イアタリー製のスパゲティ・ウエスタンは一世を風靡しましたが、驚いたことにこれは1961
年のフランス製西部喜劇です(原題:Dynamite Jack)。確かカラー・シネスコ版でした。主演は
コメディアンのフェルナンデルで、ジュリアン・デュビビエ監督の名作「舞踏会の手帖」の最後
のエピソードに美容師で登場した人物です。
もちろん、私もまっとうな西部劇など期待せず、一体どんなものを作ったのかと思って見に行っ
た次第です。フェルナンデルが悪漢バスコムみたいなタイトル・ロールの無法者と、「腰抜け二
挺拳銃」のピーター・ポッターみたいなお調子者の主人公の二役をやっていました。もちろん本
場西部劇のような雰囲気が出るわけもなく、駅馬車などはアパッチに追われて100メートルも
逃げたらバラバラになりそうな感じでした。
筋はすっかり忘れましたが、主人公とダイナマイト・ジャックのポーカー・ゲームの場面を覚え
ています。同じ俳優が差し向かいで芝居するトリック撮影です。主人公にはツー・ペアだったか、
結構いい手が来ている。しかし相手が無法者のダイナマイト・ジャックなのを悟った主人公は、
勝ってにらまれるのを恐れ、1枚だけ残して4枚換えてくれという。そして配られた4枚を1枚
ずつ手札に加えて行くと、同じ札ばかり続いてたちまちフォア・カードか何かになってしまい、
引っ込みがつかなくなるという場面で、ここは笑えました。
何でこんな映画を作ったのか未だに理解できませんが、フランスの映画人にも西部劇ファンが
いて、西部劇を作ってみたいと思ったのかも知れませんね。
[2005年8月19日 11時30分3秒]