「『ご老体一党』を見た人はこれも見ます」ってDVD屋の惹句にのせられて見たよ。１９８８年のバー
ト・ケネディ製作、脚本、監督のテレビ映画で、もう２０年になるね。予備知識なしだったんで驚いたんだ
けど、さらに２０年前の「ご老体一党」の登場人物が再登場するんだよ。もちろん配役は前と違うよ。ウォ
ルター・ブレナンの役がチャック・コナーズ、エドガー・ブキャナンの役がジャック・イーラム、チル・ウィ
ルスの役がスチュアート・ホイットマンて顔ぶれで、こちらも申し分なくご老体揃いだね。そして第一作で
パット・オブライエンが演ったヘイズ隊長役が昨年亡くなったリチャード・ウィドマーク。一番の主役はカ
ントリー・シンガーのウイリー・ネルソンで、老無法者のジョン・ヘンリー役だよ。
ジョン・ヘンリーは列車強盗に失敗してテキサス警備隊に捕まり、２０年の刑務所暮らしだけど、もちろ
ん反省ゼロだね。出所を馬車で迎えに来た兄と、その足でテキサス銀行を爆破して２万ドル奪う。今度こそ
列車強盗を成功させて宿敵ヘイズ隊長に一泡吹かせるための資金稼ぎだよ。引退の身の老ヘイズ隊長（ウィド
マーク）は、州知事を説いてジョン・ヘンリーの捕縛命令を受ける。彼が招集するのが、C・コナーズ、J・イー
ラム、S・ホイットマンといった旧部下たちだけど、C・コナーズなんて老人ホーム暮らしで、ミイラが弾
帯を着けたみてえな同宿の老人相手に「動くと殺すぞ」なんてガンマンごっこをやってるよ。ミイラ老人は
ハンク・ウォーデンで、まあ、「捜索者」なんかから大分経ってるから、ミイラ化しても仕方ないね。
さてジョン・ヘンリーは昔の仲間を再結集する。兄のダブ・テイラーや、ロイヤル・ダーノ、ジーン・エ
ヴァンス、ケン・カーティスなんて連中で、こちらもご老体揃いで頼りないことおびただしいよ。こんな連
中がいよいよ念願の列車強盗に実行しようってんで丘の陰に待機し、テイラーが馬車で線路の様子を見に行
くけれど、間もなく錆びた犬釘を１本持って戻って来る。ジョン・ヘンリーの服役中に鉄道は廃線になって、
とうに撤去されてたんだね。
ショックのジョン・ヘンリーは、犬釘を眺めているうちに「ハハハ」って笑い出す。つられて皆も笑い出
し、ひとしき大笑いになる。仕方がないから取りあえず奪った２万ドルを持ってウェイコの町に行こう、って
いってるとこを、「金は俺たちが頂く」って４人組の無法者に取り囲まれる。こちらは若い連中で、リーダー
格のショーン・キャシディは、７０年代にロック・アイドルだったそうだね。西部劇なんて出たことないだ
ろうけれど、お母さんのシャーリー・ジョーンズは「オクラホマ」や「馬上の二人」に出てるね。
彼らはゴーストタウンの酒場で夜を過ごす。追跡する老レンジャーたちもゴーストタウンに着き、翌朝、
老レンジャーと老無法者側の９人と、若者側４人が町の広場で向かい合って対決する。これだけの人数が撃
ち合やあ、ワイルド・バンチみてえになって不思議はねんだけれど、こちらはマイルド・バンチで、撃ち合
いの結果、ヤング・ガンズ側は全員負傷して倒れるし、ご老体側にも怪我人が出るけど、人死には１人もな
く、皆軽傷のようで馬にも乗れるし、まあ、穏便に済んでよかったね。
ヘイズ隊長とジョン・ヘンリーは、南軍の士官仲間だったんだよ。回想シーンの舞踏会では白髪のヘイズ
隊長もジョン・ヘンリーも礼装軍服の青年士官役。そして彼らが憧れるマギーは「リオ・ブラボー」からほ
ぼ３０年ぶりのアンジー・デキンソンで、おばあさんでも舞踏会の花形さ。ジョン・ヘンリーが刑務所入り
しちまったんで、マギーはヘイズ隊長と結婚したんだけれど、法の番人一途のヘイズ隊長とは別居状態だっ
たようだね。夜汽車で５年ぶりにマギーがやって来る。プラットフォームには駅員や機関士の顔も見えず、
汽車から降りるのはマギー１人で、迎えに来たのもヘイズ隊長だけ。２人のほかには人気のない夜のプラッ
トフォームで、ヘイズ隊長がマギーに戻ってくれっていう場面はロマンチックだね。
撃ち合いの後、ヘイズ隊長ももう老無法者を捕らえる気がなくなり、「カナダにでも行ったらどうだ。綺麗
な国だっていうぞ」っていう。ジョン・ヘンリーたちもその気になってカナダに向かうけれど、例の、かつ
て鉄道のあった辺りを通りかかると、どういうわけか汽笛が聞こえる。それだけじゃない、実際に汽車がこ
ちらにやって来るんだよ。老無法者たちは、勇躍、幻の汽車に向かって馬を走らせる。
他にも、ジャック・イーラムの兄貴役がこれも懐かしいハリー・ケリー・ジュニア。イーラムはヘイズ隊
長の呼び出しを受けて張り切って出かけるんだけれど、もう馬なんて持ってないんで自転車で駆けつけるよ。
ヘイズ隊長に「君は引退した人間だろ」といいながらも熱意に負けて、ジョン・ヘンリー捕縛を命じる知事
がケヴィン・マッカーシー。最近ジョエル・マクリーの「馬上のよそ者（'５５年）」って西部劇を見たら、
牧場主のジョン・マキンタイアのドラ息子だったね。もう９０才を越えてるのに引退の気配がなくて、映画
を撮り続けてるらしいから結構だね。百才までやって貰いたいよ。
リチャード・ウィドマークが出た最後の西部劇。だけど別に傑出した作品じゃないし、西部劇の廃れた年
代にバート・ケネディはどうしてこれを作ったんだろう。昔いろんな西部劇で見た顔をもう一度銀幕に集め
たかったのかしらね。ケネディにとって西部劇は、ジョン・ヘンリーにとってのテキサス列車みたいなもの
だったんだろうね。きっと。
[2009年1月3日 12時37分50秒]