3人組の強盗に旦那を殺され、レイプされ、家を焼かれ、素っ裸のまま荒野に
放り出された巨乳でナイスバディの人妻ハニー・コールダー(ラクエル・ウェルチ)
が、裸にポンチョをまとい、敢然と復讐に立ち上がるという物語。ウェルチは
前半3分の一はノーパン・ノーブラ・ナマ足で、裸の尻や横パイがチラチラ見える。
途中でズボンとブーツをつけるがノーパン・ノーブラは最後まで変わらない。
だからキワモノ・エロ西部劇と思われたのか輸入されず、テレビ放映のみ。当時
はやったマカロニ同様スペインで撮影され、オープニングもそれらしい外資系作品
(イギリス映画)であることも、何かというと「正統派西部劇」をありがたがるこの
国の「ストイック」なファンには、嫌われるか無視されるしかないのだろうか。
しかし、この映画は女を主人公とした西部劇として、最もうまくいっていると思う。
どうしても男の影から抜け出せないカラミティー・ジェーンやモンタナ・ベル、
やはり異型である「大砂塵」、女なんか最後は所詮こんなもの的なルーティーンが鼻に
つく「四十挺の拳銃」、コメディなうえに結局はリー・マーヴィンにさらわれた「キャット・
バルー」、何を今さらな「バッド・ガールズ」、漫画チックな「クイック&デッド」、
これらを含め私の知る限りのすべての女主人公ものを凌駕する、逃げも隠れもしない
直球勝負(あえて「正統派」とは言わないよ)の82分がここにある。
セックスから逃げず隠れず、現実に耐え、吸収できるものは吸収し、新たな喪失にも
めげず、一人になっても涙を拭いて、最後までやりぬく女一匹ハニー・コールダー…
ラストで3人目のアーネスト・ボーグナインを撃ち殺すために、「死神」のような
スティーブン・ボイドの手を借りたとしても、その「死神」を従えて、馬に乗せた獲物
とともに荒野に去るハニーは、西部劇のすべての男性ヒーローと完全に互角だと思う。
コメディタッチの軽い西部劇だけが取り柄としばしば誤解されているが、ランドルフ・
スコットの末節を飾ったラナウン・サイクルの一翼を確かに担ったバート・ケネディ
(脚本・監督)の力量は、やはり大したものだ。虚飾を排して82分にまとめるところも
知的だし、ボーグナイン、ストローザー・マーティンらの非道な強盗たちをコミカルに
描くことで、かえって男社会の傲慢さや愚かしさを浮き彫りにすることにも成功して
いると思う。
長くなったが最後にもうひとつ。この映画には中盤に西部劇には珍しく海が出てくる。
夕陽が沈みかけた浜辺を、ワンシーンだけロングドレスを着て、ロバート・カルプと
ともに歩くウェルチの肢体は、とても美しい。
[2005年9月10日 20時32分23秒]