先月(2002年10月)の25日にリチャード・ハリスさんが亡くなりました。享年72歳。
リチャード・ハリスは意外と西部劇に出演していて、『馬と呼ばれた男』(1969年/監督:エリオット・
シルバースタイン)は名作でしたよ。
19世紀初頭のアメリカ新大陸へ狩猟にきた英国貴族(リチャード・ハリス)が、ふとしたことから
スー族に捕えられ、やがて彼らの仲間となり、インディアン戦士として活躍する……
公開当時、生活や儀式を通じて、それまでのどんな西部劇より、インディアン(スー族)の世界を
忠実に描いた作品として評判になりました。
だけど、インディアン研究の専門家によると、間違いも多いらしいですね。
リチャード・ハリスがスー族の仲間入りをし、酋長の妹と結婚するために、胸の肉を裂いて宙吊り
にされる“太陽への誓い”の儀式には驚かされましたが、これはマンダン族の“オキーパ”という儀式
だったそうです。
白人男性を愛したインディアン娘は死ぬ運命にあるという図式、白人リーダーの指導のもとに、
襲ってきたショショニ族を撃退するという図式は、従来の白人至上主義で不満はありますが、イン
ディアンの生活にズバリと入り込んだ映像は素晴らしいものです。
平原インディアンの生活を記録したジョージ・キャリントンの絵画を見るような名場面が数多くあり
ました。
そして、この映画はリチャード・ハリスの存在なくして語れません。
誇り高いイギリス貴族が、スッポンポン(当然ボカシ入り)でインディアンにひぱっりまわされ、馬と
呼ばれて酋長の母親(これが、ヒッチコックの『レッベカ』でダンバース夫人役のジュディス・アンダー
スン)にこき使われる。恐怖にまさる屈辱感でズタズタにされても、勇気をもって次第に立ち直って
いく過程の演技は、リチャード・ハリスならではのものでしたね。
[2002年11月18日 22時22分43秒]