鹿友会誌(抄)
「第一冊」
 
△会誌発行の趣旨
 謹啓、御承知の如く、在京学生申合せ、互に親睦を厚うし、学業を切磋し、過失を規戒して、 在郷父兄の希望を全うし、兼て追々子弟遊学の路を誘開せんとの趣旨にて、明治廿年九月以来、 鹿友会を組織し居候処、創立之際は、会員僅々十二人にて、極めて微々たる有様なりしも、 漸々に会員中、成業の目的を達したる好模範も出来、加之郷里先輩に於ても、益々学術之必要を認められ、 上京遊学の子弟、大に増加し、現今にては通常会員四十一名、賛成員十八名に達し候は、実に鹿角学運の為に、 可喜の進歩と可申事に候、乍去(さりながら)多人数に相成候へば、随て其中勤惰之差等も多く、会員相互 規戒切磋することも一々行届かたく、且当初会員各々相勗め戒めずして、自ら正しき傾ありしも、追々年少之 学生も増加致候へは、戒飾の方法も幾分精密にせねばならぬ勢と相成、比場合一警策を加ふるの必要を感候、 其方法の一として、此度年二回之報告書を発行することに決定致候、報告書中には、
 
一、会員之言行並に学業成績等
一、会員之起草にかゝる学術上の論説
一、会の沿革並に時々の模様等
 
詳細に列挙し、会員並に父兄等に頒布し、会員進歩之実状を明かにし、且つ賛成員、父兄、郷先輩等の意見を 承るの便に供し、将来会運之隆盛を維持伸暢致度考案に候、但右発行に付て第一必要なるは、其費用に御座候、 費用は壱回分、
 印刷費拾円余  郵便税弐円程
合計十二三円にて、極めて少額のものに有之候へども、学費に余裕なき学生之資力には、殆と難堪の恐あり候へば、 特別に賛成員及会員父兄諸君之は補助を仰き度、御賛成願意御容納之程、不堪切望候、敬白
          東京神田駿河台拾弐番地
   明治二十四年四月   鹿友会幹事
    姓名宛

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