ラオール・ウォルシュは疾走してゆく。映画全体が何かに駆り立てられるように
止まらない。そもそも何から始まって、最後はどう終わるのか、どうしてそう
終わるのか、そんなことはどこかに置き忘れられて、常に全体が運ばれてゆく。
すべてが途中のよう。相当多作なのに、印象に残るショットというものがない。
記憶に残るのはシーンであり、それらは常に動きを伴っている。
ロック・ハドソンの乗る駅馬車が、南軍崩れの強盗団に襲われて彼の婚約者
ドナ・リードがさらわれる。首領と仲間割れした強盗団の一人と、途中で加わった
インディアン(彼の妹かかつてこの強盗団に殺されたという因縁を持つ)とともに、
ハドソンは婚約者を奪還すべく強盗団を追跡する。これだけ。80分あまり。
そもそも駅馬車が襲われたときハドソンは撃たれて馬車から落ち、全員が死んだ
と思うがなぜか生きていて、元気いっぱいで追跡する。どうして死ななかったのか
最後まで説明されない。いや、されたのかもしれないが忘れた。どうでもいいのだ。
結局は、仲間割れした一味と婚約者との交換ということになり、婚約者は手元に
帰るのに、仲間割れした一味が見せしめに射殺されたことに腹を立てたハドソンは、
婚約者そっちのけで強盗団を追う。「何でそんなことをするの、あたしは助かった
のよ」というリードの言葉に、ハドソンはただ「許せないから」と言うだけで、気が
ついたらもう馬に乗っている… 「限りなき追跡」とは名訳だと思う(原題はGun Fury)。
最後はインディアン(確かネビル・ブラントだったような)に助けられながら一味を
やっつけ、ドナ・リードと抱き合ってエンドマーク。ようやく映画は終わる、いや止まる。
ほかに強盗団の首領でフィル・ケアリー、一味の一人にリー・マーヴィンなどが
出ていた'53年ごろの作品。ラオール・ウォルシュ作品としては忘れられているが、
彼らしさは十分出ていると思う。
[2005年8月25日 16時26分32秒]