昔、劇場公開を見落としたけれど最近見ました。レイ・エンライト監督の1947年作品。カンザス
州のリベラルという町が舞台で、土地を耕作している農民と、農地を気ままに通って牛追いをしたいカ
ウボーイが揉めています。原題の「Trail Street」というのは、リベラルの町の大通りの名前だそうです
ね。不動産業者だかのアレン(ロバート・ライアン)が善玉で、町に法と秩序を打ち立てようと、友人
のビリー(ギャビー・ヘイズ)に頼んでビリーの旧知のバット・マスターソン(ランドルフ・スコット)
を呼び、町長にバットを保安官に任命して貰います。
悪役は紳士面の牧畜業者のモーリーや酒場の経営者のカーモディで、女性陣はアレンの婚約者のスー
ザンに、酒場の歌手でモーリーの愛人のルビー(アン・ジェフリーズ)といった、いわばお定まりの構
図です。ジェフリーズはオペラ歌手だったそうで、さすがに上手な歌を聴かせます。
ロバート・ライアンという人はいかにも真面目そうだし、実際真面目でリベラルな正義漢だったそう
だから、血液型は間違いなくA型でしょうね。そのためか、年を加えてからの「プロフェッショナル」
や「墓石と決闘」などではいかにも渋く、面白味が乏しかった気がするのですが、そんな彼でもこの作
品などでは、若さの華やぎといったものを感じます。
やがてルビーはモーリーのあくどさに嫌気がさし、モーリーが農民を迫害して手に入れた土地証書の
束を、大詰めの銃撃戦の最中に焼き捨て、逆上したモーリーが去って行くルビーを背中から撃ちます。
しかし、これにモーリーの子分たちが「女殺し!」といって反撥し、彼に銃を向けて取り囲み、そこへ
憤激したバットが近づいて両者は発砲しますが、モーリーが倒れます。
アレンとスーザンは結ばれ、バットはジャーナリストを志して東部へ去り、ビリーが後任の保安官に
なって幕が下ります。
農民とカウボーイの抗争が背景の西部劇は数え切れませんね。前年のこれもR・スコット作品の「静
かなる対決」(エドウイン・L・マリン監督)もそうだったし、製作年殿の近いこともあってこの二つ
は雰囲気が似ています。ここではさらに、日照りのカンザスでも豊かに育って実を結ぶ新種の小麦の導
入に、アレンが一役買うという挿話もあります。
[2008年4月19日 11時55分26秒]