「松館今昔:生き物あれこれ」



 ニワドリ(トリとも。鶏)は、どの家でも飼っていた。
 トリ小屋は、母屋に付随する庇(母屋への出入口)の脇に作ってあった。 朝のニワトリの鳴き声で目を覚ましたり、夜中に12回鳴けば「吉兆」などと 言ったりした。

 ニワドリを飼う目的は、産卵させるためと、 不意のお客さんを饗応するなどのためであった。
 大体赤い羽の種類が多かった(名古屋なのか、ロードアイランドレッドなのか) と記憶するが、後には産卵用に白色レグホンも飼われるようになった。
 ニワドリのはやし方(捌き方)は、親戚の義叔父さんのを見よう見まねで、 何とかかんとか出来るようになったと思い込んではいるが、果たして……。
 
 春の産卵期になると、セドモノ(瀬戸物のこと。磁器)の欠片を小さく砕いて与えた。 これは、セドモノに含まれているカルシウムを与えるのが目的と考えられる。
 ところで、東京の世田谷線の電車ホームは、大谷石と思われる石で築かれている。 春の抱卵期になると、雀たちがその石を突っついている光景が見られる。 ここでも雀たちは、石からカルシウムを摂取しているものと考えられる。
 また別の意味では、トリたちが瀬戸物などのようなザラザラしたものと云うか、 トゲトゲのあるものを食べるのは、胃の中で他の消化しにくい食べ物の消化を助ける ためだと云う説もあったが……。

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