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聖書の起源

◆イエスとヨハネの差
 しかし、イエスとヨハネとの最大の違いは、病気なおしにある。 イエスは、「村でも都市でも部落でも」(マタイ九・三五)、 病人を求めてたずね歩く驚異と奇跡の治療者であった。 ヨハネには、それがまったくない。 マルコ福音書第一章のイエスの最初の宣教活動は、 まさに、奇跡の病気なおしの描写からはじめられている。
 
 イエスの周囲は、たちまち病人でいっぱいになった。 イエスの評判は、またたくまにガリラヤの全地方、いたるところにひろまり、 「人々は、方々から、ぞくぞくと集まってきた」(マルコ一・四五)とマルコはいう。 実に、さまざまな病人がやってきたのである。ライ病人も、悪霊につかれたものもそこにはいた。 こうした病気は、ユダヤ人が神の懲罰として忌み嫌う、もっともおそろしい病いであった。 もちろんイエスが、そのことを知らぬはずはない。
 
 しかしイエスは、まったく差別をしない。しかも、それはイエスだけではなかった。 イエスの弟子たちも、同様であった。彼らもまた、 師にならって病人のいやしを、彼らの重要な任務としたのである。 十二人の使徒たちは、「イエスの名によって」不思議ないやしを、人々にほどこした。
 このようにみてくると、ヨハネ集団とイエス集団との間のひらきは、 もはや決定的である。 治癒神イエスの登場には、クムラン教団、およびヨハネ集団と明白に違った、 もうひとつの系列がからんでいたということになる。

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