三条西実隆 音にきくけふの細布着てみんと　おもひにむせふ胸もあくやと 雪玉

中務 思ひ多しけふのさぬのの麻衣　さても逢見ぬむねのくるしさ 夫木

伏見殿 よとともに胸合かたき我恋の　類もしらぬけふの細布 新拾遺

大江匡房 思ひかねけふ立初る錦木の　千束にたらで逢よしも哉 袖中抄

花山院内大臣 うき名をや猶たてそへん錦木の　千束にあまる人のつらさに 同

前大納言隆房 人しれぬ心にたてつるにしききの　朽ぬる色や袖にみゆらん 新後撰

小侍従 たてそめてあふ日をまちし錦木の　あまりつれなき人心かな 千五百番歌合

俊成卿 錦木の千束の数もけふミちて　けふの細布胸や逢ふへき 同

藤原顕昭 錦木にかきそへてこそ言の葉も　思ひそめつる色もみゆらん 六百番歌合

藤原顕仲 錦木の千束の数は立てしを　なと逢事のいまたたくなる 同

藤原仲實 いはねとも思ひそめてき錦木の　はひさす色に出やしなまし 堀河院百首

賀茂重保 錦木の千束にかきりなかりせは　猶こりすまにたてまし物を 千載集

藤原永實 いたつらにちつか朽にし錦木を　猶こりすまに思ひたつかな 同

大倉卿匡房 おもひかねけふたてそむる錦木の　ちつかもまたてあふよしもかな 詞花集

同 錦木は立なからこそ朽にけれ　けふの細布胸合じとや 同

能因法師 錦木はたてなからこそ朽にけれ　けふの細布むねあはしとや 後拾遺