△栗山順次郎氏
北海道に雄飛する 栗山順次郎氏(花輪出身)
北海に隅を負ふ虎とも称すべき、事業王栗山順次郎氏は、關直右衞門氏の遺鉢を受け
て、今や北海道樺太に自立自営其の活躍の状況は次の事業概略記の如し、其の豪磊の気
益々旺なるものあり、現在までに至れる事業記は将来の大成の片鱗を暗示するに過ぎざ
るに至るや逆賭し難からす、健闘を祈るや切なり、同郷人二八〇人を抱擁しつつありと、
氏の性格窺知せられて嬉しきものなり。
栗山木材店事業概略
栗山順次郎
一、事業ノ名称
木材伐木造材流送運搬、土木建築士、砂礫採取、労務者供給等ノ請負業及製材販売業
二、資本額
約一五〇万円(昭和十六年度請負金額)
三、事業主姓名
四、起業当時ヨリ今日マデノ沿革
大正十二年十二月札幌市ニ於ケル資本金五十万円の關木材株式会社ニ入社ス。仝十四
年四月關木材株式会社解散トナリ個人経営關木材部トナルヤソノ支配人ニ就任シ、札幌
本店ニ在リテ樺太方面ニ於ケル木材業ニ干与ス。關木材株式会社及關木材部ニ勤務スル
事足掛十二年ノ歳月ヲ経テ昭和九年十月退店ス。
昭和九年十一月樺太ニ渡リテ請負業ノ許可ヲ得テ独立事業経営ノ運ビトナリ、仝十二
月ヨリ敷香町ニ於テ伐木造材請負業並ニ製材販売業ヲ開業セリ。而シテ同年度ニ於テ三
井物産株式会社木材部トノ契約ニ依ノ二万石ノ木材ヲ気屯事業所ニテ造材シ、矢向上敷
香ニ於テ三万六千石ノ売材事業ヲ行ヘリ。
昭和十年度ニ於テハ昨年同様気屯事業所ニテ三井物産株式会社トノ契約五万〇七百石
ノ造材ヲ行ヒ、上敷香ニハ木工場ヲ開設シテ製材業ヲ営ム。
昭和十一年ニナルヤ、日本人絹パルプ株式会社トノ間ニ於テ、木材造材搬出流送ノ専
属請負契約成立シ、同年度ニ於ケル事業ハテ三井物産株式会社及日本人絹パルプ株式会
社合計高三万二千石ヲ上敷香事業地ニ於テ造材セリ。
昭和十二年度ニハ三井物産株式会社一万七千石、日本人絹パルプ株式会社七万一千九
百石ヲ造材シ、事業場ハ上敷香、西川、内川、中敷香(以上人絹)駒問(三井)ト数フ
ルニ到レリ。同年末上敷香木工場ハ閉鎖シ、三井物産株式会社敷香町佐知工場ニ於ケル
製品ヲ、専属販売スルコトトシ以後主トシテ造材業ニ専念スル方針ヲ樹立セリ。
昭和十三年度ニ於テハ新ニ王子製紙株式会社及樺太鉱業木材組合トモ、造材請負ノ契
約成立シ、王子製紙株式会社四万八千石、樺太鉱業木材組合六万四千石、三井物産株式
会社ニ万三千四百石、日本人絹パルプ株式会社五万四千六百石、合計十九万石ノ木材ヲ
造材シ、事業場モ初問、西川、内川(以上人絹)野頃、正突(王子)野頃、オロモトヒ
(鉱木)駒問(三井)ニ及ビ仝年四月ヨリ七月ニカケテ材木運搬ノ都合上、貨物自動車
ノ必要ニ迫ラレ六輪車三台四輪車一台購求セリ、尚此ノ年ハ大迫町附近ノ長浜ニ於テ、
天然更新ニ依ルえぞ松とど松ノ松葉ヨリ、搾油作業ヲ営ミタルガ一ケ年ニシテ中止セリ。
斯クノ如ク此ノ年度ハ事業ニ大躍進ヲ見タ結果本店事務所ノ拡張車ノ新築等ヲ行ヒ所員
モ一躍シテ増員セラレタリ。
昭和十四年度ニハ樺太人造石油会社ト請負契約成立シ、其ノ造材高約五万石、前記ノ
日本人絹パルプ株式会社七万五千石、三井物産株式会社一万五千石、樺太鉱業木材組合
四万石、王子製紙株式会社五万石等其ノ合計二十万石ヲ越ユルニ到リ、事業場ハ中敷香
駒問(人絹)駒問(三井)尾蘇(鉱木)美保、中敷香(人石)上敷香(王子)ニ及ベリ。
昭和十五年度ニ於テ樺太鉱業木材組合事業ハ、東洋拓殖株式会社代ッテ行フコトニ成
リ、契約モ後記ノ会社ニ変更セリ而シテ此ノ年ノ造材高ハ東洋拓殖株式会社王子製紙株
式会社、日本人絹パルプ株式会社、三井物産株式会社ト合計シテ約十七万石ニ及ビ、事
業場ハ尾蘇(東拓)多来加(王子)駒問(人絹)内川(三井)ノ四ケ所ナリ。従来当本
宅ハ札幌市ニ在リ其事業ノ関係上敷香町ニ移転シ事業ニ精進スルコトト至セリ。
昭和十六年度ニ及ブヤ本島ニ国策会社樺太開発株式会社創立セラレ、三井物産株式会
社ノ造材等ハ開発会社ノ経営スルトコロトナリ、新規ノ契約ヲ同会社ト締結シ、日本人
絹パルプ株式会社、樺太人造石油会社ソノ他トノ請負契約ニ依リ約二十万石ノ造材ヲ生
産ス、事業場ハ駒問内川(人絹)中敷香(人意思)内川(開発)其ノ他ニ於テ作業ヲ行
ヒ現在ニ到ル。
五、現在ノ状況ト従業員
日本人絹パルプ株式会社、樺太開発株式会社、王子製紙株式会社、樺太人造石油会社
等ノ請負業ノ外貨物自動車四台ニ依ル作業、並ニ製材販売業ヲ営ミ、尚百町歩余ニ渉ル
農耕地ヲモ経営シツツアリ。
森林利用ノ特異上ソノ伐木作業ハ冬季ニ最盛トナリ、当時労務者一千名ヲ越エ事務員
モ五十名以上トナル、労務者ノ同郷人ハ役二〇〇名店員ハ十名ナリ。
最近労務者募集手続等ノ複雑ニ依リ特ニ内地ニ募集専任者ヲ派遣シ居ル。
昭和十四年推サレテ敷香町林火防組合長トナリ現在ニ到ル、ソノ他町内ノ種々ナル名
職ニ在リ、妻モ団婦ノ敷香町副分会長其ノ他ノ名誉職ニ在リ。
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