鹿友会のこと
「はじめに」
 
 
△「鹿友会とは」その三 − 「鹿友会五十年史」創立当時
 
二、精神
 以上の記述によって、鹿友会結成の主旨目的は略々明瞭である。
 即ち石田男によれば、単なる月並的の、
(一)親睦を図るといふ以外に、
(二)郷党の模範となる事、
(三)後進遊学者を刺激奨励する事であった。
 これは、鹿友会の組織分子が殆んど悉く学生であったからである。殆んど悉くと云ったのは、 学生以外の会員は、昨日まで学生であった卒業生が僅かに参加して居たことを指す。 それだから、当時の鹿友会規則第四条は、「正員ハ確然タル志望ヲ持シ、官私ノ学校ニ在学スルモノ及ビ 独立ノ生計ヲ営ムモノトス」とあって、学生を主とし、学生以外の者を従としてゐたのである。
 
 これは五十年後の今日も、「正会員ハ確固タル志望ヲ持シ学業ニ従事スル者及独立ノ生計ヲ営ムモノトス」 (規則第三条第二項)と規定し、字句は多少変ってゐるのみで、学生中心といふ事に変りはないのであるが、 事実はこれと正反対で、在京学生は極めて寥々たる現況である。
 これを簡単に、已むを得ざる時勢の推移としてそのまゝ看過せず、少なくとも奮って学生をして 本会に参加せしむるやう、父兄及び先輩の一段の努力を望まざるを得ない。

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