作品名: 追跡者 -


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お名前: J.W.   
ウェイン命さんの強力な推薦で、久しぶりにDVDで見直しましたが、良い意味で
いかにも70年代西部劇らしい西部劇でした。
法を守るためには、殺人も辞さないことは善といえるのかというテーマもそうですが、
役者が豪華ですね。しかも彼らを、今、現在の視点で見直すとより興味が増しますね。
例えば、ランカスターはO.K.牧場の決闘での、ライアンは誇り高き男での保安官が
年老いて再び相見えるような不思議な感覚です。両者とも若い頃よりは味が出てすばら
しいのですが、私は過去の栄光を捨て去り、腰抜けと罵られ、町のボスの支配に操られ
ているようでいて、実は自己の美学は守るというR・ライアン保安官の姿の方に痺れま
したねー。
ところで「裁判になったら、町ぐるみ買収したら云々」はライアン保安官の台詞ではない
かと思います。いずれにしろ、うらびれたロバート・ライアンに魅力を感じるのは自分も
年老いたせいでしょうか。
一方、L.J.コッブときたら、最近の姿を見慣れているせいか、逆にこの映画では若々しい
感じが何だか可笑しい。しかし。単純なる悪役ではない、西部を開拓したのは俺だという
自信にあふれたボス振り。
ウェイン命さんの述べられたとおり、一見以上の価値ありの作品です。
[2007年4月1日 19時21分49秒]

お名前: ウエイン命   
俊英マイケル・ウィナーの強烈な1作。

B・ランカスター、R・ライアン、L・J・コッブ、J・ワイズマン、R・デュバル、A・サルミ、
R・ジョーダン、紅一点S・ノースと云う豪華な顔ぶれ。各人適材適所でそれぞれが好演、特にラン
カスターは非情なまでに法を貫こうとする保安官を冷徹に演じて圧倒的な存在感でした。

お話は、コッブ率いるカウボーイの一団がキャトルドライブの帰途、とある町に立ち寄ったことから
始まります。彼等は辛い仕事を終えた開放感から飲んで次第に荒れ始め、暴走を心配したコッブは引
き上げを命じますが、後には流れ弾を頭に受けた老人の死体が…。

カットが変わって、仰角に捉えられたランカスターが太陽を遮るようにヌっと現れ「Lawman」のタイ
トルがかぶります。これから起こることを予感させるような見事なオープニング。彼は、既に射殺し
た犯人の1人の死体を乗せた馬を曳いて、留守中に自分の町で起きた事件の犯人逮捕に向かいます。
ところが、着いてみるとそこはコッブが拓き育てた町で、住民は皆コッブの恩恵をこうむって生計を
立てているばかりか、保安官(R・ライアン)までがコッブの子飼いと云う大変なところ。当然、ラ
ンカスターに協力する者は誰もいません。ただ1人売春宿の親父(J・ワイズマン)を除いて。2人
は「必要だが嫌われる」共通の宿命を持っているというわけです。「犯人は7人、明日の正午までに
逮捕連行する。1人は片付いた」と通告したランカスターは、孤立無援の中、静かに行動を開始する。

コッブの示談申し出をはねつけ、犯人の妻(実は彼の頑迷さに愛想を尽かし去ったかつての恋人)の
助命をも門前払い、自警団の脅しにも動ずることなく淡々と自分の仕事を進めて行きます。それは正
義感などと云うものではなく、ただただ保安官としての自分の職務を全うせんがための異常なまでの
執念、彼は「裁判になったらボスの財力で判事いや町ぐるみ買収すればいい」とまで言い放つので
す。かくして1人また1人と逮捕しあるいは射殺して行くことになるのですが、犯人の連行中、偶然
元恋人の家に立ち寄ったことから生き方を変える決心をし、なにもなかったことにして町を去ろうと
します。が、時既に遅く、身内に多くの犠牲者を出したコッブは遂に銃による決着をつけるべく、徒
党を組んで町へ。

「人は変われない。変わろうとすれば呼び戻される」ランカスターはそう呟きながら、それでも敢え
て彼等を無視し、町を去ろうとしますが、売名に走る住民の1人が後ろから発砲したことで全てはご
破算に。惨劇が始まります。鬼に戻った彼はコッブの哀訴にも耳を貸さず、挑まれるままに事件に無
関係のコッブの1人息子まで殺し(この時の「息子なんだ!頼む、マドックス」と云う1人の父親に
戻ったコッブの台詞が哀れ)、さらには、恐怖に慄いて逃げる犯人の最後の1人を背中から射殺して
しまいます。終わった、誰もがそう思った次の瞬間、息絶えた息子を愛撫していたコッブはやおら銃
を抜くと自らの喉元にあて発砲、血しぶきの中に絶命します。呆然とする住民を後に、仕事を終えた
ランカスターは平然と町を去って行きます。次の任務を遂行するために。

いやはや、何とも凄まじい一編でした。場内が明るくなっても観客が暫く口も利けなかったのは、こ
れと「俺達に明日はない」くらいでしょう。「法を守ることは果たして正義か」と云うところでしょ
うかね。保安官が、犯人とは云え背中から撃ったと云うのは後にも先にもお目にかかったことがな
く、ショッキングでしたね。銃撃シーンも多く迫力があります。決闘も、ランカスターは決して早く
はありませんが、すべてワンカットで抜いており、凄みを出しています。特に、遥か断崖の上を逃げ
る犯人(R・デュバル)の馬をライフルの1発で打ち倒すところなど凄い迫力でした。

ランカスターの沈着冷静な仕事人振りが素晴らしい。早うち自慢の若者(R・ジョーダン)に向かっ
て、「確かに君の方が早いだろう。だが、やれば必ず私が勝つ。なぜなら、君は牧童、私は保安官、
プロの殺し屋だからだ」と冷ややかに言い放つ場面などシビレルほどの凄い貫禄でした。一見の価値
ありと思います。
[2006年5月21日 22時24分15秒]

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