昔から、ガンマンは颯爽としてない方が、抜射ちは遅い方が、弾は当たらない方がリアルだと云う意
見が結構多いんですが、私はそんなことはない(に違いない)と思っています。だって命が懸かって
るんですよ。相手より遅ければ撮り直しじゃなくて死んじゃうんですから。少なくともガンマンは必
死で練習したはずですヨ。マクィーンやコスナーを見て「あんなに早く抜いて当たるわけないよ」と
思われる方は多いかも知れません。実際、マクィーンは地面を射っちゃってますからネ。西部劇通で
通っていた評論家の深沢哲也さんなど「墓石と決闘」でガーナーが腕を伸ばし目の高さで発砲するの
を見てリアルだと狂喜し、従来の腰射ちを否定されたほどです。
実は私もある時まではそう思っていました。そう、国本圭一さんを知るまでは。ご存知でしょうか。
田宮二郎の「野良犬シリーズ」で彼にガン捌きのイロハからトリックプレイまでを指導した日本で最
初で最後の「拳銃殺陣師」と呼ばれた人です。黒尽くめの二挺拳銃スタイルで私の憧れでしたが、当
時衰退の一途を辿っていた日本映画界に見切りをつけ、活躍の場を求めてハリウッドに渡ってしまい
ました。その後暫く消息が分かりませんでしたが、何年かして雑誌「GUN」に、何とUSアーミーの
招聘により兵士の前で早射ちのの模範演技を披露している記事が写真入りで紹介されビックリしまし
た。西部劇そのまま、撃鉄を起こしながらの抜き射ちで25フィート離れた人影の的に全弾命中、しか
も驚くなかれ0.2秒の早射ちですヨ。勿論腰射ちです。ちなみに発砲するたびに銃身が45度跳ね上が
ったそうです。この時から私は「遅い」「当たらない」が決してリアルなのではないと確信するよう
になりました。西部にこう云う人が1人でもいたら、それよりもっと早い人が出てくるはずですから
ね。残念ながらその後彼がどうなったのかはまったく分かりません。ご存知の方がいらっしゃったら
是非教えてください。
[2007年4月1日 10時57分15秒]