ランドルフ・スコットが主人公、スキップ・ホメイヤがその甥っ子で思慮の浅い若者です(Ten
Wanted Men, 1955)。筋は忘れましたが、そつなく作られた面白い作品だったと思います。
次の場面が気に入って記憶に残っています。終盤で、善玉グループが何かの建物に立て籠もり、一方、悪玉リチャード・ブーンと、彼が雇った殺し屋のレオ・ゴードンを含む「十人のならず者」が
屋外に陣取って撃ち合っている。それをまた、住人たちが集まって見ており、住人たちの中の若い
女性(屋内の善玉の誰かの妻)が、たまりかねて家に弾を撃ち込んでいる悪玉たちのところまで駆
け寄り、家の中の夫に向かって「あなた、降参して出てきて! 殺されるわ!」と呼びかける。す
ると、すかさず女主人公が若妻に近づいて、「そんなこといわないで! この人たちを見なさい!
人殺しよ!」という。若妻はブーンとゴードンを見て、すぐ夢から覚めたようになり、建物に向かっ
て「あなた、私が間違っていたわ! 出てこないで!」と叫び、腹を立てた悪玉二人が女性二人を
住人の輪の方へ押し戻す。
面白かったのは、ヒロインが「この人たちを見て! 人殺しよ!」といった時、当のブーンとゴー
ドンもつられて顔を見合わせ、互いの悪人相にそれぞれショックを受け、一瞬、げんなりしたシー
ンです。ここは笑えました。細かい心配りの効いた描写だと思います。
レオ・ゴードンという人は、俳優になる前に実際に強盗をやって、サン・クエンティン刑務所で服
役したそうだから半端でなく、ドン・シーゲル監督が「会った人間の中で、レオ・ゴードンが一番
怖い」といったというほどの筋金入りです。そういう先入観のせいか、もちろんリチャード・ブー
ンはいい役者だろうけれど、悪人面という点ではレオ・ゴードンの方が堂に入っていたと見受けま
した。
[2005年8月25日 22時47分19秒]