ランドルフ・スコット主演、ゴードン・ダグラス監督の1950年シネカラー作品。タイトルバックで、
フォレスト・タッカーの無法者が、どこか西部の町の銀行の金庫を爆破して、金塊の袋をいくつも盗み出し
てるんだよ。本編が始まって、タッカーは荷馬車の荷台で寝てるとこを保安官たちに捕まるんだけど、荷馬
車は空っぽだね。
金が見つからないまま、駅馬車で刑務所に護送されるタッカーが、途中の町で見張りを殴り倒し、馬を盗
んで逃げ出す。ところが野原を行くタッカーに、一人の男がやはり馬で、つかず離れずついて来るんだね。
これがスコットで、題名の「ネヴァダから来た男」なんだろうね。きちんとしたスーツ姿で西部男らしくな
く、粋な(珍妙な?)帽子の洒落者だよ。待ち構えているタッカーと顔を合わせると、道に迷ったんでつい
て来た、っていうのさ。タッカーはスコットに銃を向けて服を取り替えさせるんだけれど、タッカーがスー
ツを着てもあんまり紳士に見えないのがおかしいね。
実はスコットは私服連邦保安官で、タッカーに脱走の機会を与えて金の行方を捜査しよう、ってんだね。
だけど本当の悪党は、金を横取りしようって企むツイン・フォークスの町の顔役(ジョージ・マクレディ)
だよ。マクレディって俳優はどうも策士とか知能犯とかの感じだから、西部劇のボスって柄じゃないと思う
んだけど、一方にタッカーみてえなのがいるから、もう一方には対照的なのを配役したのかねえ。悪党の手
下は三人で、フランク・フェイレンとジェフ・コーリーが兄弟、それにジョック・マホニー。マホニーはこ
こではオマホニーで、台詞もあるよ。
この写真、途中まではあまりアクション場面を設けず、スコットとタッカーの珍道中や、ボスの娘のドロ
シー・マローンとスコットの関わりや、兄弟悪党たちや、歯のない町民に木彫りの総入れ歯を作るのが趣味
の保安官(チャールズ・ケンパー)の人間味ってものを見せてる感じだね。もちろん大詰めには、タッカー
が金を隠した廃坑近辺での撃ち合いがあって、悪党は全滅する。続いて崩れかかって砂煙の立つ廃坑の中で
スコットとタッカーが殴り合い、スコットがタッカーを殴り倒して、辛くもタッカーを引きずり出した直後
に、廃坑が崩れて埋まるあたりは迫力があるね。ラストシーンはスコットがタッカーの護送役で、二人でま
た駅馬車に乗って出発し、見送るマローンが隣の保安官に、「私は彼(スコット)が帰って来るって知って
るわ。だって私の牧場に馬を置いて行ったんだもの」っていうのさ。
悪党兄弟の弟のジェフ・コーリーって人は、あっしはあまり知らねえし、ここでは切れ者でもない子分役
だけど、実はリー・ストラスバーグやステラ・アドラーなんて人たちと並ぶ屈指の演劇指導者なんだってね。
もっとも、それはこの映画より後の話で、50年代に例のマッカーシズムの赤狩りのブラックリストに乗っ
て、映画に出られなくなってかららしいけど。
アメリカのashew さんて方が去年の1月に、この写真のことをIMDbの感想欄に書いてるのが面白いね。
「スコットとマローンの場面は素晴らしい。本当にいい雰囲気だ。マローン嬢がこんなにいい女優だから、
スコットの演技も引き立ったのだと思う。問題は二人が抱き合いもせず、キスもせず、本気の恋にも落ちず、
ずっと距離を置いてることだ。いい雰囲気が無駄になってる。映画の終わりで彼は彼女にさよならさえいわ
ず、彼女はつまらない台詞で、彼が戻って来るだろうってことを観客に知らせる!全くガッカリだ」
歯がゆくて歯ぎしりしてる感じだね。あっしもまあ同感だけど、なにしろ修身の先生みてえなスコットだ
し、この頃もう五十に手が届いてたんだから、熱烈な色恋沙汰を期待するのはashew さんのないものねだ
りだって思うよ。
[2007年11月8日 0時8分4秒]