「松館今昔:様々なこと」

スキー

 スキーが履けるようになると、まず字松館24番地山崎家の後ろ乃至横道の ヒラ(斜面)に挑戦することとなる。
 次には、その下 − 県道の下 − 水車小屋のあるヒラを練習する。
 ここらをひとまず習得すると、今度はタノエ(田の上)である。 タノエとは、ヒドロ(後ロ田のこと)の山岸のヒラで、ジンジョナガネ(地蔵長根) から、ハダゲ(畑)を経て、ヒドロのタ(田んぼ)への斜面である。ここは、 松館辺りでは中級のコースと云ったところである。
 タノエでは、主に女生徒たちが滑っていた。
 
 タノエでの滑降に馴れると、今度はカクルベ(神楽平か)へと進級する。
 カクルベは、石鳥谷の後ろの山で、全山が採草地であった。滑降コースには、 もってこいの斜面である。丁度サンノデェ(三ノ岳・三の台)の中腹に位置する。
 
 私共の子供の頃は、カクルベはあこがれの山であり、何時かは成功したいと思っていた。 夏の間から、石鳥谷の上に悠然とたたずむカクルベは、何時かはキット滑ってみよう、 と決意させる。
 最初は、カクルベの下の方の三分の一辺りから滑ってみる。タノエなどとは規模が 違う。滑っては転び、転んでは滑って、何回か練習するうちに、段々と、高い所へと 挑戦してみたくなる。
 何日か通って、漸く頂上の近くの、やや平らな所から滑ってみる。 身体全体が宙に浮くようである。アッ、すってんころりん、前のめりに雪の中へ……。
 そのうちに、何回に一回ぐらいは、成功するようになる。ここでは、 回転するとか、制動をかけるなどと云う高級な技術(テクニック)などはしない、 ひたすら直滑降である。滑ってはエッサエッサと上り、上っては滑る……。
 かくて、何とかかんとか頂上近くからも滑れるようになった。
 
 今のカクルベは、杉の造林地に覆われている。

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