作品名: 轟く天地 -


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お名前: ポルカドット   
 ランドルフ・スコットのゼーン・グレイ・シリーズについては、クインキャノンさんに「Gunfighters」
の書き込みで幕引きされてしまいましたが、私はもう少しの間、古いもののことを書きます。「轟く天
地(Thundering Herd, aka. Buffalo Stampede )」はヘンリー・ハサウエイ監督の1933年作品で、
戦後間もない頃、近所の映画館に掛かっていた覚えがありますが、いかにも古そうだったので、その時
は敬遠して見ませんでした。どうも私の記憶する限り、'30年代のスコット作品で戦後も上映されたの
はこれだけだったんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。

 スコット(トム・ドーン役)はこの作品でも薄く口髭を生やしていて、バスター・クラブとともに、
ハリー・ケリーのもとで幌馬車を連ねて野牛の毛皮猟をしています。スコットは、駅馬車の御者席から
駅馬車を引いて走っている馬の背に飛び移って馬具の不具合を直し、また御者席に戻るスタントや、馬
で走りながら木の枝を掴み、馬だけ行かせて自分は地面に立つスタントを見せます。

 彼らは真っ当な猟師ですが、他方にランドール・ジェット(ノア・ビアリー)の率いる悪猟師グルー
プがあり、こちらはインディアンを装って、他の猟師が毛皮を運ぶ馬車を襲い、獲物を横取りして手っ
取り早く稼いでいます。ジェットはヒロインのミリー(ジュディス・アレン)の継父ですが、トムとミ
リーは恋仲で、しかも、もちろんジェットがミリーに邪心を抱いているから事が面倒になり、これが原
因でジェットは妻(ブランシュ・フレデリッチ)と争って彼女を刺した挙げ句、瀕死の妻に撃たれて死
に、夫婦共倒れです。

 白人による野牛の乱獲で存亡の危機に瀕したインディアンの各部族が連合して、ハリー・ケリーの幌
馬車隊を襲うのがクライマックスで、ケリーの猟師仲間のモンテ・ブルーが率いる別の幌馬車隊に、
トムが急を告げ、彼らが救援に駆けつけます。

 ノア・ビアリーはこの時期の一連の作品で悪いことばかりしており、サイレント版の「ボー・ジェス
ト」でも、後のゲーリー・クーパー版でブライアン・ドンレヴィが演じた悪軍曹役でしたから、根っか
らの悪人なんですね。後年、彼の子息のノア・ビアリー・Jrをいろいろな西部劇で見かけましたし、
ジュニアも父子二代で、スコットと何本か共演していますが、父親のような悪党ではなかったですね。
もっともビアリー・シニアはこの作品では妻に撃ち殺され、「森の男」では家政婦に撃ち殺されました
から、見かけによらず脆いところがあります。「妻」と「家政婦」は同じ女優さんでしたから、ビアリー
にとって彼女は鬼門ですね。彼女はこの映画で、夫のほかにも毛皮を持ち逃げしようとした仲間を二人
ほど殺していますから、この物語一番の人殺しは彼女です。

 前に書き込みした「最後の一人まで」や本作品は、1920年代半ばのサイレント時代にジャック・
ホルト主演で映画化されており、ハサウエイ−スコット版では、地滑り、野牛の群、野牛の暴走といっ
たスペクタクル・シーンに、前作のストック場面が使われているようです。そういう場面は新規に撮っ
たものとちょっと階調が異なり、私のような素人にも見分けがつきますね。しかし、全体の流れとして
は、自然に、違和感なく編集された出来栄えです。
[2007年10月11日 13時56分7秒]

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