ランドルフ・スコット主演、アンドレ・ド・トス監督の1952年作品。鉄道技師のスコットが、
ネバダ州バージニア・シティとカーソン・シティ間の鉄道建設を進めるのを鉱山主のレイモンド・マッ
セイが妨害するお話。マッセイはカーソン・シティの名士ですが、内実はすでに鉱脈が尽きており、
ジェームズ・ミリカン一味のギャングに駅馬車強盗をやらせています。鉄道が通れば駅馬車が廃れ、
すると駅馬車強盗も上がったりになるから鉄道反対なわけで、盗人にも三分の理です。ヒロインのルシ
ル・ノーマンという女優さんは、主演女優を務めたのはこの映画だけとのことですが、ヴァージニア・
メイヨ風の美人に見え、もっと有名になって西部劇に沢山出てもよかっただろうにと思います。
ド・トス監督は、晩年の写真など見ると左目にパッチを当てた海坊主みたいな人物ですが、7度結婚
して子供が19人いるそうだから、子供たちだけで野球チームが二つできるのであり、さすが海坊主で
す。作品はどれも手堅くまとまっていて面白いです。腕のよい職人監督なんでしょうね。バッド・ベティ
カー監督と同じくらいスコット作品を作っているようですが、ヨーロッパ出身のためか独特のユーモア
感覚があるように思います。
例えば、この映画の駅馬車強盗が御者や乗客をやたら殺さず、積み荷を奪っている間、乗客たちを岩
陰に連れて行くと軽食と酒が用意してあり、被害者らは即席のピクニックで結構楽しむ一方、積み荷の
大金を奪われた銀行家は、「これは私には5万ドルにつく」といって渋い顔をするところ。主人公の登
場シーンで、鉄道会社の社員が主人公を探しに酒場に行くと、酔っ払った主人公を始め客たちが殴り合
いの最中で、結局、皆が留置場入りになるところ。久し振りにカーソン・シティに戻ってきた主人公の
首っ玉にヒロインが抱きついたら、新聞社で働いている彼女の手には印刷インクがついていて、主人公
の鹿皮服の肩に両手形が残るところ、などです。
他の作品でも、「勇者の汚名」で、汚い酒場の親父が新調の鏡のことばかり気にしていたり、「賞金
を追う男」で、主人公が目の前に弾を並べて次々ピストルに詰めながら、追いつめた相手の周りに撃ち
まくって嫌がらせする場面などに遊び心を感じます。
[2006年5月16日 21時30分8秒]