作品名: 荒野のストレンジャー - |
ウェイン命さん、 「理解はこれでいいのか」などとおっしゃらぬよう。 すべてはただの感想です。 70年代の西部劇はウェインとイーストウッドだと思うのです。 それ以外に見るべきものはありません。 イーストウッドは、西部劇とジャズこそがアメリカ文化の真髄だ、 と思っているようで、それらに真正面から立ち向かいます。 「真昼の決闘」に「シェーン」をやっつけたかと思えば、スタージェス作品に出たり、 バッド・ベティカーの脚本を映画化したり、「奴らを高く吊るせ」は「牛泥棒」の 続編がごとし。頑張っています。孤軍奮闘です。「アウトロー」は微笑ましく いとおしい作品でした。(ジャズについては「バード」があります) でも、彼にはウェインのように西部劇は撮れません。 ベトナム戦争にハードコアポルノに公民権運動の時代ですから。 だからウェイン西部劇には「返歌」もオマージュも批判も無しです。 ウェインは当時まだ生きていて、彼自身の道を淡々と進んでいました。 触れないことが敬意ということにもなりましょう。今さらのように荒野に馬を進める孤独な二人 だったと思います。 それでもやめてしまうには惜しいジャンルだ、そう思っていたのでしょう。ご存知のように 試行錯誤を繰り返しながら、ウェイン亡き後の80年代にもイーストウッドは西部劇を撮り続け ます。 だから「許されざる者」を見たとき、あんたはほんとによくやったよ、と言ってやりたく なりました。あの美しい映画は西部劇に対する愛情と覚醒に満ちた、イーストウッド西部劇の 集大成だと思います。よっぽどの題材が無い限り、彼はもう西部劇を撮ることはないでしょう。 私もウェイン命さんと同じ意見です。[2006年8月28日 19時18分17秒]
邦題から受ける感じがいかにもマカロニっぽいので録画しっ放しになっていたんですが、「ペイルラ イダー」の欄で「44−40」さんが「真昼の決闘」への「返歌」とおっしゃっていたので、「返歌」? 「オマージュ」ならよく聞きますが「返歌」とは、と興味が湧き遅ればせながら観た次第です。 で、感想を書こうとしたらなんとINDEXにないじゃありませんか。(間違ってないですヨネ)やっぱ り皆さん、イーストウッドの西部劇にはちと冷たいなーと思ってしまいました。私は、彼の西部劇に 対する並々ならぬ思い入れにかねがね敬服しています。 と云うわけで、まず映画の紹介をさせて頂きます。原題「High Plaines Drifter」、イーストウッド 監督主演ですが、共演陣の顔振れがちょっと寂しい1作。カメラはB・サーティースですから例によ ってキレイです。 とある町にストレンジャー(イーストウッド)がやって来て、いちゃもんをつけた3人をいきなり射 ち殺します。彼等が町の嫌われ者だったので事なきを得ますが、髭剃り中、銃に手をかけてもいない 相手に白布の下からぶっ放すんですよ。西部劇のヒーローとしては「イイのかな?」と云う感じです よね。折しも町に恨みを持つ悪漢3人が刑期を終え仕返しにくるところで、町はストレンジャーを用 心棒に雇いたいと申し出ます。(なんか「荒野の決闘」みたいですネ)。全権一任、何でもタダを条 件に申し出を引き受けるんですが、タダ酒は喰らうは(条件ですからネ)、女は犯すは(こちらは条 件じゃありませんヨ)、挙句の果てには町を「HELL」と改名、町長と保安官を解任してホームレスに 兼任させるなどやりたい放題。 実は、ストレンジャーは町の元保安官のゴーストで、町の財産だった銀鉱が国有地であることが判明 したとき国へ返還しようとしたことから、町が雇った3人の悪漢になぶり殺しにされ、悪漢は町に1 杯食わされて刑務所送りになったと云う忌まわしい過去があり、町は今その両方から報復を受けよう としていると云うわけです。怖いですネー。町民がまず悪漢に皆殺しにされた後、今度はストレンジ ャーが悪漢を自分がやられたと同じやり方でなぶり殺しにします。不思議なことにそれまでどこにも なかった保安官の墓が、ゴーストが恨みを晴らして町を出て行く時にはちゃんとあるんですヨ。 私は、ストレンジャーがゴーストだと気づくまでに相当かかりました。イ−ストウッドの西部劇に幽 霊が(それも主役で)出るなんて想像もつきませんからね。なぶり殺しになる場面を夢に見てはうな されることから保安官とストレンジャーは同一人物、で最初は、素直に「死んだはずの保安官が一命 をとり止め復讐にきた」と思っていたんですが、夢の中の保安官はどうもイーストウッドじゃない し、第一、町民が誰一人気付かないんですヨ。ボンヤリして重要なシーンを見逃したのかも…と早送 りで全部見直しましたがそれらしい説明は一切なし。で、3回目にようやく「そうか!ゴーストなん だ」となったわけです。(ニブイですか) 「44−40」さんがおっしゃる「返歌」ってこう云う意味でしたか。なかなか気付くの難しいですよ ね。イーストウッドのいでたちがまず「ペイルライダー」と酷似(逆か)、ウェストを絞ったちょっ と特徴あるコート姿(カラーコーディネイトは違いますが)で乗ってる馬も同じ葦毛。「ビギナー」 さんが「何で同じような映画を?」と思われたのも頷けます。現に、こちらの出来栄えが意に染まな かったので「ペイルライダー」として作り直したと云う評もあったようです。そうではなくて、この 2作はシリーズ物と呼んでもいいんですよね。ゴーストである同じ主人公が「真昼の決闘」と「シェ ーン」への「返歌」のために現れたんですよ。「ペイルライダー」とは理解しがたいタイトルでした が、この映画を先に見てれば悩むことなかったんですよね。 いやー勉強になりました。もっと作って欲しかったです。彼も観客の1人として「真昼の決闘」の町 民には我々と同じように腹を立ててたんだなと思うと、イーストウッドが益々好きになりました。 ところで「44−40」さん、「返歌」と、この2本についての理解はこれでいいんでしょうか。 い。[2006年8月26日 9時17分33秒]