レンタルショップでDVDのジャケットにテンガロンハットを見つけると必ずチェックしています
が、以前批判覚悟でご紹介したT・L・ジョーンズの「メルキアデス…」と違ってこれはどこから見
ても西部劇、2006年の新作です。但し主演は女性、と云えばS・ストーンの「クイック・アンド・デ
ッド」を思い出しますが、どうしてどうして、あんなキワモノ(ファンの方、失礼)とは大違い、娯
楽映画の巨匠リュック・ベッソンがかなり真面目に取り組んだウエスタンコメディで、製作・脚本を
担当しています。オーソドックスな画面や音楽は往年のマカロニウエスタンを彷彿とさせるほどで、
全体の雰囲気にもどこか懐かしい感じが漂います。お話し自体も極めて古典的、お互いに父親を殺さ
れ土地と銀行を乗っ取られた2人の娘が一致協力、見事復讐を成し遂げると云う、云わば女性版ジェ
シー・ジェームズ物語です。
貧しい農民相手に地道な商売をしているメキシコの地方銀行に突然ニューヨークの大銀行が出資を申
し出ます。頭取の令嬢サラ(サルマ・ハエック)は「こんな田舎銀行に何故?」といぶかしみます
が、資金繰りに困っていた父親は渡りに船と話に乗っかってしまいます。不幸にも娘の勘は的中し、
先方の目的が鉄道敷設用地として農民から借金のかたに土地を取り上げることであることに気付いた
時には、父親は差し向けられた取立屋兼殺し屋に毒殺され銀行は乗っ取られることに…。サラは、借
金のかたに土地を奪われ同じく父親を殺された貧しい農民の娘マリア(ペネロペ・クルス)と組んで
復讐に立ち上がると云うわけなんですが、この復讐がなかなか揮ってまして、昨日まで父親のものだ
った銀行を襲おうと云うもの。で、まずは一人前の銀行強盗になるための修行からと云うわけで、既
に引退した伝説の銀行強盗(これが何とサム・シェパード)にガン捌きから「銀行強盗は人を殺して
はいけない」と云った心得までを伝授されます。免許皆伝となった彼女達は早速仕事を始めますが、
入られた方にとってはついこの間まで頭取のお嬢さんだったわけで実に協力的、成り行き上途中から
味方になった乗っ取り側の測量技師を挟んだ恋の鞘当てを楽しみながらの順風満帆この上ない強盗行
脚が続きます。この辺りちょっと悪乗りが過ぎると、鼻につくむきもあろうかと思いますが、実は私
年甲斐もなくペネロペ・クルスのファンなんですよ。セクシー美女でありながらどこか土の匂いのす
るラテン系独特の泥臭さが魅力で、往年のソフィア・ローレンや私が青春を捧げたC・Cことクラウ
ディア・カルディナーレを思い出します。と云うわけでその辺の問題は自分勝手にクリア、勿論ハッ
ピーエンドでこれまた私の好みです。ただベッソン作品としては全体にノンビリしており、一級品と
云うわけには行かないんでしょうが、最近のノンストップアクションに辟易している眼にはそれも西
部劇らしくて却って好ましく思えました。
ところで乗っ取り側の殺し屋を演っているドワイト・ヨーカムと云う俳優(本業はグラミー賞常連の
スゴイ歌手のようですネ)は、やはり最近DVDが出た「ワイルド・ガン」の監督・主演・音楽を1
人でやってる人ですよね。ジャケットにテンガロンハットのビリー・B・ソーントンを見つけて手に
とって見ると、何とピーター、ブリジットのフォンダ親子まで出ていると云うのでこちらも借りたん
ですが、眼を凝らして見なければならないほどの暗い画面に、お話しもダラダラと締まりがなく、途
中で睡魔に襲われてあえなくダウン。1週間後にもう1度借りてとにかく最後まで見ましたが、とても
皆さんにご紹介する気力が湧きませんでした。ただヨーカムと云う人は西部劇が好きなんだなと云う
ことは分かりましたので、なるべく近い将来まともなものを作ってくれることを期待したいと思いま
す。
[2009年1月3日 23時17分44秒]