ランドルフ・スコットとバッド・ベティカー監督が組んだ第1回作。半世紀近く経って見直すと、やっ
ぱし、いい西部劇だね。今じゃ、ほとんどカルト・ムービーの域らしいし。
妻の仇討ちをしようってんで七人の無頼漢を追う主人公は元保安官だけど、政治下手なんで選挙で再
選されず、誇りが高いから保安官補にもならねえんで、代わりに妻がウエルズ・ファーゴの事務所に働
きに出て、七人組強盗に殺されたってんだから、決して英雄的じゃないね。
主人公はおんぼろ幌馬車の若夫婦のジョンとアニーと道連れになって、強盗団の逃走先のフロラ・ビ
スタの町に向けて砂漠を行くよ。途中、スチュアート・ホイットマン中尉の率いる騎兵小隊や、金鉱掘
りの飲んべえじいさんに行き会ったりするうちに、盗まれた金のおこぼれを狙う二人組の無法者(若い
リー・マービンと相棒)も加わるね。真面目で禁欲的な主人公と、以前に主人公に捕まったこともある
太々しい悪党のマービンは、二人とも人妻の明眸ゲイル・ラッセルに惹かれて、次第にサスペンスが盛
り上がる。80分足らずの写真なのに、せかせかした感じのないのがいいね。
夫のジョンはあまり頼りにならなさそうで、悪党のマービンは「半人前の男だ」なんて陰口きくけど、
彼はフロラ・ビスタに着いた時に骨のある態度を示し、そのため強盗の頭目に撃たれて命を落とすよ。
マービンはそれを見て、「彼は半人前じゃなかった」っていうけど、半分は本音、半分は皮肉なんだろ
うね。
マービンはビル・エリオットか、「平原児」のクーパーみてえに銃把を前に向けた二挺拳銃で、酒場
で手首返し二挺同時抜きの練習してる時はクーパー並に鮮やかだったけど、大詰めの勝負で、「さあ、
いつでも抜け!」なんて余裕を見せてた割りにゃああっさり撃たれて、あっけにとられた顔で死んじまっ
た。
この写真、改めて見ると、ごく緩やかに「ヴェラ・クルス」の物語と重なるように思うよ。金を運ぶ
馬車、コインの裏表みてえな善玉と悪玉、終わり近くで、お宝を独り占めしようって悪党が仲間まで非
情に撃ち殺しちまうとこ、そして避けられねえ善悪の対決。もちろん脚本のバート・ケネディには、前
にあった話をなぞろうなんて魂胆はこれっぽっちもなかったろうけど。
幕切れで、駅馬車に乗ろうとする喪服のラッセルに、主人公が別れを告げながら、保安官補を引き受
けるつもりだっていって去って行く。すぐにラッセルは、御者に「荷物を降ろして!」っていって、主
人公を追う決心をする。観客のあっしはそれを見て嬉しくなるのさ。
昔、吉祥寺の映画館へ行った時は、好きなスコットももうお年だから、見られるうちに見ておこうっ
て気持ちだったけど、スコットとベティカーのコンビは、これを皮切りに出来のよい作品を七本送り出
すね。してみると、この写真の原題はなにやら暗示的だよ。
[2006年6月18日 22時18分54秒]