作品名: Buchanan Rides Alone -


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お名前: クインキャノン   
 出演俳優のクレイグ・スティーブンスについて、思い出したことを書くって約束を果たすことにする
ぜ。西部劇にゃ関係ねえけど。

 あっしゃ、この俳優は知らなくて、見たのは多分この写真が始めてだって思うよ。結構重要な役だし、
どんな経歴なんだろうってIMDbで見たら、映画出演もあるけど、大体がテレビ畑の人なんだね。
ところが1947年と1948年に1本ずつ出た映画の記録が目に入って、あっしゃ、「あっ、これは
見たぞ」って思ったのさ。

 その2本は「おお、スザンナ」や「オールド・ブラック・ジョー」を作ったアメリカの作曲家のスティ
ーブン・フォスターの伝記風で、C・スティーブンスがフォスターを演ってんだよ。もっともこの写真、
ワーナー作品らしいけど両方とも10分前後の短編で、伝記映画なんてものじゃなく、男声トリオがフォ
スター名曲をいくつか歌って聞かせ、合間に彼の生涯を断片的に紹介するってものだったね。

 あっしはこれを、戦後間もない頃、ユネスコ後援の巡回映画で見たのさ。会場は小学校の講堂や公民
館で、「ナトコ映画」って呼ばれてたよ。「ナトコ」ってのは上映に使われたアメリカの16mmトー
キー映写機の製造会社名だそうだね。メインの呼び物は当時の日本の劇映画だったって思うけど、その
前にこういうアメリカの文化映画を見せて、戦後の日本人に欧米の事情や、民主主義を理解させようっ
て趣旨だったんだね。

 アメリカにフォスターって作曲家がいて、「スワニー河」や「草競馬」や「夢見る佳人」を作ったっ
てことをあっしが覚えたのは、これを見てなんだよ。西部劇の舞台は大体南北戦争以後だろうけれど、
フォスターは戦争中の64年に亡くなってるから、ジェシー・ジェイムズやワイヤット・アープの時代
よりは早かったわけだね。といっても享年37の若さだったそうだけど。ま、彼の歌はあんまり西部劇
の伴奏にゃならなさそうで、綿花と奴隷制度の南部文化の産物って感じだね。だから彼が歌った世界も、
そして彼自身も、南北戦争って風と一緒に去っちまったってとこじゃないかね。

 好きなR・スコットの昔の西部劇を見て、記憶の底に埋もれてた50年以上前の巡回映画の思い出が
蘇るなんざ、感動ものだよ。それがどうしたっていわれりゃ、どうもしやしねえんだけど、ま、長生き
はするもんだね。
[2006年9月17日 21時33分11秒]

お名前: クインキャノン   
 ランドルフ・スコットとバッド・ベティカー監督の第四作。題名だけ聞くと孤高の騎手のイメージだ
けど、全然そうじゃなくてコメディだね。クレジットはないけど、脚本にバート・ケネディの息がかかっ
てるらしく、「夕陽に立つ保安官」なんかの先駆けだよ。スコットは、最初の登場シーンで仰々しく弾
薬ベルトを両肩から十文字にかけてる上、いつもより帽子の鍔が狭いもんだから似合わなくて、それも
監督の狙いなんだろうね。

 テキサス男のブキャナンが、カリフォルニアの国境の町アグリー・タウンにメキシコから入る。この
町じゃ何でも10ドルだよ。町と同名の強欲なアグリー兄弟のサイモンとリューとエイモスが、判事と
保安官とホテルの主人さ。町に入って早々、メキシコの良家の若者のホアンが馬で駆けつけて、酒場で
判事のろくでなし息子のロイに、妹を弄んだってんで決闘を挑んで撃ち殺しちまう。ホアンは保安官た
ちに叩きのめされ、助けようとしたブキャナンも捕まって、二人ともリンチで縛り首にされそうになる。

 裁判で、ブキャナンは無罪だけど、胴巻きに入れてた二千ドルを悪保安官に巻き上げられ、もちろん
ブキャナンは金を取り戻しにかかるよ。一方、判事はホアンの身内と、縛り首を宣告されたホアンを、
身代金五万ドルで自由にするって取り引きしてる。エイモスがそれを立ち聞きして保安官に話すんで、
保安官は横取りを図ってホアンを留置場から隠れ家に移そうとし、それからは金に目のくらんだ兄弟の
裏切り合いさ。道の真ん中に落ちてる5万ドル入りの鞍袋を挟んで、善玉と悪玉の銃撃戦の挙げ句、兄
弟二人が撃ち合って両方とも死んじまう。彼らほど悪辣じゃないエイモスは生き残るね。主人公は、金
は取り戻すけど物語を方向付けすることはなくて、強欲兄弟の争いに振り回されっぱなしだよ。

 判事の子分のカーボってのを演るのがクレイグ・スティーブンス。白シャツのほかは黒づくめの拳銃
使い風だけど、登場人物の中で一番悪くない部類で、悪党兄弟が死に絶えた後は彼が町のボスだよ。た
だ、この人、馬には乗らず終いだね。乗馬は苦手なのかな。主人公は去り、死体がごろごろしてる前で、
カーボがエイモスに「シャベルを用意した方がいいぞ」っていう素っ気ない台詞が幕切れさ。こりゃ、
毒のあるコメディだよ。

 この主演者−監督コンビの作品群はだんだん暗くなるんで、どうなるかと思ってたら、その手があっ
たかって感じだねえ。ジェームズ・ガーナーもどきの役は、「ウエイン命」さんがいわれる「修身の先
生」みてえなスコットにゃ合わねえようだけど、考えてみりゃスコットは、戦後は油田投資で大金持ち
になって働く必要がねえから、好きな西部劇にだけ出演したんだそうで、戦前はフレッド・アステアや
シャーリー・テンプルなんかと、ミュージカルやコメディみたいなのをやってたんだから、監督はそこ
も見込んだんだろうよ。

 クレイグ・スティーブンスって俳優はこれまで知らなかったけど、実はこの写真を見て思い出したこ
とがあるんだよ。でも長くなるから、それについては後日また書くよ。
[2006年7月16日 19時8分31秒]

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