製作に当たって、当時既
に大スターとなっていた彼はギャラの折り合いが付かず、何と大恩人とも云うべきコッポラのライフ
ワークたる「ゴッド」の大切な完結編への出演を蹴ってしまったと云う前科があるんですよ。その結
果、A・パチーノ以下ファミリー全員が当初のメンバーで固められた中、弁護士トムだけが他の俳優
になってしまい、我々「ゴッド」ファンはすっかり白けると共にデュバルを大いに呪ったものです。
この「ゴッド」は当初の主要出演者が18年後のシリーズ完結まで1人も欠けることなく全員存命で且
つ現役であったと云う稀な作品であっただけに余計残念でなりませんでした。
とは云いながら、この作品を観ていると、とても彼がそんなにギャラに固執するような人には見えま
せんよね。きっと何か深い訳があったに違いないと思うことにします。
ところで、ヒルはこれまでのキャリアの中でペキンパーにかなり影響を受けたらしく「監督の仕事の
7割はキャスティングである」と云うペキンパーの言葉を「至言」と表現していますが、この作品に
ついて「キャストは『ロンサム・ダブ』より豪華になった」と云ってるんですよ。私から見ると、
T・L・ジョーンズ、D・グローバー、A・ヒューストン、D・レイン等錚々たるメンバーを揃えた
「ロンサム」の方が遥かに凄いと思えるんですが、そう云うものでもないんでしょうか。
[2007年12月15日 19時29分23秒]

※この作品についての発言をどうぞ。
氏名
E-mail URL

半角カナは文字化けします。  ※自動改行ではないので40〜50字で改行(ENTER)してください。

作品名リストに戻る