作品名: ドク・ホリデイ -


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お名前: ウエイン命   
まったく意外でした。この映画は昔劇場で予告編を観たっきり、持ってるビデオもずっと観てなかっ
たんです。と云うのは、監督F・ペリーで主演がS・キーチとF・ダナウェイでしょ。ペリーは前
作、ランカスター主演の「泳ぐ人」と云うわけの分からない映画を観ていたので、「このメンバーで
はとてもまともな西部劇にならないだろう」と決め込んでいましたし、アープが悪人扱いされている
と云う「新解釈」も気に入らなかったからです。

それから何十年経ったか分かりませんが、兎に角先日観たんですよ。意外と云うのは分かりやすいフ
ツーの映画だったからなんです。ただ、「荒野の決闘」から「トゥーム・ストーン」迄これまで観た
どのOK牧場モノとも違ってました。その辺は流石に(?)捻ってあります。まず、ホリデイが一言
で云って「イイ人」なんですよ。誠実で人殺しの嫌いなネ。おまけに彼を含めアープ、クラントン一
家など周りの関係が従来と全然違うんです。

冒頭、トゥーム・ストーンのアープに呼ばれたホリデイ(キーチ)が途中立ち寄った酒場でアイク・
クラントンからポーカーで女ケイト(ダナウェイ)を奪い恨みを買います。町へ着いてみるとアープ
は次期保安官の選挙準備で大わらわ、当選後はホリデイと組んで大儲けするんだと息巻きますが、ホ
リデイは内心ウンザリするんですね。「今でも連邦保安官じゃないか」と云うホリデイに、アープは
「連邦保安官は名誉職で権力も実入りもない」と云うんですよ。クラントン派として悪役扱いの保安
官はここでは正直が取柄の普通の人になっています。その上、アープとクラントンの間にこの時点で
トラブルらしきものはなさそうなんです。

人格者(?)のホリデイはクラントンの末っ子でガンマン志望の若者キッドの憧れるところとなり、
ホリデイも拳銃の手ほどきをするなど面倒をみます。「誇り高き男」を彷彿とさせるシーンも登場す
るんですよ。ホリデイが逆手抜きと云うのもこの映画だけですが模範演技が結構早いのでビックリし
てよく確認したところ、ホルスターを太ももの裏側に来るように着け、標的に体の右側面を向けて構
えてました。こうすると殆ど手首を返す必要がなく、抜いてそのまま撃てばいいと云う、実にシンプ
ルでよく考えられたスタイルに「逆手抜きで決闘するときはこれだな」と感心しました。話が変な方
へ行っちゃいましたが、ガンマニアなのでつい…。

さて、トラブルはそのキッドが諍いで人を殺したことから始ります。相手が先に抜いたと云うキッド
の言い分に耳を貸さず強引に逮捕しようとするアープに思わず銃を抜いてしまうホリデイ、二人の間
は急速に冷めて行きます。姑息なアープはこれを選挙戦に利用しようと企らんじゃうんですよ。クラ
ントンの元にお尋ね者J・リンゴーが草鞋を脱いでいることは全町民周知の事実、アープは、キッド
とリンゴーを交換し更にリンゴーに懸かっている賞金2万ドルも付けようとクラントンに取引を持ち
かけます。選挙の直前にリンゴー逮捕となれば当選確実と云うわけですよ。クラントンも取引に乗り
ます。ところが、キッド可愛いやのホリデイが千ドルもの保釈金を払って彼を釈放してしまったから
さあ大変、手駒を失ったアープは、卑劣にもアイクとキッドを駅馬車強盗と云う根も葉もない罪で告
発してクラントンを怒らせ、リンゴー諸共皆殺しにしようと図るんですよ。まんまと挑発に乗ったク
ラントンはアープを殺すと宣言してトゥーム・ストーンへ。

かくして有名なOK牧場の決闘と相成るわけですが、これ確か予告編で「史実に忠実…」と云ってた
と思うんですけどネ…。まあ新解釈と云うか作り話にしても結構面白いじゃないですか。一旦気まず
くなったホリデイがなぜ決闘に参加する気になったのかイマイチはっきりしませんが、アープ兄弟に
ホリデイを加えた4人全員がショット・ガンで武装しているのも従来と違ってます。ちなみに私、過
去のOK牧場モノをちょっとチェックしてみました。ショット・ガンはいつもホリデイだけが持って
るような印象でしたが全部マチマチですね。「だから?」と云われると困るんですけど…。

またまた話がそれちゃいましたが、決闘が終わると町民がゾロゾロ不安そうに集まって来るんです
が、「保安官になった暁には町の平和のために粉骨砕身…」と云ってきた手前、目の前で起きた事件
はアープにとって余りにもマズイわけですよ。彼はその場で演説を始めます。「…ですから当選の暁
にはこれを貴重な経験として二度とこう云うことを起こさないように…以上」とね。町民の間からは
拍手が沸き起こり、アープは胸を撫で下ろします。ホリデイは選挙の結果を確かめる気にもなれず町
を去ります。

ここではアープを悪人と云うより徹底的な愚物俗物として描いています。「墓石と決闘」のようにア
ープの行動に疑問を投げかけた映画はありますが、こう云うのは初めてでしょう。逆にホリデイは、
娼婦から足を洗うようケイトに説教したり、ドレスをプレゼントしたり、挙句の果てには「俺は残り
の人生を生きて確かなものを残したい」などと観ているこちらが腰を抜かさんばかりの台詞を口走っ
たりと期待ハズレ(?)の善人振り、ここまで来ると珍品の域ですかね。ダナウェイは特に彼女でな
ければならないような見せ場もなく、逆説的な云い方ですが、お話はともかく「泳ぐ人」のF・ペリ
ーの作品と云うことで期待して観ると肩透かしを喰わされるんじゃないでしょうか。

長くなりついでにもう1つ、この映画のアープは何とバントライン・スペシャルを使ってました。
「何と」と云うのもおかしいですが、実際、フォンダ、ランカスター、ガーナー、コスナーとなかな
か使ってくれず、我等ガンマニアの願いはなかなか叶えられませんでした。ランカスターは抽斗の中
に持っているのが分かっただけ、後ろ二人は銃身の長いキャバリーモデルでお茶を濁してましたね、
不満でした。実際に使ったのはH・オブライエンが初めてだと思いますが残念ながらブラウン管、ス
クリーンではK・ラッセルが最初の「その人」になったと思っていたんですけど、これがあったんで
すヨ。ハリス・ユーリンと云う俳優です。
[2006年11月3日 22時57分30秒]

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