オーディー・マーフィー主演の1952年テクニカラー作品です。開巻、マーフィー演じる無法者の
キッドが刑務所を出所し、刑務所長などから更生を諭され、本人もその気持ちなのだけれど、帰郷の汽
車がダルトン・ギャングの強盗団に襲われ、一味の一人のレッド・バックが顔見知りのキッドに声をか
けたものだから、乗客たちにキッドも強盗の仲間と見られ、やむなく逃れてダルトン一味に加わって悪
の道に戻ってしまいます。
一味は、カンザス州コフィーヴィルの銀行を二つ同時に襲うという大それた犯行に及びますが、保安
官や町民の反撃にあって、ダルトン兄弟はボブ始め4人が殺されて壊滅し、キッド自身が5人のギャン
グ団の頭目になります。
仲間のビター・クリーク(ジェイムズ・ベスト)にはシマロン・ローズというメキシコ美人の恋人が
いて、彼女はギャング団と行動をともにし、強盗計画のための情報集めにも一役買っています。キッド
も牧場主の娘のキャリーと恋仲になります。しかし、一味は鉄道会社の不良職員から、列車の積み荷の
金塊強奪計画を持ちかけられ、これに乗ったところ裏切られて、ビター・クリークら仲間全員が殺され
てしまいます。キッドは辛くもキャリーの牧場にたどり着き、馬を貰ってメキシコに逃げようとします
が、キャリーの父親がキッドに同情的なサットン保安官(リーフ・エリクスン)に通報し、キッドはキャ
リーと厩にいるところを包囲されて捕縛されます。捕らわれたキッドにキャリーの父親は、「お前が刑
期を勤め上げるのを、娘も私も待っている。お前が刑務所から戻ったら、この牧場はお前たち二人のも
のだ」といい、ローズが「ビター・クリークと私にも、そんなチャンスが欲しかった」と涙を流して映
画が終わります。
ボブ・ダルトン役は達者なお芝居のノア・ビアリー・Jrですが、映画の始めの方の銀行襲撃で殺さ
れてしまいます。生き残って引き続きキッド一味に加わるレッド・バックは名前通り赤毛で、顔中赤ひ
げなものだから、配役表を見ないとュー・オブライエンだと分かりませんでした。彼はキッドと反りが
合わず、追っ手との撃ち合い中にキッドを撃とうとして逆に撃たれます。
ところで、この映画では、キッドの本名はビル・ドゥーリンです。ドゥーリンといえば、ランドルフ・
スコットも「オクラホマ無宿」でやった実在のギャング団頭目で、当初、ダルトン兄弟に加わっていた
のも事実のようです。「オクラホマ無宿」もダルトン・ギャングのコフィーヴィルの銀行襲撃で始まり、
最後は「シマロン・キッド」と違って、ドゥーリンは実録通り追っ手の保安官たちに殺されます。そも
そも「シマロン・キッド」なる人物のことは聞いたことがないけれど、本当にビル・ドゥーリンにはシ
マロン・キッドなどという別名があったのでしょうか。ご存じの方、教えて下さい。
実はこの映画、50年ほど前に新宿武蔵野館で見ました。それ以来忘れていて、わざわざ見直す気は
ありませんでしたが、最近「テキサス人」のDVDを買ったら一緒に入っていたので見ました。改めて
見ると、バッド・ベティカー監督作品だけあって、しっかり出来ていると思います。活劇場面も、汽車
のターンテーブルのある操車場での撃ち合いなど、珍しい場面があって面白く見せます。しかし、見終
わっての印象が薄いのは、オーディー・マーフィーという人が地味で控えめだからでしょうか。といっ
て、「俺が、俺が」では鼻につくだろうし、難しいものですね。
[2008年2月10日 10時37分30秒]