解 説 （劇場パンフより）
「青の恐怖」「夜霧の都」など異色あるスリラ一を得意とする鬼才、シドニー・ギリアットがロンドン・フィルム傘下に加わつて製作・監督した一九五〇年度作品で、ストーリイは協同プロデューサーたるフランク・ローンダーと共に書きおろし、ギリアット自身がシナリオを執筆している。
内容は従来のスリラー映画とは趣向を変えて欧洲の独裁国ヴォスニア（仮想国）を背景にして、独裁国の反民主性を痛烈に諷刺しているが、作品の性質からは嘗てスリラーの傑作といわれたヒッチコックの「三十九夜」、リードの「ミユンヘン行夜行列車」（未輸入）に比すべき快作と評されている。
主演者は「風雲のゼンダ城」「シンパッドの冒険」などのアメリカ映画でお馴染のダグラス・フェアバンクス・ジュニア、「恋の人魚」「理想の夫」（未輸入）のグリニス・ジョンズ、イギリス舞台出で、「落ちた偶像」やアメリカ映画「黒バラ」に出演している性格俳優ジャック・ホウキンズの三人で、このほか「第七のヴェール」「間諜Ｍ一号」のハーバート・ロム、古くは「巴里−伯林」近くは「捕われた心」「落ちた偶像」などに出演しているチエッコ出身のカレル・ステパネック、古くからドイツ映画にお馴染のワルター・リラなどが共演している。
撮影は「邪魔者は殺せ」「ヘンリイ五世」「逢びき」などの名作をクランクしたイギリス第一級のキャメラマンで、近くは「第三の男」で一九五〇年度アカデミイ賞を獲得したロバート・クラスカーが担当。音楽は「邪魔者は殺せ」「最後の突撃」ほか「青の恐怖」「艶事師」などギリアット作品の音楽を担当したイギリス映画音楽のヴェテラン、ウイリアム・アルウィンが作曲、ロウヤル・フィルハーモニック・オーケストラが演奏ミューア・マシースンが指揮している。美術は「大いなる遺産」のウイルフリッド・シングルトンが担当。撮影は一部ロンドンのシーンを除いて、北イタリイ・ドロミテ地方に大口ケーションされた。
|
