ロバート・ミッチャムは言うに及ばず、バーバラ・ベル・ゲデスに続いて
ロバート・ワイズも死んだので、この映画を思い出した。
ロバート・ワイズといえば、普通は「ウェストサイド物語」や「サウンド・
オブ・ミュージック」や「スター・トレック」だろうが、私にはこの映画や
「罠」や「拳銃の報酬」である。ワイズはRKOで低予算ホラーから仕事を始め、
多くのフィルム・ノワールやスリラーを撮った。この映画の直後の「罠」('49)
もそのひとつで、カンヌで何かの賞を取っている。「真昼の決闘」のように
実際の時間と映画の時間の進行を一致させた八百長ボクシングの話で、今
見ても結構見ごたえがある。ハリー・ベラフォンテ主演の「拳銃の報酬」('58)
もドキュメンタリータッチの知的な犯罪映画だった。
これら三つの作品に共通するのは、モノクロ・ハイキーの陰影のある映像と、
運命論的なストーリーだ。
「月下の銃声」ははるばる訪ねた友は、もうかつてのような人間ではなかった、
という半ばありきたりなものだが、同じくRKOで多くのフィルム・ノワールに
出演したミッチャムを得て、独特の雰囲気を持つ作品に仕上がっていると思う。
その独特さは「夜」だ。ラストの撃ち合いは言うまでもなく、夜陰の中を走る
牛の群れを真上から捕らえたショットや、ランプの明かりのもとでの殴り合い
など、「夜」のシーンがとても印象的で、そのライティングはノワール映画その
ままだ。そもそもタイトル自体が「夜」を暗示している(邦題もなかなかいい)。
当時の闇は深かったはずなのに、意外と「夜」をリアルに感じさせる西部劇は少
ない。その意味でこの作品やC・イーストウッドの「許されざる者」は貴重だと思う。
[2005年9月16日 21時48分22秒]