事実がまさに史実に忠実に淡々と積み重ねられて行くばかりで、ドキュメンタリーを通り越して実物
の連続写真を見ているようでした。見終わった時の感想が「ふ〜ん、あっそうだったのか」と云うだ
けではちょっとネ。これはP・カウフマンですが、私はW・ヒルの「ロング・ライダース」「ワイル
ド・ビル」「ジェロニモ」にも同様の感想を持っていて、これらの映画には登場人物に対する作り手
の思い入れと云うものがまったく感じられません。「based on true story」と云うのは映画就中西
部劇ファンにとって大変魅惑的な言葉ではありますが、お話にしても登場人物にしてもそれは一旦製
作者なり監督なりのハートを通り抜けてきたものでなくてなならないと思っています。例えばW・ア
ープ1人をとって見ても「荒野の決闘」から「トゥームストーン」に至るまですべて作り手の思いが
込められておりどれ1つとして「実際のアープはこうでした」と云うものまたはそれだけで終わって
いるものはありません。作品の良し悪しとは別ですよ。事実を事実としてと云うことになると、先住
民の歴史が判っているのかと云う「ソルジャー・ブルー」の欄に書かれているような意見が出てくる
のだと思います。「映画はイリュージョンである」と云う我がウェインの主張を全面的に支持する者
(但しペキンパーが映画からイリュージョンを奪ったとは思っていませんが)としては、事実を事実
としてただスクリーンに再現して見せるだけの作業に一体何の意味があるのかと思ってしまいます。
[2007年4月1日 14時50分25秒]