(八)直会
厳粛な神事を務め上げたとき、その極度の緊張を解きほぐすための催し
を直会という。
直会では、神前に捧げた神饌(神様の召し上がりもの)やお神酒をお下
げして、みんなでいただくのである。つまり、神様と同じものを食べるこ
とによって、神様のご神徳も同時にいただくということである。
裸まいりという、寒さの中での厳しい奉仕行事は、とくに直会の意義は
重要であると思われる。
宮司、男衆一同、世話人ら関係者、鹿角市教育委員会教育長、われわれ
調査員などの招待者は、集会所の二階の間に集まり、お神酒をいただいて
直会に入った。
直会は、担当の組長柳沢義一氏の司会により始められた。自治会長成田
尚平氏より、無事行事を終えたことと、男衆への懇ろなる慰労の言葉など、
感謝をこめた挨拶があった。
また織田教育長の挨拶、相川記録調査委員長の乾杯により、直会は和や
かなうちに進められた。
この日の料理は、土深井婦人会の手料理の比内鶏やマイタケのカヤキと、
あきたこまちのきりたんぽ(鍋かやき)をおいしくいただいた。
地元の仕出し屋からの料理など、盛り沢山であった。
また沢山のお神酒の奉納もあった。
生徒児童の男衆たちは、一階の間に降りてきて、心おきなく料理をいた
だいていた。
宴もたけなわになり、頃合いを見計らって帰宅しようとし、外へ出よう
としたとき、たたきの透かし板に正座した幼い男衆三人に「ありがとうご
ざいました」と連呼された。その元気さに心を打たれ、思わず三人と握手
をした。彼らの手の温もりは若々しく、自分の手と同じくらいの温かさま
で回復していた。
清々しい気持ちになったが、外はまた吹雪いてきた。
………
(完)
「土深井裸まいり」
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