鹿友会のこと
「はじめに」
 
 
△「鹿友会とは」その三 − 「鹿友会五十年史」明治時代
 
 鹿友会の創立についての記述は以上に止め、以下その五十年の経過を記すのであるが、 概観してその過程は順調の二字に尽きる。
 この半百年の長き間に、わが鹿友会には未だ嘗て浮沈消長などゝいふ大なる波瀾がなく、 従って他の会同に見るが如き仮死的、若くは瀕死的の症状に陥ったことは一度もなく、 総会は必ず開かれ、会誌の発行は続けられ、加ふるに少くとも外形的には会員数の逐年逓増 はその発達を証して余りある。
 
 五十の齢を重ねて其の士気精神いよいよ旺盛であるか否か、これは別途の考察を要するが、 波瀾重畳などゝいふ事のない史的記述は、勢ひ事物の羅列に終わることを諒せられたい。 又特殊の時期を区画して章を分つことも容易でない。
 
 こゝに「明治時代」と「大正以後」とに区分したのも、別段の意味がある訳ではなく、 唯便宜上五十年をニ等分して、最初の廿五年と次の廿五年(概略)といふだけの意味に過ぎない のである。

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